トリノFC情報局

セリエAの古豪・トリノFCの情報を掲載しています。コメントお待ちしてます!

【ひとりごと】"エンクル事件"について考える

トーロのディフェンスリーダーであるニコラ・エンクルとクラブの関係に、明らかな亀裂が入ったのは8月24日。ホームで行われたELプレーオフウォルヴァーハンプトン戦1stレグの翌日だ。ワルテル・マッツァーリ体制のトーロは前日の試合の映像を選手とスタッフ全員で見返し、1つ1つのシーンを振り返りながらミーティングをするのだが、なんとエンクルはそのミーティングへの出席を拒否。さらにその2日後に行われたセリエA第1節サッスオーロ戦では自らマッツァーリにベンチ外を志願し、チームやティフォージを混乱に陥れた。

 

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Mi ha detto non c’era con la testa.

 

マッツァーリはエンクルがベンチ外を志願した理由についてこう述べている。直訳すると「彼は頭が無いと私に言った」。直訳だと意味が分からない。たしかにTestaという単語は頭という意味だが、「理性」や「落ち着き」というニュアンスも持つ。つまり、エンクルは「試合をできる精神状態に無かった」ということである。しかしなぜいきなりそのようなメンタル状態になったのか。

 

最も有力とされているのは、他クラブからの関心に心が揺らいでいたという理由だ。ウルブス戦1stレグを2-3で落とし、ELへの望みも薄くなった状況でメルカートの期間も残り1週間。欧州の舞台に立てるクラブに移籍するとしたら今しかない。そういった考えが彼の中で大きくなり、トーロのために戦うモチベーションを失ったのかもしれない。

 

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クラブがエンクルの移籍志願を反故にした説

 

移籍願望が噂されたエンクルだが、彼の獲得に興味を持っていたのはペトラーキのローマのみ。エンクル事件が明るみに出たその日、カイロはメディアを通じてローマに対しこう警告した。

 

ローマが我々の選手に接触した場合、その度に€90万の罰金を我々に支払う契約になっている。ローマが我々から選手を獲得することは不可能だ。

 

トーロとほぼ喧嘩別れのような状態で袂を別つことになったペトラーキだが、ローマのDS就任に際したこの契約はたしかに本当らしく、その日の内にローマもクラブ公式声明でこれに反応。

 

我々がトリノの選手にコンタクトを図ったという話は事実ではない。ASローマトリノのいかなる選手の獲得にも動いてはいない。

 

「獲得に動いていない」のは事実だろう。だが、恐らく獲得に動いていなかった」わけではないジャンルカ・ディ・マルツィオなどの有力記者からは、アルマンド・イッツォリャンコ・ヴォイノヴィッチなどへのローマからの関心はことごとく伝えられていたし、実はエンクルに関しても7月上旬ディ・マルツィオから報道が出ている。その際の報道内容は「ローマがエンクルについてトリノに問い合わせた。トリノの要求額は€3500万」。明らかに非売品であることの意思表示ではあるが。

 

カルチョ界のメディアの中では最も信憑性が高いメディアの1つであるSky Sportsのディ・マルツィオ。その彼によると、ローマはトリノの選手に明確な関心を示していたことになるのだ。この要求額€3500万が例の€90万込みでの移籍金なのかは定かではないが、エンクルの移籍希望報道が正しければ、恐らく7月上旬のこの時点でローマへの移籍を望んでいたはず。クラブにその旨を伝えていたとしても何ら不思議ではない。要するに、エンクルはトランスファーリクエストを提出したにも関わらず、カイロ会長によって蔑ろにされた可能性も否定はできないのである。

 

€90万の罰金の件は、エンクルを何が何でも残留させるための理由として使われただけなのかもしれない。ティフォージに宣言した「主力は売らない」という約束を守るためにも、彼らからの自分への支持を損なわないためにも。カイロ会長は強かな男である。これが事実だったとしても、別に不思議ではない。

 

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クラブのプロジェクトに確信を持てなくなった説

 

カイロ会長のコメント通り、エンクルがウルブス戦1stレグ終了後まで移籍希望を表明していなかったと仮定しよう。そうなった場合、この説が最も有力になってくるだろう。数々の有力選手を迎え入れてきた近年のトーロだが、彼らを説得する材料としてクラブが掲げているプロジェクトがある。実はその詳細はあまり語られておらず完全なる筆者の推測でしかないのだが、こちらにまとめてあるので是非参照されたい。

