【冬のカルチョメルカートまとめ】ルキッチが去りイリッチが来た!
成立した取引
獲得
DF
アンドリュー・グラヴィヨン ← スタッド・ランス(買取OP付ローン。オプション料€350万。10試合出場で買取義務化)
MF
イヴァン・イリッチ ← エラス・ヴェローナ(買取義務付ローン。€1600万)
ロナウド・ヴィエイラ ← サンプドリア(買取OP付ローン。オプション料€100万)
放出
DF
クリスティアン・チェレージア → メッシーナ(ドライローン。ポテンツァとのローン契約を打ち切りメッシーナへ)
MF
サシャ・ルキッチ → フルアム(完全移籍。移籍金€1000万)
エミルハン・イルカン → サンプドリア(ドライローン)
マシュー・ガーベット → NACブレダ(買取OP付ローン。金額不明)
クリスティアン・ホルヴァート → ケチュケメート(ドライローン。デブレツェニとのローン契約を打ち切りケチュケメートへ)
FW
シモーネ・エデラ → ポルデノーネ(完全移籍。金額不明)
ラド・アカライア → エスペランジュ(ドライローン。REヴィルトンとのローン契約を打ち切りエスペランジュへ)
ルキッチ放出は痛手だがイリッチとヴィエイラの獲得で選手層に厚み
トリノとの現行契約が2024年までとなっているユリッチは、契約延長に同意する一つの条件として「メルカートでのリクエストに応えること」を要求。これに応じる形でトリノはマルセイユとの激しい争奪戦の末イリッチを獲得した。マンドラーゴラの退団以降チームに欠けており、尚且つユリッチもしばらく「欲しい」と言い続けてきた"左利きの中盤"を最高の形でチームに加える事に成功している。
さらにはサンプドリアから非常に安い金額でヴィエイラを迎え入れる事にも成功しており、ゲームメイカー系だけでなくいわゆる労働者系の中盤も1枚加え選手層に厚みが出た形だ。センターバックではズィマの長期離脱が決まった事を受けてスタッド・ランスからグラヴィヨンを電光石火の動きで確保。移籍金や移籍形態を鑑みるとシーズン終了後の退団が決定的なジジの後釜という意味合いもありそうだ。
退団が決まった選手ではやはりチーム最古参だったルキッチの名前を挙げるべきだろう。2016年にミハイロヴィッチに見出される形でイタリアへとやって来たルキッチはレバンテへのローン修行なども含めて約6年半トリノに在籍。本格的にレギュラー獲得に至ったのは背番号10を与えられた2年前だったが、献身性と高い戦術眼を活かし指揮官が何度も替わったトリノでも常に貴重な戦力であり続けてくれた。長い間ありがとう。プレミアリーグで暴れてこい、サシャ!
全てのトレーニングや試合において、このユニフォームへの誇りと犠牲の心をもってやってきた。僕のトリノでの旅は今日終わるね。少しだけ大きくなったただの少年としてここに来たけど、1人の男としてここを去れる。それはスポーツの面だけじゃない。人間として、僕はここで大きく成長する事ができたよ。トリノでの日々の事は全て鮮明に覚えている。最初のトレーニングから最後の試合まで全部ね。デビュー戦やユヴェントスとのデルビーでのゴール、背番号10のユニフォームやキャプテンマークも。この素敵な旅路を特別なものにしてくれた全ての人に、チームメイトに、そしてサポーターにありがとうと言いたい。これからもトリノは僕の第二の故郷であり続ける。今まで本当にありがとう。センプレ・フォルツァ・トーロ!
サシャ・ルキッチ -Instagramより
噂に挙がっていたが移籍が実現しなかった選手たち
退団の噂が最も騒がれた選手はベリシャ。ユリッチも公の場でベリシャから退団希望を伝えられた旨を明かしており、セリエAでの招集メンバーからも外れたりしており、サレルニターナやレッジーナなどへの移籍が噂されたがまさかの残留。本人としても移籍が実現しなかった事を悔やんでいる事だろう。シーズン終了後は間違いなく新天地を求めそうだ。他にはバイェイェがレッジーナへのローン修行が確実と見られていたがこちらはラザロの長期離脱を受けてキャンセルに。あとはセリエB複数クラブやリーグアン方面からのオファーが届いたとされるセックに関してもトリノが放出を望まず残留。ラツィオが獲得に動いていたサナブリアもペッレグリの離脱や代役確保が間に合わない事などが理由でトリノに残っている。
獲得候補の中で取引実現に最も近づいていたのはヴェローナのヒエン。イリッチとのセットで獲得する事が濃厚と報じられたが結局は選手側との合意に至らず。市場最終日にヒエンの獲得オペレーションから撤退したトリノはグラヴィヨンを代わりに迎え入れている。攻撃陣補強のアイデアとしてしばらく名前が出ていたショムロドフやシェディラなどもクラブ間合意を見出せず取引成立には至らなかった。
【2022/2023選手紹介】La rosa del Torino FC
コーチングスタッフ
監督 イヴァン・ユリッチ / Ivan Jurić
国籍/代表歴 : 元クロアチア代表
生年月日 : 1975/8/25
利き足 : 左
昨季からトリノの指揮官に就任すると、残留争いに巻き込まれていた当時のチームに魂を吹き込み復活させた名将。3-4-2-1×マンツーマン×ハイプレスをブレることなく徹底する事で知られ、試合中は基本的に地面に片膝をついて動向を見守る。ヴァニャーティSDとの喧嘩動画が話題となったが、後に笑いながら「あれはワザと仕掛けた」と激白するサイコパスでもある。現役時代は攻守に貢献するセンターハーフとして主にクロトーネやジェノアで活躍。
助監督 マッテオ・パーロ / Matteo Paro
国籍/代表歴 : イタリア
生年月日 : 1983/3/17
利き足 : 右
ユリッチ不在時に代役として指揮官を務める副官。ユリッチの右腕となってから5年目を迎えており、彼の哲学は熟知している。現役時代はカルチョスキャンダルの罰則によりセリエBに降格したユヴェントスでセンターハーフのレギュラーとして活躍し、クラブのA復帰に貢献したというなんとも消したい、薄暗い過去を持つ。ユリッチとはジェノア時代からコンビを組んでいるが、現役時代も共にプレーした経験がある。
ゴールキーパー
1. エトリト・ベリシャ / Etrit Berisha
国籍/代表歴 : アルバニア代表
生年月日 : 1989/3/10
利き足 : 左
過去にラツィオやアタランタ、SPALなどでプレーしセリエAの舞台も実に10年目を迎えるベテラン。昨年の加入当初は第2キーパーだったが、晴れてプレータイムを手にした昨季後半も安定感に乏しいパフォーマンスを見せたためベンチに逆戻りしてしまった。飛び出しのタイミングは非常に素晴らしいが若干ポカが多い。今季も負傷離脱により少し出遅れてのスタートとなる。
32. ヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ / Vanja Milinković-Savić
国籍/代表歴 : セルビア代表
生年月日 : 1997/2/20
利き足 : 右
昨季後半こそベリシャにポジションを譲ったものの、根気強く起用された結果継続性と安定感を手に入れつつある。元々持っていた正確かつ飛距離の長いフィード力に加え、セービングに関しても一段階成長した印象だ。改善点として挙げられるのはカバーリング。ルーズボールに対しての飛び出しを躊躇するシーンが散見されるため、今季はもう少し判断力を上げて思い切りの良さを見せたい。
89. ルカ・ジェメッロ / Luca Gemello
国籍/代表歴 : イタリア
生年月日 : 2000/7/3
利き足 : 右
アンダー世代の代表歴を持つ下部組織出身のシュートストッパー。ミリンコヴィッチ=サヴィッチがコロナウイルス感染により欠場した昨季第21節フィオレンティーナ戦でセリエAデビューを果たし、見事クリーンシートを達成している。ベリシャも「反射神経が素晴らしい」と実力を評価しており、将来が楽しみな逸材だ。ローン修行の噂もあったが今夏はとりあえず残留。
センターバック
3. ペル・スフールス / Perr Schuurs
国籍/代表歴 : オランダ
生年月日 : 1999/11/26
利き足 : 右
アヤックスからの完全移籍で加入。イタリアでのデビュー戦となった第3節クレモネーゼ戦では空中戦全勝&デュエル勝率9割という破壊的なスタッツを残し、セリエAのアタッカーたちに宣戦布告している。フィジカルを活かした守備はもちろん、さすがアヤックス産だけあって足下の技術が非常に高い。ズバッと通す縦パスはユリッチのトリノにおいても大きな武器となるだろう。同い年だがデリフトの後継者として注目を集めた。
4. アレッサンドロ・ブオンジョルノ / Alessandro Buongiorno
国籍/代表歴 : イタリア
生年月日 : 1999/6/6
利き足 : 左
プリマヴェーラからの生え抜きで元アッズリーニ。センターバックの真ん中と左でプレーできるが、今季は主に真ん中で起用されブレーメルの穴を完全に埋めている。セリエAここまででインターセプト数1位、空中戦勝数3位を記録している事実はロベルト・マンチーニの目にも留まっており、アッズーリ招集への夢ももはや現実的なものとなってきた。スフールスとのハイレベルなレギュラー争いにも注目だ。
6. ダヴィド・ズィマ / David Zima
国籍/代表歴 : チェコ代表
生年月日 : 2000/11/8
利き足 : 右
セリエA2年目を迎えた有望株。昨季はイタリア初挑戦ながらも20試合に出場しており、ユリッチからも一定の評価を得ている。若くしてチェコ代表で既に10キャップ以上を数え、国際舞台での経験も豊富だ。プレシーズンに負傷しやや出遅れてのシーズンインとなったため、しばらくはベンチから試合を眺める事になりそう。能力的にはレギュラーを狙える器のため、持ち前の真面目な性格で来るべきチャンスに備えたい。
13. リカルド・ロドリゲス / Ricardo Rodríguez
