トリノFC情報局

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【トーロベンチに座るおじいちゃん】トニーってだれ?

 

"マガッツィニエーレ(Magazziniere)"という職業をご存知だろうか?日本ではポルトガル語"ホペイロ(Roupeiro)"という呼び方が浸透しており、そちらの方が耳に馴染みはあるかもしれない。

 

簡単に言えばボールなどチームの用具の管理をしたり、選手が使うスパイクや練習着などのギアを手入れしたりする仕事だ。日本語に直訳するなら"用具係"が最も適当だろう。選手たちが日々快適にサッカーをプレーできているのも、彼らの存在あってこそだ。

 

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トーロのマガッツィニエーレはこの男性。アントニオ・ヴィガートという人物で、今年の9月で83歳を迎えるおじいちゃんだ。生まれながらのトリニスタであり、トニーの愛称で選手たちからも親しまれている彼は、練習だけでなく公式戦でもスタッフとしてベンチ入りするなど、選手とともに戦うトーロの戦士の1人である。

 

トニーがトーロで働き始めたのはなんと1953年。今から66年前にまで遡る。17歳もしくは18歳の頃トーロに入団したことになるので、高校卒業後からということか。凄すぎる...。

 

選手との仲の良さはInstagramでも見ることができる。画質は悪いが少しだけお見せしよう。

 

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オラ・アイナ撮影、ロレンツォ・デ・シルヴェストリにめんどくさい絡まれ方をするもノってあげている優しいトニー。この後デ・シルヴェストリは「ヘイッ!ヘイッ!ヘイッ!ヘイッ!」と言いながら両手を交互に突き上げ、トニーにガニ股で迫っていった(後ろのダニエレ・バゼッリもなぜか加勢)。驚きのめんどくささである。

 

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ヴィンチェンツォ・ミリコ撮影、音楽に合わせてスアリオ ・メイテと踊るトニー。身長187センチのメイテに対しトニーはかなり身長が低いため、メイテは膝を折って高さを合わせてあげていた。かわいい。

 

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アルマンド・イッツォにカッフェを振る舞うトニー。イッツォはナポリ出身なので、ナポリ風にしてあげたよ」みたいなことを言っていた。優しい。

 

トーロの選手たちの癒しであり、モチベーターとしても唯一無二の存在であるトニーは、現地ティフォージの間でもマスコットキャラクターのように愛されており、なんとFacebookではファンページも存在する。

 

www.facebook.com

 

66年もの長い月日をクラブに捧げてきたベテランマガッツィニエーレ、トニー・ヴィガート。その長い時間をトーロとともに歩んできたのには、ティフォーゾであるからということ以外にも理由があるはずだ。

 

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これほどの期間トニーをクラブに留まらせているのは、トリノFCというクラブにとって忘れることのできないあの出来事。スペルガの悲劇である。そう、1949年に起きたあの悲惨な事故を、トニーは1人のサポーターとして経験しているのだ。少年時代通い詰めたスタジアムで、目の前にいた偉大な選手たち。そんな憧れのチームが一瞬にして消えてしまう感覚は、我々には到底想像もつかない。

 

スペルガの悲劇の詳細についてご存知ない方はこちらを参照されたい。トリノFCを応援する理由 - トリノFC情報局

 

しかし経験したのは悲劇だけではない。トニーはトーロというクラブで唯一、実際にグランデ・トリノの強さを目の当たりにした人物でもあるのだ。トーロの応援チャントにForza Vecchio Cuore Granata(戦え、古きエンジ色の魂よ)というものがあるが、彼はその"Vecchio Cuore Granata(古きエンジ色の魂)"を最もよく知る男なのである。

 

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トーロが彼を公式戦でベンチ入りさせる理由も明白。トニーはトーロの生き字引的存在であり、スパイクの手入れ以上に魂を選手たちに注入する役割を担っているからだ。舞台裏で働いているとはいえ、チームでの存在意義は計り知れない。

 

グランデ・トリノの記憶そのものであり、誰よりもその復活を信じる男。「トーロのベンチにいつもいるおじいちゃんだれ?」と聞かれればこう答えよう。彼こそはグランデ・トリノを知る俺たちのシンボル、アントニオ・ヴィガートだ。