 

2年以内に欧州へ。トーロに今必要なのは「結果」 - トリノFC情報局

 

このような目標を掲げている中、ELプレーオフまでの補強はなんとゼロ。エンクルがクラブのプロジェクトに疑問を感じるのも無理はない。案の定ウルブスには力の差を見せつけられたわけで、タイミングとしてもクラブに怒りの矛先を向けたのは頷ける。ティフォージとしてもELプレーオフまでに補強を決めなかったことについては、クラブの方針に大きな疑問を感じた。

 

ただ、この説が正しいとなるとエンクルがチームに復帰する可能性はまだ残されている。ELプレーオフ終了後とはいえ、フロントは来季の欧州出場に向けた重要な補強を決めてきたからだ。主力も全員残留した。チームは確実に強くなっている。年々少しずつではあるが欧州の舞台は手が届く目標になってきている。トーロのプロジェクトが正しい方向に進んでいるかどうかは、あとはもうエンクルの去就次第と言っても過言ではないのだ。

 

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チームメイトたちの反応

 

ベロッティ :「彼がこのような選択をした事は残念だよ。クラブとの間に何があったのかは僕も知らないんだ。ただ、キャプテンとして彼にリスペクトを持った対応をするし、今まで通りトーロのチームメイトとして扱う」

 

バゼッリ :「何が起きたのか分からない。彼が考えを変えてくれることを祈っているし、今はそれを待つだけだ。彼はチームにとって重要な選手だし、僕らには彼を許す用意がある」

 

ボニファーツィ :「ニコラは難しい道を歩み始めた。クラブとチームに背を向けてね。だけど、彼はこれからも僕らの友であり続ける。あとは彼次第だ」

 

さて、今日はここまで。今回はトーロとエンクルの間に起きている事件について筆者の推測を記した。クラブやティフォージ、チームメイトたちを混乱させているエンクル事件の真相は未だ闇の中だが、クラブにとっても彼にとっても、事態が良い方向に向かうことを願ってやまない。彼が復帰すれば、それは今のトーロにとって大きな補強となる。ニコラ・エンクルがトーロの選手として再びピッチに立つ日は、果たして来るのだろうか。

【セリエA開幕&メルカート閉幕!】最近のトリノFCまとめ

この1ヶ月はトーロにとって色んなことがあった。目標として掲げていたヨーロッパリーグ出場はウォルヴァーハンプトンに阻まれ、結局今季も出場はお預け。言い訳をするなら補強がゼロだった上さらにはイアゴ・ファルケを負傷で欠いており、満身創痍で臨んだ2連戦ではあった。2戦とも相手の狙いは明白で、ラインを低く保ちトーロを自陣深くまで誘い込み、そこでボールを奪ってのロングカウンターでトーロは何度も苦しめられることに。ポジティブな要素も数多く見られはしたが、負けてしまっては意味がない。

 

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そして、この敗戦に追い討ちをかけるように守備の要ニコラ・エンクルがクラブと対立。エンクルはチームミーティングへの出席も拒否した上開幕戦でも出場を拒否するなど、明らかに何かあったとしか思えない豹変ぶりを見せている。Instagramではクラブ公式アカウントとチームメイトほぼ全員のフォローを外している上、自らを批判するティフォージからの数々のコメントにいいね!を連発。カイロ会長の「謝罪すればチームに戻す」との声明にも反応する素振りを見せておらず、もはやクラブとの関係は修復不可能な印象だ。彼とクラブの間にいったい何があったのか。真相が分かり次第またお伝えしようと思う。

 

ちなみに筆者は食事をする時、嫌いなものから食べ好きなものは後に残しておく派である。それは記事を書く時も同じ。悪いニュースはここまでにしよう。

 