国籍/代表歴 : スイス代表
生年月日 : 1992/8/25
利き足 : 左
左のセンターバックで不動の地位を築く。戦力外になりかけていた2シーズン前が今や嘘のように欠かせない存在となっている。上背はそこまで無いが、読みの鋭い守備と機を見た攻撃参加、高いテクニックを活かしたプレス回避やビルドアップなど、ユリッチのトリノにおいて彼の存在はもはや戦術の一部だ。紆余曲折あってキャプテンマークを巻く事にもなり、その豊富な経験で若きチームを牽引する。
26. コフィ・ジジ / Koffi Djidji
国籍/代表歴 : コートジボワール
生年月日 : 1992/11/30
利き足 : 右
出足の速いインターセプトや強靭なフィジカルを活かしたハードチャージが武器。トリノでのシーズンは5年目となる。2シーズン前監督人事の影響もあって戦力外となり一度クロトーネにローンで放出されてしまうが、それ以外のシーズンは基本的にレギュラークラスとしてチームに貢献。今季も右のセンターバックでレギュラー候補の筆頭だ。昨季はリゴーレを相手に献上するミスを通算で3度犯したものの、それでもユリッチからの信頼は変わらない。
ウイングバック
2. ブライアン・バイェイェ / Brian Bayeye
国籍/代表歴 : フランス
生年月日 : 2000/6/30
利き足 : 右
セリエCのカタンザーロで年間最優秀選手に選ばれ、トリノにステップアップした。身体能力を全面に押し出したプレーが特徴で、運動量とクロスの精度で勝負する右ウイングバックだ。未だセリエAデビューの機会は訪れていないが、コッパ・イタリア第1ラウンドのパレルモ戦では途中出場し右のセンターバックでテストされている。まだまだユリッチを説得するには至っておらず、冬のローン修行も視野に入ってくるか。
17. ウィルフリード・シンゴ / Wilfried Singo
国籍/代表歴 : コートジボワール代表
生年月日 : 2000/12/25
利き足 : 右
爆発的なスピードと大胆かつトリッキーなドリブルで右サイドを切り裂く。速すぎてティフォージからフレッチャグラナータ(イタリアの特急電車フレッチャロッサと掛けている)と呼ばれ親しまれている。ウイングバックに超攻撃的な姿勢を求めるユリッチからは「シーズン5得点」とリクエストされており、アシストも含めゴールに直結するプレーが求められる。ピッチを出るとインタビューで見せるシャイボーイっぷりがギャップ萌え必至。
19. ヴァレンティーノ・ラザーロ / Valentino Lazaro
国籍/代表歴 : オーストリア代表
生年月日 : 1996/3/24
利き足 : 右
アンサルディの退団で層が薄くなったウイングバックの新戦力として、インテルからの買取オプション付ローンで加入。イタリア上陸後は持ち前のドリブル突破が鳴りを潜めており評価を落としているが、ユリッチ曰く「改善できるポテンシャルはある」。本人もトリノでの再出発に大きな意欲を見せているが、第4節アタランタ戦でリゴーレを献上しいきなり向かい風に立たされている。
27. メルギム・ヴォイヴォダ / Mërgim Vojvoda
国籍/代表歴 : コソヴォ代表
生年月日 : 1995/2/1
利き足 : 右
フットサル選手のような繊細なテクニックで相手を翻弄する。本職は右サイドだがユリッチの手によって昨季左サイドにコンバートされ、トリノでのレギュラーポジションを手にした。兄貴分だったアンサルディから受け継いだキックフェイントからのクロスは、分かっていても止められない彼の大きな武器。トリノでの練習初日に間違えて「メグリム」と呼んできたユリッチを恨んでいる。
34. オラ・アイナ / Ola Aina
国籍/代表歴 : ナイジェリア代表
生年月日 : 1996/10/8
利き足 : 右
両サイドをこなせる貴重な駒として重宝されるテクニシャン。ジジと同じく加入後5年目を迎えた。相手の重心をズラして守備を剥がすドリブルが武器で、味方との変幻自在なポジションチェンジで崩すプレーも得意。しかし守備面に不安があり好不調の波も激しいため、レギュラー奪取には至っていない。ロッカールームではDJを務めており、いつもヒップホップを爆音で流している。
センターハーフ
10. サシャ・ルキッチ / Saša Lukić
国籍/代表歴 : セルビア代表
生年月日 : 1996/8/13
利き足 : 右
19歳の時トリノに加入し今年で7年目を迎えるチーム最古参。攻守において質と量を保証する現代的なそのプレースタイルは、トゥットカンピスタ(万能型ミッドフィールダー)と表現される事もしばしば。ベロッティの後任キャプテンに任命されていたが、今季開幕直前にクラブと契約延長交渉の件で一時的に対立し練習をボイコットする事件を引き起こしたため、落とし前としてアームバンドをロドリゲスに譲り渡している。
14. エミルハン・イルカン / Emirhan İlkhan
国籍/代表歴 : U-21トルコ代表
生年月日 : 2004/6/1
利き足 : 右
18歳という年齢ながら前所属ベシクタシュでの契約にバイアウト条項が盛り込まれていた事からも分かる通り、トルコで大きな期待を集める超新星。足下の技術に絶対的な自信を持っており、リスクの高いコースのパス選択や積極的にドリブルで剥がそうとする思い切りの良さがストロングポイント。トリノ移籍が決まった直後、ベシクタシュの会長が「電話で慰留を試みた」とクラブ残留を直接説得しようとした事を明かした。
21. ミシェル・アドーポ / Michel Adopo
国籍/代表歴 : フランス
生年月日 : 2000/7/19
利き足 : 右
下部組織時代の4年前トリノに加入した大型センターハーフ。アンダー世代でのフランス代表選出経験を持つ。プリマヴェーラ卒業後ヴィテルベーゼへとローン修行に出向き評価を上げ、今季トップチームでのチャンスが巡って来た。恵まれた体躯を活かしたデュエルの強さはまさにユリッチ好み。プレシーズンではセンターバックでもテストされ及第点の出来を見せたため、今後新境地を開拓する可能性もあり得そう。
28. サムエレ・リッチ / Samuele Ricci
国籍/代表歴 : イタリア代表
生年月日 : 2001/8/21
利き足 : 右
イタリア国内のみならずプレミアリーグの強豪などからも注目されていたが、1月に新天地としてトリノを選んだ若き司令塔。ピッチ全体を俯瞰できる視野の広さやパス精度、展開力に守備時の危機察知能力など長所を挙げればキリが無い。前所属エンポリでは真逆と言ってもいい戦術の下でプレーしていたためユリッチのサッカーへの適応は時間を要すると予想されたが、瞬く間にチームにフィットし不動の地位を築いている。
77. カロル・リネッティ / Karol Linetty
国籍/代表歴 : ポーランド代表
生年月日 : 1995/2/2
利き足 : 右
2年前の加入以降本来の力を発揮出来ていなかったため放出候補に挙げられたが、前述のルキッチ事件の際代役として出場した第1節モンツァ戦で見事なパフォーマンスを見せ、一気にレギュラー候補となった。豊富過ぎる運動量と黒子役に徹する事の出来る献身性が大きな魅力。完璧なチームプレイヤーであり、鬼軍曹として知られるユリッチですら「練習で手を抜く彼を見た事が無い」と称賛するほど。
シャドー
7. ヤン・カラモー / Yann Karamoh
国籍/代表歴 : コートジボワール
生年月日 : 1998/7/8
利き足 : 右
フランスとの二重国籍を持っており、アンダー世代ではフランス代表としてプレー。19歳の時インテルに引き抜かれ将来を嘱望されたが、ローン修行先のボルドーで態度の悪さを理由に干されるなど素行不良が目立ち未だ才能を開花させられていない。トリノとは1年契約を結んでおりクラブを納得させれば自動的に契約が延長されるという契約形態のため、一刻も早くコンディションを上げてユリッチにアピールしたい。
16. ニコラ・ヴラシッチ / Nikola Vlašić
国籍/代表歴 : クロアチア代表
生年月日 : 1997/10/4
利き足 : 右
プレミアリーグからやって来た補強の目玉。開幕から3ゴールを挙げる活躍で早くも攻撃の中心的存在となっており、クラブは既に買取に動いているとの情報も。「ユリッチの指導を受けたかった」と語っており、同胞指揮官の存在がトリノ加入を後押しした形だ。とにかくキープ力が高く、簡単にボールを失う事はまず無い。背番号は8を希望していたが加入当初セグレが着けていた(その後パレルモへ移籍)ため倍の数字を選択。
23. デンバ・セック / Demba Seck
国籍/代表歴 : セネガル代表
生年月日 : 2001/2/10
利き足 : 左
手足が非常に長く、大きなストライドを活かしたドリブル突破が長所。ユリッチからの期待は非常に大きく第6節インテル戦では先発出場を果たしている。フィニッシュ精度の低さが現状の課題だが、プレータイムを重ねていくにつれて改善されてくるはず。SPAL時代才能を見出したヴァニャーティSDにはスパイクを買ってもらった過去があり、今も感謝していると語っている。感情が顔に出やすいところがチャームポイント。
36. マシュー・ガーベット / Matthew Garbett
国籍/代表歴 : ニュージーランド代表
生年月日 : 2002/4/13
利き足 : 右
プリマヴェーラ卒業1年目。弱冠20歳という年齢ながら母国ニュージーランドの代表では既に常連となっている。3-4-2-1のフォーメーションにおいてはシャドーが適正だが、本職はインサイドハーフ。中盤でゲームメイクに参加しながら機を見てゴール前に飛び出し得点機に絡む。未だセリエAでの出場経験は無いが、ローン修行に出さずチームに残す道を選んだクラブの判断は期待の表れ。先輩たちのプレーからどれだけ吸収出来るか。
49. ネマニャ・ラドニッチ / Nemanja Radonjić
