Ora tocca a te, Davide!
筆者が更新をサボっていたこの約半年の間で、トーロは激動の時を過ごした。"ラグビーからサッカーへの転向"を託されたマルコ・ジャンパオロによる新生トーロはこれでもかというほど勝利に恵まれず、一時は最下位にまで順位を落とすなど残留争いの主役に。ワルテル・マッツァーリの遺産である強度の高い対人戦にジャンパオロが施したパスワーク重視の戦術がミックスされ、チームは比較的機能してきたところではあったが、セリエB降格を危惧したクラブは先月ついにジャンパオロを解任。クラブOBであり残留争いのスペシャリストであるダヴィデ・ニコラを新監督に据えている。
久々の更新となる今回は、短命であったジャンパオロ政権の振り返りとニコラを招聘し冬のカルチョメルカートを終えたトーロのセリエA後半戦の展望を綴っていきたい。まずは前半戦のレビューを駆け足でやっていこう。
勝負弱さが際立ったジャンパオロ・トーロ
ジャンパオロを指揮官に据えスタートした今季はサンプドリア時代に指導したニコラ・ムッル、カロル・リネッティ、フェデリコ・ボナッツォーリらに加え、リカルド・ロドリゲスやアメル・ゴヤク、メルギム・ヴォイヴォダらを獲得したものの、補強の目玉となるはずだったルーカス・トレイラ、デニス・プラートらの獲得には失敗。新戦力たちもここまでインパクトを残しているとは言い難く、特に中盤の構成力不足や安定感のない守備が大きな課題として挙げられた。
4-3-1-2
GOODポイント
・真逆のタイプでありながらも、レジスタの役割を任されたトマス・リンコンが思いのほか機能
・サシャ・ルキッチがトレクァルティスタとして新境地を開拓
・アンドレア・ベロッティのコンディションが非常に良く、ゴールにアシストに大活躍
BADポイント
・グレイソン・ブレーメルを除いてほぼ全てのDFたちが安定感に欠けるプレーを連発
・サルヴァトーレ・シリグが完全にスランプに陥るという計算外の事態
・ハイライン&ハイプレスが全く機能せず
3-5-2
GOODポイント
・ウィルフリード・シンゴの覚醒
・3バック採用に伴うアルマンド・イッツォの復活
・アレッサンドロ・ブオンジョルノの台頭
・リャンコが新たなディフェンスリーダーとして急成長
BADポイント
・内容は良いが勝ち切れない勝負弱さ
・続くシモーネ・ヴェルディの低パフォーマンス
・低調が続いたニコラ・エンクルが半ば戦力外状態に
・スアリオ・メイテはどうして試合に出ていたのかという謎
当初は自身の代名詞である4-3-1-2の布陣で戦っていたジャンパオロだが、現在のスカッドには合わないと判断し途中からマッツァーリ政権を彷彿とさせる3-5-2へチェンジ。選手たちが慣れ親しんだ布陣のおかげか内容は劇的に良くなりあとは成熟を目指すところであったが、昇格組にも勝ちきれない勝負弱さが解任への引き金になったと言えよう。筆者としてはここから巻き返し!という雰囲気を感じていたため非常に残念な人事だった。ジャンパオロのトーロは上記の通り良かった点もたくさんあったが、悪かった点があまりにも結果に響き過ぎたというのが個人的な総括だ。次の職場となるクラブでは是非結果を残して欲しい。In bocca al lupo, Marco...
冬のメルカートの動き
監督交代人事が為されてから間もないトーロは、比較的忙しいメルカートを過ごした。残留争いに巻き込まれている現状では当然のことであるが、ここまで動きがあった冬は久々だ。補強をした冬は少なくとも4年ぶりくらいな気はする。
IN
MF
ロランド・マンドラーゴラ ← ユヴェントス(買取義務付ローン : €1000万)
FW
アントニオ・サナブリア ← ベティス(完全移籍 : €700万+ボーナス€300万)
OUT
GK
アントニオ・ロザーティ → フィオレンティーナ(完全移籍 : 金額不明)
MF
ヤコポ・セグレ → SPAL (買取オプション付ローン : SPALのセリエA昇格で買取義務化。金額不明)
スアリオ・メイテ → ミラン(買取オプション付ローン : ローン料€50万。買取オプション€800万+ボーナス150万)
FW
シモーネ・エデラ → レッジーナ(ドライローン)
ヴィンチェンツォ・ミリコ → フロジノーネ(ドライローン)
チームメイトやティフォージからも愛される存在だったアントニオ・ロザーティの退団は寂しいが、今回のメルカートでトーロは素晴らしい動きを見せたと言って良いだろう。負傷による長期離脱で戦線を離れていたダニエレ・バゼッリの復帰も大きな補強だ。ニコラの構想から漏れたスアリオ・メイテ、シモーネ・エデラらを放出し、ロランド・マンドラーゴラ、アントニオ・サナブリアの即戦力2名を獲得。マンドラーゴラの到着で居場所を失ったヤコポ・セグレをメルカート終幕直前で売却することにも成功している(良い選手なのでドライローンで出して欲しかったが)。ニコラ・エンクルとニコラ・ムッルの売却を決められなかった点は後悔が残るが、それを抜きにしてもやはりダヴィデ・ヴァニャーティはやれば出来る男である。退団が確実視されたフェデリコ・ボナッツォーリも新天地が見つからなかったが、新戦力サナブリアに加入早々COVID-19陽性反応が出てしまいチームへの合流が遅れるため、この点は結果オーライだろう。
残留争いへ向けたニコラ・トーロの予想布陣
ニコラは監督キャリアの中で主に3バックを多用してきた指揮官だが、記者会見でも語った通り型にはまらない指導が特徴。フォーメーションがガラッと変わる可能性も否定は出来なさそうだ。報じられている中で可能性が最も高そうなのは3-5-2の継続と4-4-2の採用。今回はこの2つでここからの序列を展望しよう。
3-5-2
レギュラーがほぼ確定しているのはシリグ、リャンコ、イッツォ、ベロッティ、シンゴのみと、複数のポジションで熾烈なレギュラー争いが展開されるはず。マンドラーゴラが加わった中盤も見どころ満載だ。左のセンターバックで今季から台頭してきたプリマヴェーラ出身のレフティ、アレッサンドロ・ブオンジョルノはニコラから高い評価を受けており、ブレーメルを押し退けてレギュラーを奪取する可能性もありそう。前指揮官のリクエストによりトーロへとやって来た選手たちは全員厳しい立ち位置からのスタートが予想される。
4-4-2
この布陣が採用された場合、ともに3バックと3センター向きであるイッツォ、ルキッチは確実にベンチ行き。一方サイドでのプレーを得意とするヴェルディは恩恵を受けるだろう。また、4-4-2採用の場合ゴヤクの左サイド起用も有力らしくこちらも楽しみである。今季途中からレギュラーの座を失ったエンクル、ヴォイヴォダ、ロドリゲスらの奮起にも期待したい。
【まとめ】冬のメルカートで戦力はアップ。あとはニコラ次第
今回はここまで。久々の更新だったためかなり時間が掛かってしまったが、今読んで下さっているそこのアナタに現在のトーロの事情が少しでも伝わったのであれば本望だ。あとはトーロが今季セリエA残留を決めて来季からヨーロッパ争いをしてくれるのなら願ったり叶ったりだ。
以上、あざっした!
Sempre Forza Toro