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さて、セリエAが今季も開幕した。我らがトーロはここまで開幕2連勝を飾るなど上々の滑り出しを見せており、この上ないスタートダッシュを切ることに成功。激闘の末のEL予選敗退やエンクルの出場拒否などの影響で心身ともにダメージが予想された中、昨季と同様フィジカルを活かしたゴリゴリサッカーで勝点6を手にしている。スコアこそどちらの試合も僅差だったが、サッスオーロアタランタという難敵から勝利を収めたトーロの戦いぶりは称賛に値するだろう。クリスティアン・アンサルディシモーネ・ザザを負傷離脱で少しの間欠くことになりそうだが、それも後述の頼れる新戦力たちがきっと穴を埋めてくれるはずだ。

 

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話題をメルカートに移そう。ここ約2ヶ月もの間補強がゼロだったトーロだが、最後の週に3人の新戦力が到着している。まず今季最初の補強はディエゴ・ラクサールウルグアイ代表の左ウイングバックで、€1150万での買取オプションが付いた有償ローン(€50万)でミランから獲得した。前述の通りアンサルディが負傷で1ヶ月近く離脱するため、早期のフィットが求められるだろう。ミランでは左サイドバックという不慣れなポジションで起用されたこともあり活躍することはできなかったが、本来のウイングバックでプレーするトーロでなら真価を発揮できるはずジェノア時代のような躍動感溢れるプレーを期待したい。

 

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2人目はサミル・ウイカコソヴォ代表のポルティエーレだ。トーロと1年契約を交わした彼は、今季サルヴァトーレ・シリグのバックアッパーを務めることになる。今夏前所属のリゼスポルを退団後フリーとなっていたウイカニだが、セリエAでの豊富な実績を買われトーロへの入団が決まった。安定感に関しては凡庸だが、当たればスーパーセーブを連発するタイプ。シリグ不在時は代役としてピッチに立つことになるだろう。ちなみにパレルモ時代に主将アンドレア・ベロッティとチームメイトだったことがある。

 

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そして3人目。2ヶ月追い続けた両利きのアタッカーがついにトリノに帰ってきた。メルカートが閉まる3分前に取引が完了しギリギリのところでサインを交わしたシモーネ・ヴェルディは、トーロの攻撃陣を牽引する活躍が期待されている。移籍形態は買取義務の付いたローン。€300万のローン料に加え、1年後€2000万の買取料+ボーナス€200万がナポリに支払われる。デ・ラウレンティス会長による€2500万の要求額を完全に飲んだ形ではあるが、攻撃にクオリティをプラスしたいトーロには必要不可欠な補強。できればEL予選の前に来て欲しかったが、来季のヨーロッパリーグ出場に向けた補強だと思えば控えめに言っても最&高である。

 

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最後に今夏のメルカートの主な取引ざっとおさらいして終わりにしよう。

 

IN

GK

サミル・ウイカニ ← フリートランスファー

 

DF

クリスティアン・アンサルディ ← インテル(買取義務発動。€250万)

リャンコ・ヴォイノヴィッチ ← ボローニャ(ローンバック)

ケヴィン・ボニファーツィ ← SPAL(ローンバック。一度はSPALが€1000万の買取オプションを行使したが、それに対しトリノが€1100万で買い戻しオプションを行使)

コフィ・ジジ ← ナント(買取オプション行使。€400万)

オラ・アイナ ← チェルシー(買取オプション行使。€1000万)

ディエゴ・ラクサール ← ミラン(買取オプション付ローン。ローン料:€50万、買取オプション:€1150万)

 

FW

シモーネ・ザザ ← バレンシア(買取義務発動。€1200万)

シモーネ・ヴェルディナポリ(買取義務付ローン。ローン料:€300万、買取料€2000万+ボーナス€200万)

シモーネ・エデラ ← ボローニャ(ローンバック)

 

(いやFW全員シモーネでわろた)

 

支出合計 : 約€3300万

 

OUT

GK

ヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ → スタンダール・リエージュ(買取オプション付ローン。買取オプション:€350万)

 

DF

エミリアーノ・モレッティ → 引退。現在トーロでチームマネジャーとして奮闘中

ダニーロ・アヴェラール → コリンチャンス(買取オプション行使。€200万)

 

MF

サムエル・グスタフソン → クレモネーゼ(完全移籍。詳細不明)

 

FW

ヴィタリ・ダマシュカン → フォルトゥナ・シッタート(買取オプション付ローン。詳細不明)

アデム・リャイッチ → ベシクタシュ(買取義務発動。€650万)

エムバイェ・ニアン → レンヌ(買取オプション行使。€1500万。よっしゃ!!!!)