国籍/代表歴 : セルビア代表
生年月日 : 1996/2/15
利き足 : 右
ボールを持ち次第まずは仕掛けるドリブル小僧。闇雲に仕掛けているようにも見えるが、独特なリズムから繰り出されるドリブルはチーム最強とも言える切れ味を誇っており、成功率も非常に高い。過去数シーズン負傷離脱に悩まされコンスタントなプレータイムを得ておらずコンディションが懸念されたが、トリノ加入後は軽快な身のこなしで好パフォーマンスを連発しており特に問題は無さそうだ。
59. アレクセイ・ミランチュク / Alexey Miranchuk
国籍/代表歴 : ロシア代表
生年月日 : 1995/10/17
利き足 : 左
アタランタから加入したチャンスメイカー。繊細な左足のテクニックは創造性に富んでおり、得点力もアシスト力も兼備している。ユリッチの師匠であるガスペリーニの下で2シーズンプレーしているためトリノの戦術への適応も問題は無い。開幕節モンツァ戦で先発出場しいきなり得点を挙げる活躍を見せたがその試合で負傷離脱。ただ復帰は間もないと言われており、第8節ナポリ戦あたりから復帰出来る見込みだ。
センターフォワード
9. アントニオ・サナブリア / Antonio Sanabria
国籍/代表歴 : パラグアイ代表
生年月日 : 1996/3/4
利き足 : 右
ワンタッチの技術の高さやスペースでボールを受け起点となれる動きなど、クレバーなプレーがストロングポイント。チャンスメイクの局面では元々貢献度は高かったものの、今季から背番号9を背負うため新たな得点源としての期待も掛かる。彼がペナルティエリア内で決定的な仕事が出来るかがトリノの今季を占うと言っても過言では無いため、まずはペッレグリからレギュラーを守り抜きたい。愛称はトニー。
11. ピエトロ・ペッレグリ / Pietro Pellegri
国籍/代表歴 : U-21イタリア代表
生年月日 : 2001/3/17
利き足 : 右
15歳での鮮烈なプロデビュー以降、度重なる負傷にキャリアを妨害されてきた若きストライカー。モナコやミランでは結果を残せなかったが、未だに高いポテンシャルを秘めている事はピッチでのパフォーマンスからも見て取れる。自身をジェノアでプロデビューさせた監督であるユリッチの下、継続的にプレー出来ればその才能も花開くはずだ。よりチャンスメイカー寄りのサナブリアとは異なり純粋な9番タイプのため、今季は2人を使い分ける起用法が主となりそう。
直近5シーズンのベストイレブンを選出してみた
先日の第6節インテル戦では終了間際に失点しあと一歩のところで敗れたトーロ。ゴールを決めたブロゾヴィッチのマークを外してしまったイルカンがSNSで謝罪したが、18歳の若武者に非難のコメントは一切寄せられておらず、彼を励まし激励するティフォージの多さには個人的に感銘を受けた。そもそもあんな難しい試合のあんな難しいタイミングで投入された割には相当良くやったと捉えるべき。この経験を糧にした彼の更なる成長が楽しみだ。
さて今回は直近5シーズンでのトーロにおけるベストイレブンを筆者の独断と偏見で選出していく。それってあなたの感想ですよね的な記事になる事は間違いないため、ぜひコメントなどで意見を頂ければ幸いだ。対象となるのはシーズン途中でミハイロヴィッチからマッツァーリへと政権交代した17/18、そのマッツァーリと共に欧州の切符を掴みかけた18/19、更なる躍進への期待とは裏腹にまさかの残留争いに巻き込まれた19/20、新監督ジャンパオロの下一時は最下位に沈むも残留請負人ニコラに救われた20/21、そしてユリッチトーロが始動した昨季21/22。なおフォーメーションはマッツァーリやユリッチが採用し最もポジティブなイメージが多い3-4-2-1とする。早速ポジション別に見ていこう。
監督
ミハイロヴィッチ→マッツァーリ→ロンゴ→ジャンパオロ→ニコラ→ユリッチの順に変遷してきた監督事情。結果を出せなかったジャンパオロはさておき(割といいサッカーをしてはいた)、他の5人はそれなりの成果を上げているため難しい。ミハイロヴィッチ無くしてベロッティの爆発は有り得なかったし、ルキッチの才能を最初に見出したのも彼。ロンゴやニコラがいなければ恐らくトリノは今頃セリエBにいただろうし、眠れる雄牛に新たな命を吹き込んだのは紛れもなくユリッチだ。ただ結果という意味で見ればマッツァーリが最も大きな成果を挙げたと個人的には思う。
かつてナポリを強豪へと復活させたマッツァーリの下、18/19シーズンのトリノはカンピオナートを7位でフィニッシュ。勝点3制度が導入されて以降クラブ史上最多となる勝点63を獲得している。シーズンを通してわずかに7敗、失点数が37とセリエAで5番目に少ない強固な守備を形成し台風の眼となった。ヨーロッパリーグのプレーオフでウォルヴァーハンプトンに敗れ最終的に欧州の出場権を逃しはしたものの、近年では1番ワクワクさせられるシーズンだった事は間違いない。
ゴールキーパー
ここ5シーズンで正守護神を務めた期間が最も長く、そして最も多くのピンチを救ったシリグで満場一致だろう。足下の技術という弱点を除けば完璧なゴールキーパーであった。17/18のシーズン前にパリ・サンジェルマンからフリーで加入した事実は、ペトラーキ元SDの成立させた最もクレイジーな取引の一つとして記憶されている。
センターバック
"ムーロ・グラナータ(エンジ色の壁)”と呼ばれ鉄壁の守備陣を形成した18/19シーズンに、3バックの中央でディフェンスリーダーを務めたエンクルなくしてあの躍進は語れないだろう。芸術的かつ激しい守備技術もさる事ながら、DF離れした足下のテクニックも懐かしい。当時新加入だったブレーメルも後にインタビューで「エンクルから学んだ」と語っており、彼の成長にも一役買っている。そのエンクルの右でプレーしたイッツォも個人的には入れたい。超人的な一対一の強さを誇り相手アタッカーをファウルすれすれのタックルで吹き飛ばしたかと思えば、痛がり倒れる相手をさらに上から怒鳴りつけるというガラの悪さももはやカッコいいレベルであった。今夏ユヴェントスにスパイとして送り込まれたブレーメルについては語る必要もないだろう。昨季セリエA最優秀DF賞を受賞した彼を外すわけにはいかない。
ウイングバック
まず名前が挙がるのはアンサルディ。ここ5シーズン全てにおいてトリノに在籍し、序列の下がった昨季以外は主力としてプレーした。高い成功率を誇ったドリブル突破や正確なクロスで幾多の得点機を演出。スタメンの座を失った昨季は練習のたびにヴォイヴォダにアドバイスを与え、彼の覚醒にも大きく貢献している。左は彼で確定だろうが、一方で右は少し難しい。17/18からの約2シーズン半ほどレギュラーを務めたデ・シルヴェストリも素晴らしかったし、現レギュラーのシンゴも捨てがたい。まあここは未来への期待も込めてシンゴを選出するとしよう。速すぎて「電車」と呼ばれ始めている彼の更なる暴れっぷりがこれからも楽しみである。
センターハーフ
ここは「主力としてプレーした期間」と「残したインパクト・貢献度の大きさ」のどちらに重きを置くかで選出する選手が変わってきそう。期間という意味で言えば何でも屋のバゼッリと潰し屋のリンコンになるだろうが、インパクトや貢献度なら何でも屋二世のルキッチ、フィジカルモンスターのメイテや元主将候補のマンドラーゴラも入ってくる。ただ期間×インパクトとするなら鋼のフィジカルで中盤を耕し17/18シーズンからチームを支えたリンコンと、20/21シーズンのセリエA残留に大きく貢献し、買い取られていれば今もレギュラークラスだったであろうマンドラーゴラをピックアップしたい。まずリンコンは運動量とフィジカルを武器に中盤でセカンドボールの回収やフィルター役を担当し、前線へのリンクマンとしても機能。創造性という意味では凡庸だったが、マッツァーリによる18/19の「壊すサッカー」においては中心的存在となっていた。マンドラーゴラは20/21の冬に加入し、ニコラのチームで3-5-2のアンカーとして残留争いをしていたチームをピッチの中央から鼓舞。ユリッチにとって彼の展開力や球際の強さ、キャプテンシーは今でも恋しいことだろう。
トップ下
数多くの負傷離脱さえなければトーロでキャリアを終えていたであろうファルケがまず浮かぶ。左足から放たれる無慈悲なコースのシュートや切れ味抜群のカットイン、時折中盤まで降りてゲームメイクに参加するそのパフォーマンスは、まさにクリエイティビティを具現化した存在だった。守備面でもサボらず相手を追いかけ回す献身性も持ち合わせており、近年のトーロでは最も活躍したトレクァルティスタであったと言える。そんなファルケの隣で候補となるのはリャイッチとブレカロの2人だが、ここは2人の残したスタッツを比較し判断したい。直近5シーズンで言えば17/18のみの在籍だったリャイッチの成績は27試合の出場で6ゴール9アシスト、対して21/22シーズンのみの在籍だったブレカロは32試合7ゴール2アシストという状況。どちらも素晴らしいが、10試合以上を欠場しながらも卓越したファンタジーアで15もの得点機に絡んだリャイッチをここは選びたい。王子様キャラとして知られ、飼い慣らすのが難しいところももはや魅力の一つだった。
ワントップ
ここは間違いなくセネガルの大スターことニアン、な訳がない。長らく主将として数多くのゴールをトーロにもたらしたベロッティの選出は疑う余地もないだろう。スランプに陥った時期もあったが、直近5シーズン全てでエースとしてプレーし大車輪の活躍を見せてくれた。個人的には沈黙を貫いたまま退団した今夏の彼の選択には失望したが、ローマのユニフォームを着た彼を見て言いようのない寂しさに襲われた。まだまだ未練タラタラである。
並べてみるとこんな感じ。ぜひ読者のあなたのベストイレブンも教えて欲しい。
【スタメン争い】新チームのポジション別ヒエラルキー
