トリノFC情報局

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【ひとりごと】"エンクル事件"について考える

トーロのディフェンスリーダーであるニコラ・エンクルとクラブの関係に、明らかな亀裂が入ったのは8月24日。ホームで行われたELプレーオフウォルヴァーハンプトン戦1stレグの翌日だ。ワルテル・マッツァーリ体制のトーロは前日の試合の映像を選手とスタッフ全員で見返し、1つ1つのシーンを振り返りながらミーティングをするのだが、なんとエンクルはそのミーティングへの出席を拒否。さらにその2日後に行われたセリエA第1節サッスオーロ戦では自らマッツァーリにベンチ外を志願し、チームやティフォージを混乱に陥れた。

 

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Mi ha detto non c’era con la testa.

 

マッツァーリはエンクルがベンチ外を志願した理由についてこう述べている。直訳すると「彼は頭が無いと私に言った」。直訳だと意味が分からない。たしかにTestaという単語は頭という意味だが、「理性」や「落ち着き」というニュアンスも持つ。つまり、エンクルは「試合をできる精神状態に無かった」ということである。しかしなぜいきなりそのようなメンタル状態になったのか。

 

最も有力とされているのは、他クラブからの関心に心が揺らいでいたという理由だ。ウルブス戦1stレグを2-3で落とし、ELへの望みも薄くなった状況でメルカートの期間も残り1週間。欧州の舞台に立てるクラブに移籍するとしたら今しかない。そういった考えが彼の中で大きくなり、トーロのために戦うモチベーションを失ったのかもしれない。

 

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クラブがエンクルの移籍志願を反故にした説

 

移籍願望が噂されたエンクルだが、彼の獲得に興味を持っていたのはペトラーキのローマのみ。エンクル事件が明るみに出たその日、カイロはメディアを通じてローマに対しこう警告した。

 

ローマが我々の選手に接触した場合、その度に€90万の罰金を我々に支払う契約になっている。ローマが我々から選手を獲得することは不可能だ。

 

トーロとほぼ喧嘩別れのような状態で袂を別つことになったペトラーキだが、ローマのDS就任に際したこの契約はたしかに本当らしく、その日の内にローマもクラブ公式声明でこれに反応。

 

我々がトリノの選手にコンタクトを図ったという話は事実ではない。ASローマトリノのいかなる選手の獲得にも動いてはいない。

 

「獲得に動いていない」のは事実だろう。だが、恐らく獲得に動いていなかった」わけではないジャンルカ・ディ・マルツィオなどの有力記者からは、アルマンド・イッツォリャンコ・ヴォイノヴィッチなどへのローマからの関心はことごとく伝えられていたし、実はエンクルに関しても7月上旬ディ・マルツィオから報道が出ている。その際の報道内容は「ローマがエンクルについてトリノに問い合わせた。トリノの要求額は€3500万」。明らかに非売品であることの意思表示ではあるが。

 

カルチョ界のメディアの中では最も信憑性が高いメディアの1つであるSky Sportsのディ・マルツィオ。その彼によると、ローマはトリノの選手に明確な関心を示していたことになるのだ。この要求額€3500万が例の€90万込みでの移籍金なのかは定かではないが、エンクルの移籍希望報道が正しければ、恐らく7月上旬のこの時点でローマへの移籍を望んでいたはず。クラブにその旨を伝えていたとしても何ら不思議ではない。要するに、エンクルはトランスファーリクエストを提出したにも関わらず、カイロ会長によって蔑ろにされた可能性も否定はできないのである。

 

€90万の罰金の件は、エンクルを何が何でも残留させるための理由として使われただけなのかもしれない。ティフォージに宣言した「主力は売らない」という約束を守るためにも、彼らからの自分への支持を損なわないためにも。カイロ会長は強かな男である。これが事実だったとしても、別に不思議ではない。

 

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クラブのプロジェクトに確信を持てなくなった説

 

カイロ会長のコメント通り、エンクルがウルブス戦1stレグ終了後まで移籍希望を表明していなかったと仮定しよう。そうなった場合、この説が最も有力になってくるだろう。数々の有力選手を迎え入れてきた近年のトーロだが、彼らを説得する材料としてクラブが掲げているプロジェクトがある。実はその詳細はあまり語られておらず完全なる筆者の推測でしかないのだが、こちらにまとめてあるので是非参照されたい。

 

2年以内に欧州へ。トーロに今必要なのは「結果」 - トリノFC情報局

 

このような目標を掲げている中、ELプレーオフまでの補強はなんとゼロ。エンクルがクラブのプロジェクトに疑問を感じるのも無理はない。案の定ウルブスには力の差を見せつけられたわけで、タイミングとしてもクラブに怒りの矛先を向けたのは頷ける。ティフォージとしてもELプレーオフまでに補強を決めなかったことについては、クラブの方針に大きな疑問を感じた。

 

ただ、この説が正しいとなるとエンクルがチームに復帰する可能性はまだ残されている。ELプレーオフ終了後とはいえ、フロントは来季の欧州出場に向けた重要な補強を決めてきたからだ。主力も全員残留した。チームは確実に強くなっている。年々少しずつではあるが欧州の舞台は手が届く目標になってきている。トーロのプロジェクトが正しい方向に進んでいるかどうかは、あとはもうエンクルの去就次第と言っても過言ではないのだ。

 

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チームメイトたちの反応

 

ベロッティ :「彼がこのような選択をした事は残念だよ。クラブとの間に何があったのかは僕も知らないんだ。ただ、キャプテンとして彼にリスペクトを持った対応をするし、今まで通りトーロのチームメイトとして扱う」

 

バゼッリ :「何が起きたのか分からない。彼が考えを変えてくれることを祈っているし、今はそれを待つだけだ。彼はチームにとって重要な選手だし、僕らには彼を許す用意がある」

 

ボニファーツィ :「ニコラは難しい道を歩み始めた。クラブとチームに背を向けてね。だけど、彼はこれからも僕らの友であり続ける。あとは彼次第だ」

 

さて、今日はここまで。今回はトーロとエンクルの間に起きている事件について筆者の推測を記した。クラブやティフォージ、チームメイトたちを混乱させているエンクル事件の真相は未だ闇の中だが、クラブにとっても彼にとっても、事態が良い方向に向かうことを願ってやまない。彼が復帰すれば、それは今のトーロにとって大きな補強となる。ニコラ・エンクルがトーロの選手として再びピッチに立つ日は、果たして来るのだろうか。