ルーカス・ボジェ → レディング(買取オプション付ローン。詳細不明)

 

収入合計 : 約€2400万

 

収支合計 : −€900万

 

買い取るべきローン加入の選手たちを全員買い取り、余剰戦力の整理もしながら結局ラクサールやヴェルディ獲得にも成功。動きはだいぶ遅かったが、マッシモ・バーヴァが新DSとして迎えた最初のメルカートだったことを鑑みれば、個人的に70点は付けていいという感想だ。バーヴァおつかれ!

 

さて、今回はここまで。次回は今季の選手紹介をやっていこうと思うので乞うご期待!以上あざっした!

【牛×狼】彼を知り己を知れば百戦殆からず

 

トーロにとって、考えうる中で最悪の相手を引き当ててしまった。いや、それはあちらも同じ感想だろう。セリエA vs. プレミアリーグ昨季の7位同士の対決だ。

 

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今月5日、ELプレーオフの抽選会が開かれ、トリノ対シャフティオール・ソリゴルスクの勝者はピュニク対ウォルヴァーハンプトンの勝者と激突することが決まった。順当に行けば、トーロはウルブスを倒さなければEL本戦に出場することができない。案の定、トーロはシャフティオール戦を2戦合計6-1、ウルブスはピュニク戦を2戦合計8-0で勝利しプレーオフへと駒を進めた。

 

海外の強豪と公式戦で対戦するなんて、トーロにとってはいつぶりのことなんだろうか。前回のEL出場の時だからもう5年近く前の話だろう。ウルブスは今夏イタリアからパトリック・クトローネが移籍したし有名な選手も多い。だが、近年プレミアリーグをそこまで見ていない筆者はどんなチームなのか詳しくは知らないのだ。

 

彼を知り己を知れば百戦殆からず。味方や敵について熟知していれば、何度戦っても危うい戦いにはならないことを説いた孫子の言葉である。それだ!孫子グラッツェ

 

プレミアリーグは上位から下位チームまで、はたまた2部のチームまでファンが非常に多い。当然ウルブスレベルのクラブともなれば日本にもサポーターがたくさんいる様子。トリノ対ウルブスの一戦に向け"敵をよく知る"ため、今回は週刊ウルブスRickyさんにお話を伺った。

 

 

週刊ウルブス – Barclays English Premier League

 

 

ー本企画への参加をご快諾頂きありがとうございます。まずはトリノFCを引き当てた感想をお願いします。


「怖すぎる」という言葉に尽きます。(笑) 昨季はオリンピコにて難敵ラツィオに素晴らしい試合をしてシーズンを終えていますし、今季開幕までの入りも非常にいいです。FFP問題の末ミランから出場権を譲り受けたとはいえ強豪クラブの一つに変わりありません。こちら側はどうしても勝たなければならないので、新加入選手も含め総力をあげて戦います!

 


ーウルブスサポーターさんからも難敵として捉えて頂いているようで嬉しいです(笑) 次はウルブスについてお伺いしますね。まず基本フォーメーションからお願いします。


ウルブスは3-5-2あるいは3-4-1-2を貴重としたフォーメーションです。昨シーズンの初頭は3-4-3のウィング付きで戦っていたのですが、既存のメンバーでは1試合を効率よく戦う事ができないことが分かり変更しました。

 

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基本布陣はトーロと同じ3バック


ゴールキーパーは皆さんご存知ルイ・パトリシオです。説明は要りませんね(笑)最終ラインは左からウィリー・ボリー、コナー・コーディー、ライアン・ベネット。彼らは対人能力に非常に優れていますが、一方でスピードとテクニックを併せ持った選手には非常に脆いです。コーディーロングフィードの精度が非常に高く注目です!