選手の入れ替わりがここ数年で最も激しかった夏のメルカートを終え、22/23シーズンも開幕から5試合を消化。3勝1分1敗となかなかの滑り出しを見せているトリノだが、新チームのポジション争いにおける現状も段々と見えてきた。そこで今回は第5節を終えた現時点でのチーム内ヒエラルキーを分析していく。
※今回の図に記載の各パーセンテージはレギュラーを守り抜く・奪う確率を示す。
補強の必要性が叫ばれていたゴールキーパーに関しては、ミリンコヴィッチ=サヴィッチが安定感に欠けていた昨季のパフォーマンスに比べ予想外とも言える改善を見せており、ガッチリと正守護神の座を射止めている。「キーパーの補強はしない。我々は彼にゴールマウスを託す」とシーズン前に語ったユリッチの期待に見事に応えている格好だ。ベリシャが負傷により戦線離脱を強いられている事も追い風となっているのは勿論だが、いずれにせよしばらくはこのセルビア人キーパーのポジションは安泰と見ていいだろう。
ブレーメルとイッツォがチームを去り、新たにスフールスが加わったこのセクションは最も予想が難しい。3バックの真ん中では新加入のスフールスがここまでブレーメルを忘れさせるパフォーマンスを見せており、ブオンジョルノも新たなディフェンスリーダーは俺だと言わんばかりのプレーを負けじと披露。右センターバックで主に出場するジジも持ち味の対人の強さを遺憾無く発揮している。怪我で出遅れたズィマはまだ公式戦の出場が無いが、実力的に今後レギュラー争いに絡んでくる事は間違いないだろう。一方で不動の座をモノにしているのは左センターバックのロドリゲス。キャプテンでもある彼は元々持っていた足元のスキルを活かしビルドアップ面でチームにとってもはや欠かせない存在だ。守備においても空中戦・地上戦ともに負ける事が滅多に無く、攻守ともにパーフェクト。センターバックは彼を除いた4人での右・中央のレギュラー争い展開が予想される。
このポジションの争いはバイェイェ、ラザーロ、シンゴ、アイナ、ヴォイヴォダの5人で展開されるが、まず左は怪我から復帰したばかりにもかかわらず既に2つのアシストを決めているヴォイヴォダが不動の地位を築いており、右に関してはシンゴが優勢という状況だ。セリエCからステップアップしたばかりのバイェイェには未だAでの出場機会が与えられておらず、両サイドをこなせるアイナとラザーロに関しては第4節アタランタ戦で2人揃ってPKを献上するミスを犯しており若干印象が悪い。ただレッチェ戦では2人ともまずまずのプレーを見せたため、シンゴが負傷により離脱している今がチャンスか。
不動の存在はリッチ。試合を追うごとに成長する彼のゲームメイクはトリノにとって欠かせない武器だ。このセクションではそんなリッチの隣で誰がプレーするのかが焦点となる。当初はルキッチもリッチ同様に不動のレギュラーであると思われたが、開幕直前に起きた"ルキッチ事件"(下記詳細リンクあり)の際、召集外となった彼の代役として出場したリネッティが攻守ともに見事なプレー。そのままレギュラー候補の筆頭に躍り出た。ルキッチがチームに戻ってからもユリッチはリネッティを好んで起用するようになっており(例の事件は解決済のため無関係。単純に技術的な判断とユリッチが明言)、一時は放出候補とも言われた彼の復調は大きなサプライズとなっている。ただ両者のプレースタイルは大きく異なるため、相手によって使い分ける起用法になる可能性もありそうだ。また、リッチが現在負傷離脱中という事もありひとまずはルキッチ&リネッティのコンビがレギュラーとなりそう。リッチ復帰以降にレギュラー争いが再開されるはずだ。第5節レッチェ戦でスタメンデビューを飾り素晴らしいポテンシャルを見せつけたイルカンの台頭にも注目したい。
ルキッチ事件についての詳細はこちらから。
giapponegranata.hatenadiary.com
セックを除き全ての選手が新加入の当セクションは、セックに加えヴラシッチ、ラドニッチ、ミランチュク、カラモーがスタメンの座を争う。既に不動の存在となりつつあるのは補強の目玉ヴラシッチ。5試合を消化し3得点を挙げる活躍を見せサポーターの心を鷲掴みにしており、既に攻撃の中核的存在だ。そんな彼の隣でプレーするのは今のところラドニッチが筆頭候補。彼もまたスピード溢れる仕掛けでサポーターを魅了しており、ユリッチからの評価も高い状況である。ミランチュクも開幕戦でデビューと同時に得点を挙げインパクトを残したが同試合でまさかの負傷交代。戦線離脱は最低でも1ヶ月と見られており、ポジション争いにおいて大きなビハインドを背負う事となってしまった。カラモーも移籍市場最終日での加入だった事もあってコンディションが整っておらずまだスタートラインにも立てていないため、ヴラシッチ&ラドニッチに次ぐ3番手は今のところセックだろう。彼もまた第3節アタランタ戦で上々のプレーぶりを見せユリッチにアピールする事に成功している。
ベロッティが去り、新たなレギュラーがサナブリアかペッレグリのどちらになるのかが注目のセンターフォワード。より多くのプレータイムを与えられているサナブリアが今のところは若干優勢に見えるが、レッチェ戦ではペッレグリがスタメン出場。ゴールこそ無かったものの、ポストプレーなどにおいて攻撃のアクセントとして機能する事をアピールした。ただこの2人も特徴が全く異なるため、どちらかが得点量産体制に入らない限りは使い分けという起用法が主となるだろう。
了
【メルカート閉幕】波乱万丈の3ヶ月を振り返ろう
9月2日を迎え夏の移籍市場も閉幕。各チームが22/23シーズンの陣容を確定させたわけだが、我らがトリノの市場はここ数年で最も騒がしいものになったと言って差し支えないだろう。という事で久々の更新となった今回は時系列順に今夏の出来事をダイジェストで振り返っていく。
【5月】 主力選手2名の買取オプション行使期限が満了。市場開幕に向け暗雲が立ち込める
昨夏買取オプション付ローンで複数名の選手を獲得していたトリノだが、クラブが買取の意思を見せていたのは主力として活躍していたヨシップ・ブレカロ、デニス・プラート、ロランド・マンドラーゴラの3名。まずブレカロに関してトリノは€1000万での買取オプションを有していたが、ブレカロ本人が「チャンピオンズリーグに出たい」としてトリノ残留を拒否。ヴァニャーティと代理人を交えての話し合いも行われたが状況は変わらず、本人の意思を尊重しクラブは返却を決めるという結末に。続いてプラートについては€1500万の買取オプションが存在したが、負傷離脱の多かった彼にこの金額を支払う事に対しクラブは躊躇。保有元のレスターにローン延長を含む値引き交渉を持ちかけるも交渉は平行線を辿り、彼もまたローンバックされる事となった。
【6月】キャプテンと次期キャプテン候補も退団が決定。主力の流出は止まらない
キャプテンのアンドレア・ベロッティに対しクラブは契約延長を諦めなかったが、ステップアップを決意していた彼の意思は最後まで変わらなかった。退団するとしてもクラブに7年に渡り多大な貢献を果たしてきた彼は本来拍手とともに温かく送り出されるはずだったが、一言の挨拶もなく契約満了の日を迎えた彼にティフォージは激怒。主力の流出が相次ぐクラブにまた一つネガティブな話題を残す事となった。そしてここに追い打ちをかけるように次期キャプテン候補の筆頭であった前述のマンドラーゴラも退団が決定。買取オプションの値引きに向けて交渉が続けられてきたが、最終的にトリノ退団を決めたのは彼自身だった事が後にヴァニャーティの口から語られている。
【7月】守備の要が宿敵に移籍。ついにSDと監督が大喧嘩
7月に入りトリノはようやく最初の補強を決める。セリエCのカタンザーロからブライアン・バイェイェ、そしてマルセイユからネマニャ・ラドニッチを獲得し、補強ポイントだったウイングバックとトレクァルティスタに待望の新戦力を加えた。しかしベンフィカやマルセイユで結果を残せていないラドニッチの加入はこの時点で期待値としてはかなり低く、バイェイェに至ってはセリエAでのプレー経験なし。2人の加入はネガティブなクラブ状況を照らすものにはならなかった。そしてステップアップが有力と目されてきたグレイソン・ブレーメルの退団もついに決まる。ただ行き先は長らく報じられてきたインテルではなく、宿敵ユヴェントスに移籍する事に。分割払いとはいえ€4000万以上の移籍金にトリノは首を縦に振った格好だったが、この取引もティフォージの不満を大きく煽るものとなった。
そうして迎えた7月28日、事件は起きる。キャンプ地のオーストリアでヴァニャーティとユリッチが掴み合い&怒鳴り合いの大喧嘩を繰り広げている動画がネットに流出したのだ。何者かによって撮影されたこの喧嘩の原因は補強プランの方向性の不一致であり、ヴァニャーティがジェイソン・デナイエル、ジュリオ・マッジョーレ、フィリップ・ジュリチッチの獲得取引をまとめ上げユリッチに報告したところ「全員要らない」と拒否された事がヴァニャーティの怒りに火を付けたとされている。しかし後日、ユリッチはあの事件について後日記者会見にて次のようにコメントした。
あの喧嘩は私がわざとヴァニャーティを煽って起こしたもの。彼が本当にクラブを思って仕事をしているのかどうか本心が知りたかった。彼はこれまで私に対してあまり感情を表に出さない男だったからね。しかし私が望んだ通り、彼は怒りを剥き出しにして向かってきてくれた。クラブを本気で思っているからこその感情だ。とても嬉しかったよ
ユリッチのこの告白に対しティフォージはドン引き。「俺たちの監督はサイコパスだ!(汗)」と我々を混乱の渦に巻き込んだが、終わってみればこの事件が移籍市場における重要なターニングポイントとなった事実をティフォージは目の当たりにする事となる。
【8月】大喧嘩をキッカケに怒涛の巻き返し。雨降って地固まる
指揮官との大喧嘩でプライドに火が付いたヴァニャーティの奮闘により、8月に入ってすぐトリノはインテルからヴァレンティーノ・ラザーロを迎え入れる。続いてトルコの超新星エミルハン・イルカンをベシクタシュから獲得、さらにその翌日にはアタランタからアレクセイ・ミランチュク、ウエストハムからニコラ・ヴラシッチを獲得するという怒涛の追い上げ。さらにその1週間後には新たな守備リーダー候補としてペル・スフールスをアヤックスから迎え入れることに成功した。あの"事件"からわずか2週間、奮い立ったヴァニャーティの本気によりスカッドは大幅なレベルアップを遂げたのである。
しかしカンピオナート開幕直前にも事件が発生。サシャ・ルキッチが練習をボイコットし退団が囁かれ始めたのだ。ただクラブと契約延長交渉の件で一時的に揉めていただけだった事が分かり、謝罪とともにチームに復帰。懲罰としてキャプテンマークをリカルド・ロドリゲスに譲ったがクラブとの契約延長交渉も既に再開されており、今のところ問題はない状況だ。
【9月】メルカート閉幕。最終日は余剰人員の放出作業もほぼ完了
メルカート終盤、9月に入りトリノは戦力外となっていたシモーネ・ザザとの契約を解除。市場最終日には同じく構想外のシモーネ・ヴェルディをヴェローナへ、アルマンド・イッツォをモンツァへと放出。戦力外選手のうち残念ながらシモーネ・エデラのみ新天地が決まらなかったが、高給取りだった3名の放出によりトリノは年俸総額から人件費を約€500万ほど節減する事に成功している。また、最後の新戦力としてパルマからヤン・カラモーを獲得しメルカートを締め括った。
成立した主な移籍
INGK
エトリト・ベリシャ ← SPAL(買取義務発動。移籍金€30万)
DF
ブライアン・バイェイェ ← カタンザーロ(完全移籍。移籍金€75万)
ペル・スフールス ← アヤックス(完全移籍。移籍金€900万+ボーナス€300万)
MF
エミルハン・イルカン ← ベシクタシュ(完全移籍。移籍金€450万)
ニコラ・ヴラシッチ ← ウエストハム(買取オプション付ローン。オプション€1500万)
ヴァレンティーノ・ラザーロ ← インテル(買取オプション付ローン。オプション€600万)
ミシェル・アドーポ ← ヴィテルベーゼ(ローンバック)
サムエレ・リッチ ← エンポリ(買取義務発動。移籍金€900万)
アレクセイ・ミランチュク ← アタランタ(買取オプション付ローン。オプション€1200万)
FW
ヤン・カラモー ← パルマ(完全移籍。移籍金不明)
ピエトロ・ペッレグリ ← モナコ(買取オプション行使。移籍金€450万)
ネマニャ・ラドニッチ ← マルセイユ(買取義務付ローン。移籍金€200万)
OUT
DF
グレイソン・ブレーメル → ユヴェントス(完全移籍。移籍金€4100万+ボーナス€800万)
クリスティアン・アンサルディ → 契約満了(その後パルマに移籍)
MF
トンマーゾ・ポベガ → ミラン(ローンバック)
ヤコポ・セグレ → パレルモ(完全移籍。移籍金€50万)
クリストファー・ホルヴァート → デブレツェニ(ドライローン)
デニス・プラート → レスター(ローンバック)
ベン・ラシヌ・コネ → フロジノーネ(買取オプション付ローン。買戻しオプション付帯。金額不明)
ロランド・マンドラーゴラ → ユヴェントス(ローンバック。その後フィオレンティーナに移籍)
FW
シモーネ・ザザ → 契約解除
アンドレア・ベロッティ → 契約満了(その後ローマに移籍)
マルコ・ピアツァ → ユヴェントス(ローンバック。その後エンポリに移籍)
ヨシップ・ブレカロ → ヴォルフスブルク(ローンバック)
ヴィンチェンツォ・ミリコ → カリアリ(完全移籍。移籍金不明)
シモーネ・ヴェルディ → ヴェローナ(買取オプション付ローン。オプション€500万。一定条件達成で買取義務化)
マグナス・ワルミング → ダルムシュタット(買取オプション付ローン。買戻しオプション付帯。金額不明)
気持ち的に浮き沈みの激しすぎるオフシーズンを過ごしたトリノだったが、最終的にはある程度戦えるスカッドを手に入れた。デビュー戦でいきなり得点を挙げたミランチュクは負傷で1ヶ月の戦線離脱が決まってしまったが、スフールスやヴラシッチは期待通りのプレーぶり。既にティフォージの心を掴んでいる。さらには期待値の低かったラドニッチも攻撃の中核を担う素晴らしいパフォーマンスを見せポジティブな驚きを提供するなど好材料は多い。試合を追うごとにユリッチのサッカーが新戦力たちにも浸透しており、昨季よりサッカーの質も高い。チームにかかる現時点での期待度は昨年よりも大きいと言えるだろう。昨年より一つでも上の順位でフィニッシュ、あわよくば欧州争いに食い込むような戦いを期待したい。
【2021/2022シーズン】トリノFC通信簿
今季から野心溢れる新監督とともに新たなスタートを切ったトリノ。「セリエA残留と未来への土台作り」という現実的な目標をもって臨んだ2021/2022シーズン、トリノはセリエAを13勝11分14敗の10位、コッパ・イタリアをベスト16という成績で終えた。カンピオナートで負け越している上カップ戦でもインパクトを残せなかったとはいえ、チームはシーズンを通してポジティブな印象を抱かせるパフォーマンスを見せたと言って差し支えないだろう。
一貫してマンツーマンディフェンス&ハイプレス→ショートカウンターの戦術でシーズンを戦い抜いたトリノはリーグ屈指の堅牢な守備で上位チームらを苦しめたが、一方で攻撃に関しては主力選手に負傷離脱が相次いだ影響もあって、作り出した多くのチャンス数に対してゴール数が伸び悩んでしまった。あとはネットを揺らすだけという試合は数多くあっただけに、最後まで欧州カップ戦争いに食い込めなかったのは唯一悔やまれる点だろう。ただ、ユリッチ政権発足初年度でチームはかなり成長した。全体としての点数であれば6.5くらいは付けられる。
- 監督 イヴァン・ユリッチ 7.5
- 1. エトリト・ベリシャ 5.5
- 3. グレイソン・ブレーメル 9.0☆
- 4. トンマーゾ・ポベガ 7.0
- 5. アルマンド・イッツォ 6.0
- 6. ダヴィド・ズィマ 6.5
- 7. シモーネ・ザザ -
- 9. アンドレア・ベロッティ 6.0
- 10. サシャ・ルキッチ 7.5
- 11. マルコ・ピアツァ 5.5
- 13. リカルド・ロドリゲス 7.0
- 14. ヨシップ・ブレカロ 7.0
- 15. クリスティアン・アンサルディ 6.0
- 17. ウィルフリード・シンゴ 6.5
- 19. アントニオ・サナブリア 5.5
- 20. シモーネ・エデラ -
- 22. デニス・プラート 6.0
- 23. デンバ・セック 6.0
- 26. コフィ・ジジ 6.0
- 27. メルギム・ヴォイヴォダ 6.5
- 28. サムエレ・リッチ 6.5
- 32. ヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ 5.0★
- 34. オラ・アイナ 5.5
- 38. ロランド・マンドラーゴラ 5.5
- 64. ピエトロ・ペッレグリ 5.5
- 70. マグナス・ワルミング -
- 77. カロル・リネッティ 5.0
- 89. ルカ・ジェメッロ -
- 93. モハメド・ファレス -
- 99. アレッサンドロ・ブオンジョルノ 6.5
監督 イヴァン・ユリッチ 7.5
十八番である3-4-2-1のフォーメーションを一貫して採用。メルギム・ヴォイヴォダが「マンマミーア」と嘆くほどのキツいトレーニングでトリノを走れるチームへと変え、さらにはリーグで5番目に少ない失点数(41失点)を誇る堅守を構築している。さらに、社交辞令という言葉を知らないこの男はメディアやフロントに対しても全く気を遣わずクラブの問題点を次々と糾弾。ウルバーノ・カイロ会長やダヴィデ・ヴァニャーティSDに対しても「お前らちゃんとやれや」と言わんばかりの態度でケツを蹴り上げ、クラブ全体に喝を入れた。彼を新監督に招聘した事による利益はピッチの上だけに及ばないと言えるだろう。
1. エトリト・ベリシャ 5.5
セリエA 10試合出場 8失点 4クリーンシート
コッパ・イタリア 1試合出場 2失点
前半戦は第2GKとしてベンチを温めたがシーズン終盤にレギュラーを奪取。1-1で引き分けた第29節インテル戦をはじめ当たった試合ではスーパーセーブを連発し能力の高さを示したが、試合ごとにムラが目立ち残念ながらパフォーマンスの安定感は皆無だった。現時点では来季も正ゴールキーパーという位置付けだが、正直なところ到底レギュラーは任せられない。来たるべき夏のメルカートに向け首脳陣は新たな正ゴールキーパー候補を物色中との報道もあり、来季も残留するのであれば再び控えに回る事になりそう。
3. グレイソン・ブレーメル 9.0☆
セリエA 33試合出場 3得点 1アシスト
コッパ・イタリア 0試合出場
セリエA最優秀DF賞を受賞した今季の彼のパフォーマンスの素晴らしさは、今さらここで言及する必要もないだろう。リーグ屈指の堅守を築いた守備陣のリーダーとしての役割を完璧にこなし、アンドレア・ベロッティやロランド・マンドラーゴラ不在時はキャプテンマークも巻いた。トリノにおいて間違いなく今季のベストプレーヤーだったと言える。彼のステップアップは火を見るよりも明らかではあるが、やはり寂しいものだ。しかしプレーヤーとして1人の男として大きく成長したトリノから、より大きな舞台へと羽ばたく彼を笑顔と拍手とともに送り出したいと思う。ありがとう、グレイソン。幸運を祈る。
4. トンマーゾ・ポベガ 7.0
セリエA 33試合出場 4得点 3アシスト
コッパ・イタリア 0試合出場
彼もユリッチのもとで大きく成長した選手の1人。ミランからのドライローンで加入した彼をユリッチは当初「他クラブの若手の修行場にウチを使われるのは好きじゃない」とポベガを干しかねないようなコメントを残したものの、蓋を開けてみるとサスペンションや怪我を除いてほぼ全ての試合に出場。本職のメディアーノだけでなくトレクァルティスタとしての新境地も開拓し、アッズーリにも晴れて初招集を受けるまでに至った。スクデットを獲得したミランに帰る事が濃厚とされるがトリノは完全移籍での獲得に動いているとの報道もあり、「様子を見てみよう」といった状況だ。