ミッドフィルダーは左からジョニー、ルベン・ネベス、ジョアン・モウチーニョ、レアンデル・デンドンカー、マット・ドーハティ。ウィングを置かなくなったため両サイドハーフはどんどん攻め上がる様になりました。ドーハティはクロスの上げ手として、また受け手としても機能する非常に珍しい選手で、真ん中のネベスとモウチーニョポルト時代から師弟関係にあり非常に似たプレースタイルを持っています。この二人はチームの心臓で、非常に重要な存在ですね。デンドンカーは中盤の守備を牽引する選手ですが、敵陣ゴール前では何故か彼の前にボールがこぼれ落ちる頻度が高く、見ていてとても不思議なんですよ。(笑)


フォワードはディオゴ・ジョタとラウール・ヒメネスヒメネスは得点感覚に優れており昨季は12ゴールをマークしています。ジョタはスピードに乗っていてもボールコントロールを失わないため非常に厄介な選手で、要所要所に凄まじいセンスを感じますね。

 

リザーブのメンバーにはモーガン・ギブス=ホワイトや新加入ペドロ・ネトという将来有望で面白いプレーをする選手が控えてます。

 


モウチーニョやネベスの中盤はテクニカルな印象があって怖いですね。ミランから加入したパトリック・クトローネはどのような立ち位置が予想されますか?


チーム内におけるヒメネスとジョタの役割は非常に重要です。なぜなら、攻撃の中心を担っているのはまさしく彼らだから。スタメンから外すことはできません。その中で、クトローネは試合終盤で途中出場という立ち位置が今後予想されています。

 

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今季ミランからウルブスに加入したパトリック・クトローネ


ただ、プレミアリーグに挑戦してすぐに得点を獲れる選手というのは滅多にいません。彼の場合は21歳と若く、「フィリッポ・インザーギ二世」と言われる様にストライカーとしてのポテンシャルも非常に高いです。ですから、もちろん今季の活躍は大いに期待しているものの、時間をかけてじっくり成長して欲しいというのがチームおよびサポーターの願いですね。

 


ー10番を託されたことからもクラブからの期待の大きさが窺えますし楽しみです!話をチームに戻しましょう。チームとして、ウルブスの強みと弱みを教えて下さい。


強みと言えるのはカウンターの鋭さです。これは主にヒメネスとジョタのワンツーで相手をどんどん置き去りにし、手薄になった守備陣にドリブルで仕掛けてゴールに持ち込むというもの。プレミアのどの強豪クラブもこの形で幾度も危機的状況を経験しているため、初対戦では非常に対応が難しいのではないでしょうか。

 

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ウルブスの鋭いカウンターには要警戒だ


弱みはポゼッション重視の相手に主導権を握られやすいということです。私が思っていることなのですが、ボール奪取の狙いがはっきりしないため単調な守備になってしまっているのではないかと。無敵のエアバトルはチームの長所として挙げられるものの一つであることから、苦しい状況下では自陣でがっちり固めて守り、クロスに備えるというのが傾向として見られます。

 


ーなるほど、トリノもカウンター主体のチームなので、対戦時はかなりスピーディーな展開になりそうですね。ところで、Rickyさんイチオシの選手は誰ですか?


べロッティのカウンターには非常に恐怖感を覚えております...(笑) そういった意味で、私はコナー・コーディーを挙げたいと思います。ウルブスのキャプテンを任されていることからも分かる通りチームの精神的支柱として機能していて、特にべロッティのような推進力のある選手に対して唯一対応できるのが彼ではないかと考えています。取り分けこのトリノ戦に関しては活躍が期待される選手ではないかと。

 

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ウルブスの主将コナー・コーディー

 

両陣アグレッシブな選手が多く最後の最後まで試合がオープンな展開になることは考えにくいです。そこで、彼の正確なロングフィードは後方からのバックアップの手段として非常に効果的ではないでしょうか。

 


コーディーvs.ベロッティの主将対決にも注目ですね!ちなみにRickyさんはセリエAのチームにはどんな印象をお持ちですか?


各チームに今までに無いようなアイデンティティが形成されつつあると感じております。実は、現在トリノの指揮官を務めているワルテル・マッツァーリ監督が2007年サンプドリアに在籍していたちょうどその頃からそう感じていました。

 

中でも強烈だったのが2011-12シーズンのナポリです。3-4-2-1とかつては典型だったフォーメーションに、前線3人には自由にプレーさせ他の選手には綿密な指示を与えるという独特な戦法。結果的にCLのラウンド16で当時最強と言われていたチェルシーと互角な戦いを繰り広げました。

 

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マッツァーリが監督を務めていた当時のナポリ

 

代々受け継がれる優れた面を残しつつ新たな要素をそこに追加し、独自の手法で戦うチームが増えてきている点は非常に好感が持てます。

 


ー今マッツァーリが作り上げているトリノも彼が一時代を築いたナポリの戦術をベースに、現代サッカーで最重視されるトランジションをエッセンスとして加えたチームです。そういった観点で見るプレミアリーグはここ10年でどんな変化を遂げているとお考えですか?