5. アルマンド・イッツォ 6.0
セリエA 11試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
プレシーズンの時点では不動のレギュラーという位置付けだったが、シーズン開幕直後に負傷で約1ヶ月間戦線を離脱。その期間に復調を果たしたコフィ・ジジにレギュラーを奪われた上、ダヴィド・ズィマの台頭もあり昨季に続いて再び一時戦力外扱いというまさかの事態に陥ったものの、シーズン後半に訪れたジジとズィマ欠場の機会を見事に活かしレギュラーの座を奪い返す事に成功している。2年連続で同じ状況に置かれたにもかかわらず諦めなかった彼の姿勢はまさに"漢"だ。30歳になりセンターバックとして脂の乗った来季はシーズンを通してレギュラーを守り抜きたい。
6. ダヴィド・ズィマ 6.5
セリエA 20試合出場
コッパ・イタリア 0試合出場
21歳という若さでのセリエA初挑戦となるシーズンだったが、期待以上のパフォーマンスを見せたと言えるだろう。高さを活かした空中戦と一対一の粘り強さ、そして高い戦術眼で瞬く間にイタリアの水に馴染んでいる。主に3バックの右で出場したが、ブレーメル不在時は中央でもプレー。ティフォージの間では「ブレーメルの後釜はズィマでいいのでは?」との意見も見られるほど。ユリッチ曰く「まだまだ学ぶべき事は多い」が伸びしろは十分。次なるブレーメルは彼になるかもしれない。
7. シモーネ・ザザ -
セリエA 9試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
4年前の加入以降期待を裏切り続けてきた今季ついに戦力外に。カンピオナートでの出場数こそ9と思ったより多いものの、合計プレー時間はわずか115分。出た試合でどんなプレーを見せていたか全く印象にないため評価不能である。契約は残り1年なため買い手さえ付けば退団は確実だ。
9. アンドレア・ベロッティ 6.0
セリエA 22試合出場 8得点 1アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
負傷に悩まされシーズンの約3分の1を欠場したものの、チーム内得点王となったのはやはり流石。この得点数でトップになれてしまうトリノ攻撃陣の決定力の無さも同時に浮き彫りになったわけだが、得点以外の場面でもファウルを誘う技術やキープ力でチームに大きく貢献した。去就について様々な噂が飛び交う中でもトリノのためにひたむきにゴールを狙う姿には、来季もトリノのキャプテンとして残ってくれそうな期待を持ってしまう。なお、ユリッチは記者会見で「ベロッティ?さっさと契約延長にサインすべきだ」とコメント。全くもってその通りである。
10. サシャ・ルキッチ 7.5
セリエA 35試合出場 5得点 4アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
5年前の加入以降その高い能力を燻らせ続けてきたが、ユリッチの就任によりついに才能が開花。シーズン前ヴァレンティーノ・マッツォーラの栄光の10番を背負う事に対し大きな批判を浴びたが、今や彼以上にその数字に相応しい者はいない。もともと持っていたピッチの広範囲をカバーする運動量とゲームメイク力に加え、今季は課題だった守備力が大きく改善された印象だ。熱くなりやすい性格は相変わらずだが、それもうまく活かせば強みのひとつ。中盤の選手の中ではチームベストの出来だった。
11. マルコ・ピアツァ 5.5
セリエA 24試合出場 3得点
コッパ・イタリア 2試合出場
これまでのキャリアにおいて多過ぎる負傷離脱に悩まされ続けてきたピアツァだが、それはトリノでも変わる事はなかった。加入当初は左シャドーのレギュラー候補だったが、ヨシップ・ブレカロの活躍と自身の度重なる負傷離脱により徐々にベンチに座る時間が大半に。コンディションの良い状態でピッチに立てば能力の高さを示していただけに、コンスタントにプレーできなかった点が非常に悔やまれる。加入形態はユヴェントスからの買取オプション付ローンだったが、残念ながら買い取られない事は確実だ。
13. リカルド・ロドリゲス 7.0
セリエA 34試合出場 1アシスト
コッパ・イタリア 2試合出場
今季のトリノにおいてベストサプライズ賞を授与するとしたら、このスイス代表ディフェンダーが筆頭候補になるはず。加入1年目の昨季は散々な出来だったため放出候補の1人としてピックアップされていたものの、ユリッチによって3バックにおける左センターバックのポジションを与えられ完全復活。堅実な守備と正確なビルドアップ、そして機を見たインナーラップを武器に不動のレギュラーとして見事なパフォーマンスを見せた。年間通してプレーの質が落ちなかった事も評価に値するだろう。
14. ヨシップ・ブレカロ 7.0
セリエA 32試合出場 7得点 2アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
セリエA初挑戦ながらも左シャドーのポジションで躍動。持ち味のドリブルだけでなくライン間に落ちて縦パスを引き出し、そこからサイドに展開し攻撃のスイッチ役を担うなど今季のトリノで攻撃の中核として活躍した。後半戦は若干パフォーマンスの質が落ちてしまったが、トリノでのプレーに対するモチベーションが低下した事が大きな要因だろう。事実、4月ごろ代理人を変更したブレカロはクラブに対し「チャンピオンズリーグでプレーしたい」とトリノに残る意志がない事を表明。これによりクラブは買取オプションを行使しない事を決断し退団が確定した。
15. クリスティアン・アンサルディ 6.0
セリエA 19試合出場 3アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
トリノでの4シーズン目を迎えた今季はベンチが定位置に。スタメンでの出場はわずか5試合だったが、そんな中でも3つのアシストを決めたのは流石である。さらに今季は先輩プレーヤーとして後輩選手の成長にも大きく貢献。ウイングバックとしてのプレーのいろはをヴォイヴォダに叩き込み、彼のパフォーマンス向上に大きな影響を与えている。トリノとの契約は6月いっぱいで満了となるが、既にSNSで退団の挨拶を済ませており、トリノでのプレーにピリオドを打った。5年間ありがとう、クリスティアン。
17. ウィルフリード・シンゴ 6.5
セリエA 35試合出場 3得点 4アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
トップチーム昇格3シーズン目を迎えた今季もシンゴの成長は止まらない。右のウイングバックで不動の地位を築き、驚異的なスピードとダイナミックなプレーで見る者を楽しませてくれた。ラインの低い守備ブロックを敷く相手に苦労する場面が見受けられるが、そういった守備網を攻略する術が身に付けばアフリカ最高クラスのサイドバックになれるはず。プレーがダイナミック過ぎる分、雑なパスなどもたまに見受けられたが、それを差し引いても見事なパフォーマンスだったと言えるだろう。
19. アントニオ・サナブリア 5.5
セリエA 29試合出場 6ゴール 5アシスト
コッパ・イタリア 0試合出場
ベロッティの離脱期間が長かった今季はワントップのレギュラーとしてプレー。6ゴールを記録してはいるものの、彼に訪れたチャンスの多さを考えれば物足りない数字である。ワンタッチプレーの上手さや効果的なポストプレーはいくつもあったが、ゴール前での怖さは圧倒的に足りなかった。攻撃のアクセントとしてなら十分に機能するが、エースストライカーとして据えるには正直器不足か。ベロッティの契約延長が叶わなかった場合、センターフォワードは確実に補強が必要となりそうだ。
20. シモーネ・エデラ -
セリエA 0試合出場
コッパ・イタリア 0試合出場
昨年5月に負った前十字靭帯断裂の重傷により、今季は治療とリハビリに費やした1年となった。プリマヴェーラ出身の元有望株ではあるが、確実にユリッチのプランには入っていないため、来季は新たなクラブを探す事になるだろう。得意の左足を活かしたドリブルに負傷の影響が出なければ、活躍できる場はあるはずだ。
22. デニス・プラート 6.0
セリエA 23試合出場 2得点 2アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
恐らく今季のトリノで1番"サッカーが上手い"のは彼だろう。思い返せば繰り出すプレーの全てが天才肌のそれだったように感じる。右シャドーのレギュラーとして数々のチャンスメイクに貢献したが、唯一悔やまれるのが負傷離脱期間の長さ。彼が不在の試合でトリノは攻撃の機能不全を起こしており、シーズンを通してプレーしてくれればチームとしてのゴール数ももう少し伸びたはずだ。ただユリッチからの信頼は非常に厚くクラブに対しレスターからの買取をリクエストしたとの報道も出ているため、是非とも残留してもらいたいところだ。
23. デンバ・セック 6.0
セリエA 6試合出場
コッパ・イタリア 0試合出場
冬にSPALから加入した際は将来への投資との見方が強くまだセリエAでプレーするには早いイメージだったが、長い手足を活かしたドリブル突破はスタメン出場した第34節スペツィア戦をはじめ既にセリエAでも通用する事を証明。途中出場した第32節ミラン戦では試合終了後にユリッチに直接ブチギレられていたが、それも期待の表れだ。ポテンシャルはユリッチも認めているため、自身に大きな伸びしろがある事を示せたという意味においてこの半年間はポジティブなものだったのではないだろうか。
26. コフィ・ジジ 6.0
セリエA 25試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
イッツォの負傷離脱もありシーズン前半戦は右のセンターバックでレギュラーの座を獲得。粘り強い守備と切れ味抜群のタックルで加入当初の評価を取り戻したが、シーズンを通して3つものリゴーレを献上しているのだけはいただけない。ペナルティエリア内での慎重さを欠くディフェンスを繰り返してしまった事、そしてイッツォの復活により後半戦は主に再びベンチに座る事となったものの、リゴーレさえ与えなければレギュラーに値する実力者である事は誰の目にも明らかだった。
27. メルギム・ヴォイヴォダ 6.5
セリエA 29試合出場 3アシスト
コッパ・イタリア 1試合出場
シーズン開始当初は右ウイングバックのシンゴの控えという立場だったが、シーズン中盤に左にコンバートされレギュラーを奪取。前述の通りアンサルディからのアドバイスが非常に大きいとは本人も語っており、アンサルディが得意とするキックフェイントから逆足に持ち替えての正確なクロスを見事に受け継いでいる。トリッキーなボールタッチと豊富すぎる運動量で左シャドーのブレカロと強力なアタッキングユニットを形成した。左サイドに回った事によりカットインからのシュートという新たな引き出しも手に入れたため、アシストだけでなく来季はゴールにも期待したい。
28. サムエレ・リッチ 6.5
セリエA 21試合出場 1得点 1アシスト(エンポリ)、12試合出場(トリノ)
冬の加入後数試合は出場機会がなかったが、その"順応期間"を経てピッチに立つとレギュラー争いに名乗りを挙げるようなパフォーマンスを見せてくれた。マンドラーゴラの負傷離脱もあったとはいえ、シーズン終盤はほとんどの試合にスタメン出場しルキッチとの連携を深めている。パスセンスや展開力も装備しながら同時にボール奪取の能力にも秀でているため、レジスタというよりトゥットカンピスタ(万能型)という表現の方が近い印象がある。ユリッチのもとで彼がどのような進化を遂げていくのか、非常に楽しみだ。
32. ヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ 5.0★
セリエA 27試合出場 33失点 4クリーンシート
コッパ・イタリア 1試合出場 1クリーンシート
元から期待値が低かったという事を差し引いても、今季のトリノでは間違いなくワーストプレーヤーだった。ゴールキーパーからのビルドアップを重視するユリッチによって足元のスキルの高さを買われ正ゴールキーパーを任されたものの、肝心の"ゴールを守る"仕事がセリエAのレベルに達していないというのが正直なところである。少しだけ調子の良かった昨年11月ごろセルビア代表デビューを果たしたが、このままでは二度と呼ばれないだろう。シーズン終盤にベリシャにレギュラーを奪われた後から退団の噂が絶えない状況だ。
34. オラ・アイナ 5.5
セリエA 21試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
シーズン序盤は左ウイングバックにおいて大半の試合でスタメン出場したが、相変わらず微妙なプレーぶりに終始。アフリカネーションズカップに参加しチームを離れている期間にヴォイヴォダが安定したパフォーマンスを見せたため、後半戦はベンチが定位置となった。攻撃の面においてもパスミスやボールロストが目立ったが、何よりも守備面において軽いディフェンスが散見されるという弱点を全く克服出来ていない。右ウイングバックとして最後の2試合にフル出場したがこのチャンスをも活かせず。来季も残るのであれば基本的にベンチから試合を眺める事になるだろう。
38. ロランド・マンドラーゴラ 5.5
セリエA 21試合出場 2アシスト
コッパ・イタリア 2試合出場 1得点
出場した試合ではいずれも及第点のパフォーマンスを見せたが、彼の能力を考えれば正直物足りない印象だった。コンビを組む事の多かったルキッチに比べ存在感の感じられない試合もちらほら。後半戦は負傷の影響もあってコンディションが整わない中新加入のリッチが台頭したため、もはや絶対的なレギュラーではなくなった格好だ。ただ、トップフォームさえ取り戻せばチームの柱となれる選手だけに、現在交渉中であると報じられるユヴェントスからの完全移籍実現を願いたいところである。
64. ピエトロ・ペッレグリ 5.5
セリエA 6試合出場(ミラン)、9試合出場 1得点(トリノ)
コッパ・イタリア 0試合出場
ユリッチがジェノアでデビューさせた教え子だけあって、負傷癖が治らない割には比較的多くの出場機会をゲット。トリノでのこの半年間で自身に眠るポテンシャルは確かに見せた。持ち味のポストプレーに加え荒削りながらも果敢なドリブルは強豪相手でも確実に通用していたように思えるが、サナブリア同様ゴール前での怖さが足りない上やはり怪我が多過ぎる。この負傷癖のせいで来季もトリノに残るかどうかには大きなクエスチョンマークが付いてしまうが、個人的にはもう少しトリノで見てみたい。
70. マグナス・ワルミング -
セリエA 4試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
デンマーク2部リーグからセリエAへと急激なステップアップを遂げた今季、指揮官を納得させる事に失敗。夏からトリノに加入したにもかかわらず同ポジションで冬加入組のセックに出場試合数で負けている事からも、ユリッチにとってはまだ戦力として計算出来ないという事だろう。コンスタントな出場機会さえ得られれば伸びそうな器だけに、来季はローン修行などで自身の価値を監督にアピールしたいところだ。
77. カロル・リネッティ 5.0
セリエA 16試合出場 2アシスト
コッパ・イタリア 2試合出場 1アシスト
率直な感想を述べるなら中途半端。センターハーフを主戦場とするリネッティだがメディアーノで起用するにはプレー強度が足りず、トレクァルティスタで起用するにはクオリティが足りない。ユリッチ流3-4-2-1のフォーメーションには居場所がない印象だ。現所属選手の中で最もユリッチ戦術にフィットしていない選手と言わざるを得ない。トリノには昨シーズン大きな期待とともに加入したが2年目の今季もインパクトを残せず。セックやリッチが加入した今立場はさらに厳しいものとなっており、新天地を求める事はほぼ確実だ。
89. ルカ・ジェメッロ -
セリエA 1試合出場 1クリーンシート
コッパ・イタリア 0試合出場
近未来の正守護神候補筆頭であるジェメッロは今季第3キーパーとしての立場でチームに残留。第21節フィオレンティーナ戦でトップチームデビューを果たし見事にクリーンシートを達成している。安定感はベリシャやミリンコヴィッチ=サヴィッチを既に上回っており、現代的なゴールキーパーとして足元の技術も堅実。ティフォージからは「シーズン後半戦はジェメッロを正キーパーに」との声も非常に多く挙がったほどだ。ゴールキーパーの補強次第ではローン修行に出向く可能性もあるが、出来るだけ高いレベルのカテゴリーで腕を磨いて欲しいものだ。
93. モハメド・ファレス -
コッパ・イタリア 0試合出場
冬にジェノアでのローンを打ち切り、4年越しとなるトリノ加入が実現したものの加入数日後の練習中に前十字靭帯断裂の大怪我を負ってしまった。個人的には4年前からアンサルディの後継者として望んだ選手だったためこのような結末は非常に残念だが、トリノでの公式戦は1試合も出場がないままラツィオに返却される事が濃厚。本人にとっても悔しい結果となったため、新天地での再起を期待したい。
99. アレッサンドロ・ブオンジョルノ 6.5
セリエA 23試合出場 2アシスト
コッパ・イタリア 2試合出場
3バックの左でロドリゲスとハイレベルなポジション争いを繰り広げた。22歳という年齢ながらも落ち着き払ったその守備技術で今季もさらに評価を高めた印象だ。3バックの両脇にインナーラップでの攻撃参加を求めるユリッチのリクエストにも柔軟に対応。状況を見据えた上でのオフザボールの動きからは戦術理解度の高さが窺える。ズィマと同じくブレーメル不在時に中央でもプレーしたがこちらでもユリッチの期待に応えており、ついに先日イタリア代表合宿にも晴れて初となる招集を受けた。来季もロドリゲスとのポジション争いに挑み、レギュラーの座を狙う。
【DAZN Talks】ヴォイヴォダ :「当たり前の毎日が幸福の連続」
今季からユリッチに左ウイングバックという新たな役割を与えられ、見事にレギュラーの座を掴んでいるメルギム・ヴォイヴォダ。繊細な足下のスキルや両足を器用に使いこなすプレーぶりで、クリスティアン・アンサルディの正統後継者として評価を高めている。そんなヴォイヴォダが先日、DAZN TalksというDAZN Italiaが提供する番組に出演した。生い立ちやトリノでの日々、そしてプライベートなど様々な質問に答えている。
ちなみにDAZN TalksはTwitch*上で視聴者が参加できる形式の番組で、Twitchアカウントを通して選手に直接質問ができるという魅力的なコンテンツである。あまり大きな声では言えないかも知れないが、VPNに接続しTwitchのアカウントを作成すれば恐らく日本からでも視聴可能だ。セリエA各チームの選手たちが定期的に出演しているため、興味がある方はぜひ調べてみて欲しい。
*Amazonが提供するライブストリーミング配信プラットフォーム
では、早速視聴者からの質問やコメントを見ていこう。
ー結婚してるんだっけ?
いや、まだだよ。
ー君はすぐ恋に落ちるタイプ?それとも時間が掛かるタイプ?
僕は恋に落ちたことがあまり無い。今の僕はサッカーに集中してるけど、その時はいずれ訪れると思うよ。母からのプレッシャーもあるしね...
ーファンタカルチョ*は好き?
*活躍しそうな選手11人を試合がある都度選出し、実際の活躍度合いによって変動するポイント獲得数を競うゲーム
イタリアに来たばかりの時は存在を知らなかったけど、ジジやルキッチに説明されて知った。彼らはいつもプレーしているよ。ある試合で僕はイエローカードを貰ったんだけど、その事をなぜか2人に怒られちゃったんだよね。僕はプレーしていないけど、それでなんとなくファンタカルチョの仕組みが分かったよ。怒られるのが嫌だから、それ以来カードは貰ってないんだ(笑) 2試合連続でアシストを決めた時はなんか褒められたよ。ファンタカルチョをやってるフィジオテラピストのパオロもいつも僕に謎のプレッシャーを掛けて来るんだ。他の選手だとザザ、ベロッティ、ポベガなんかもやってるみたいだよ。
ーチームの中で君のニックネームは何?なんて呼ばれてるの?
僕のファーストネームは"メルギム"だけど、ユリッチが最初間違えて"メグリム"って呼んできたんだ。今ではチーム全員がそう呼んでくるようになってしまったよ(笑) イタリア語を普段使っている人たちに僕の名前が発音しづらいのは分かってるから、今さら訂正するつもりも無いけどね。
ーチームで1番仲が良いのは誰?
もちろんみんなと仲が良いけど、1番笑えるヤツはイッツォだね。アンサルディも人生楽しんでる感が凄いよ。ただ1人挙げるとするならやっぱりイッツォ。今日はちょうど彼の誕生日*だね。愛してるぜブラザー!誕生日おめでとう!
*この日はイッツォの誕生日の3月2日
ーアンサルディの存在はあなたの成長に影響を与えている?
彼と話すのはとても好きだ。とても経験豊富な選手だからね。いつもたくさんのアドバイスを貰っているよ。例えばドリブルを仕掛けるかシンプルにプレーするかの判断とかね。彼はいつも若い選手に対してアドバイスをしてくれる素晴らしい先輩だと思うよ。
ーユリッチとの関係はどう?
僕はプロフェッショナルだから、監督との距離感は大事にしている。だけど、彼がチームの前で話す時、なるべく僕はメモを取るようにしているんだ。そして彼が要求した事をピッチで表現できるよう努力している。彼が言う事は正しい事ばかりだからね。たくさんの事を彼から教わっているよ。
ーユリッチとのエピソードは何かある?
僕を抱きしめて"お前は俺の大事な戦士だ"って言ってくれた事がある。嬉しかったね。クラブや監督への僕の忠誠心を彼に理解してもらっている事が分かったよ。
ーユリッチのトレーニングはやっぱりキツいの?
マンマミーアって言いたくなるレベルでキツいよ...ただ、正しい手法ではある。常に強い気持ちを持ってハードワークする。これが僕らのメンタリティだ。
ー君のアイドルは誰?
ロナウジーニョ。彼はいつも笑顔を忘れずプレーしていたからね。僕と同じポジションでならダニ・アウヴェス。言うまでもなく偉大なスペシャリストだね。
ークルヴァ・マラトーナ*の声援は力になっている?
*トリノのサポーターが陣取る観客席
もちろん。僕らには彼らが必要だ。残念ながらコロナのせいでしばらく一緒に戦えなかったけどね。彼らの熱い声援は大好きだよ。試合も70分くらいになると足に疲労を感じ始めるけど、そんな時彼らがエネルギーを分けてくれるんだ。
ースペルガへ最初に行った時の感想を聞かせて。
個人的に行ったのは去年だ。コロナのせいでチームでの訪問は出来なかったけど、友人とプライベートで行ったよ。歴史を作ったこのユニフォームを纏う事に誇りを感じたね。
ートーロから最初にコンタクトがあった時はどうだった?
美しい歴史を持つクラブはすごく好きだ。僕が前いたスタンダール・リエージュもこの点においてトーロと似てると思うよ。ヴァニャーティSDから最初に連絡を貰った時、すぐにイエスと言った。トーロの魅力的な歴史の話を聞かせて貰い、僕はすぐに魅了されたんだ。今ここにいる事がとても幸せだよ。目に見える結果を残したいね。
ーイタリアのサッカーに適応する上で苦労した事は?
ベルギーとイタリアはあらゆる面において異なるね。ここイタリアはより戦術的で、とても頭を使う。例えばベルギーではスペースを見つけ次第すぐに使うけど、イタリアではそこを使うべき適切なタイミングの判断も求められる。ベルギーでのサッカーは本能的な要素が濃かったけど、イタリアでは従うべきセオリーが常に存在しているんだ。
ー"メルギム・ヴォイヴォダ"という男について聞かせて。
僕はドイツで生まれた。当時僕たちの国コソヴォは戦争中だったからね。僕の父も兵士として参加していたよ。その後コソヴォに帰り、1年半を過ごした。戦争が終わった後家族でベルギーに移り、そこで僕は育ったんだ。僕はこれまでの人生でたくさんの犠牲を払ってきた。その経験が僕という人間を作っていると思うよ。当たり前の日常がいかに幸せかを理解する事ができる。
ーたしか君の家はとても大家族だよね。
そうだね。僕には姪っ子もいるんだ。母は"孫が欲しい"と僕にいつもプレッシャーを掛けてくるよ。いつ結婚するの?彼女はできた?って電話してくるんだ(笑)
ートリノの街に家族を招待した事はある?
僕はこの街が大好きだ。コロナのせいもあってまだ探索していない場所もあるんだけど、姪っ子たちとアルバに行った事はあるよ。ここは食べ物が本当に美味しいね。
ー食べ物は何が好き?
パスタがめちゃくちゃ好きだよ。魚が入ってると最高だね。
ートリノに訪れる人々に食べ物で何をオススメする?
プリンや肉入りのラヴィオリ。僕の家に来れば振る舞ってあげるよ。
ー料理するんだね。
たまにね。母が家に来た時は作ったりする程度だよ。
ーロッカールームでよく踊ってるのは誰?
イッツォ。そしてアンサルディ。音楽を掛けるのはアイナだけど、踊るのはイッツォだ。DJアイナはよくヒップホップを掛けるけど、イタリアの曲も掛けてるよ。
ーユリッチは厳格なイメージがあるけど、彼がロッカールームに入って来たら君たちは静かになるの?
そんな事もないよ。僕らは家族みたいなものだし、働く時は働く、冗談を言う時は一緒に笑う。全員で夕食を食べに行く事もあるしね。
ー将来の自分はイメージできる?
分からない。僕は一日一日を大事に生きているからね。当たり前の毎日が幸福の連続なんだよ。だから5年後や10年後自分がどうしているかは分からないね。
ー試合前、君を焚き付けるものは何?
僕の兄だ。7つ歳上なんだけど、幼い頃から色んな事を彼から教わった。サッカーを教えてくれたのも兄だったんだ。父には"プロサッカー選手になれる人間は少ないのだから、勉強を頑張りなさい"と言われていたけど、一方で兄はいつも僕に可能性を感じてくれていた。今でも試合後にダメ出しを食らったりするし、改善すべき点を教えてくれたりするんだよ。
ーチームで1番オシャレなのは?
僕だね。うん、冗談だよ。これもイッツォかな。からかってる訳じゃなくて、本当だよ。彼の私服姿はとてもカッコいいと思う。ベルギーではこんなにエレガントな着こなしをする人を見た事がないよ。あとはマンドラーゴラやルキッチもとてもオシャレだね。
ーアンサルディって結構ダサいよね?(ボルハ・バレーロからのコメント)
そうだね(笑) 彼は服装に気を遣わないからよくからかわれてるんだけど、あんまり気にしてないみたいだよ。
ーぶっちゃけブレーメルってそんな凄いの?
本当にバケモノだよ。物凄い成長を遂げているね。彼はまだ若いし、ここからさらに成長するだろう。契約延長もしたし、まだまだここにいて欲しいね。
ーブレーメルのどういうところが凄い?
まずフィジカルが凄く強いけど、1番はトレーニング量だね。彼は常にジムかピッチにいるイメージだ。彼の成長は、努力をそばで見てきた僕からすれば案の定って感じだよ。
ーベロッティやヴァンヤとの関係は?
ヴァンヤとは1年間スタンダールで一緒にプレーしたから、よく知る仲って感じだね。僕がトーロに来た時は驚いていたよ。イタリアでの生活に慣れるよう助けてくれた。"セリエAこそが本当のサッカーだ"って言ってたよ。ベロッティはトーロを象徴する選手で、セリエAで100ものゴールを記録してきた。尊敬に値するよ。チームのために全てを尽くす男だね。
ー試合前のルーティーンはある?
ピッチで神に祈りを捧げている。お互いのチームに怪我人が出ない事、そしてチームの勝利のためにね。それ以外は特にないかな。
ーオフの時間は何をするのが好き?
1人でいる時は、テレビを見たりNetflixを見たり、あとは音楽を聴いたりしてるかな。家でゆっくり過ごすのがとても好きなんだ。
ーサッカー選手になっていなかったら、何になりたかった?
これは即答できる。整備士とか電気技師とか、手を使って作業する仕事に就いていたと思う。学校には行ってたけど勉強が好きではなかったから、サッカー選手としてお金を貰っているのはとても幸運な事だと思っているよ。
ー音楽は何を聴くの?
フランスの音楽をよく聴くよ。お願いだから、今歌ってとか言わないでね?
ー記憶に残ってる試合はある?
トーロでのデビュー戦。アウェイのフィオレンティーナ戦だったんだけど、ユニフォームを着てピッチに立った瞬間、自分がセリエAというハイレベルな舞台に辿り着いた事を実感した。もう1つはサポーターでいっぱいのスタジアムで、コソヴォ代表としての初ゴールを決めたチェコ戦だね。
ー君にとって代表は何を意味する?
代表でプレーする事はたくさんのものを背負うという事。国を守る兵士のような感覚だよ。サッカーを通して、コソヴォという国の存在を主張できる。実際、僕のイタリア人の友人はコソヴォという国を知らなかったらしいけど、セリエAでプレーするムリチやラフマニ、そして僕などのコソヴォ人選手の影響で存在を知ってくれたと言ってたよ。