外国の大規模投資家がプレミア各クラブのオーナーシップを買収し、過去と比較しても異常にメンバーの質が高いチームが増えてきました。レベルの高い選手が集まるチームでは、より難易度の高い戦術が可能になり急速に力を付けているクラブも少なくありません。

 

ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズもその中の1つで、近年は3部に所属していたこともありましたが、中国の復星(フォスン)グループがウルブスの株式の大半を購入したことでチームの体制が一気に変化しました。結果的に優秀な選手やスタッフをスカウトし今では1部リーグ7位に入るまでのチームに成長しています。

 


ー経営や戦術、様々なことがここ10年で変わりましたよね。プレミア各クラブの資金力には嫉妬すら覚えるレベルです(笑) さて、この質問で最後にしましょう。ズバリ、トリノ戦のスコア予想をお願いします!!


非常に難しいです...。あくまで主観混じりに予想させてください(笑) 私はウルブスのホームの試合が3-1、トリノのホームの試合が1-1になるのではないかと考えています。ウルブスは昨季リーグ上位のビッグクラブ相手に互角の試合を繰り広げました。一方で下位の相手には簡単に黒星を許してしまうという隙があるクラブですが、強い相手に対して集中して戦えるのがウルブスだと考え、このスコアを予想します。

 


ープレミアの7位vs.セリエAの7位なので予想は難しいですよね(笑)このカードは結構注目を集めているイメージなので、お互い良い試合にしましょう!今日はありがとうございました!

 

フットボールにおいて、歴史的に見るとイングランドとイタリアは因縁の関係にあり、それぞれの独特な文化的側面が窺えそうですね!良い試合になることを期待しております。こちらこそありがとうございました!

 

 

いかがだっただろうか。一つ一つの質問に対し非常に丁寧に答えて下さったRickyさんにはこの場を借りて改めて感謝したい。我々はあくまで1人のファンに過ぎないのだが、事前に相手チームの情報を仕入れてから観戦することで、その試合は何倍にも面白くなる。トリノとウルブスのカードが見どころ満載ということが、読んで下さったあなたにもお分かり頂けたと思う。ヴェルディ間に合え!

 

そんなトーロ対ウルブスのスケジュール(日本時間)は以下の通り。

 

1stレグ(ホーム) 8月23日(金) AM4:00キックオフ

2ndレグ(アウェイ) 8月30日(金) AM3:45キックオフ

 

土曜日の早朝なら見たかもとか言わずに、そこのあなたも、トリノ対ウルブスをLive on DAZN(ない)

 

 

【いよいよヴェルディ獲得間近?】最近のトリノFCまとめ(告知もあるよ)

 

EL予選2回戦でハンガリーデブレツェニを破り、危なげなく3回戦に進出したトーロ。ベラルーシのシャフティオール・ソリゴルスクとの1stレグは5-0というスコアで大勝し、プレーオフ進出に王手をかけている。ベロッティザザのコンビはこの試合も非常によく機能していたし、メッザーラで起用されたベレンゲルの奮闘もあってファルケの不在はあまり感じなかった。

 

後半イッツォが空中戦の落下時に右腕を強打し負傷交代、さらにはエンクルが自ら交代を要求するなどかなり後味の悪い勝利ではあったが、明後日行われる2ndレグには両者揃ってメンバー入り。イッツォに関しては先発出場は難しそうだが、エンクルは本人もInstagramで「大丈夫!」と主張していたため問題はなさそうだ。

 

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そんな2ndレグだが、1stレグ同様3-5-2の採用が濃厚。イッツォの代役には1stレグで見事なプレーぶりを見せたボニファーツィの起用が予想されている。メディアーノにはリンコンの今季初先発が濃厚だが、メッザーラはまだ不確定要素が大きい。ここではバゼッリメイテを挙げているが、ベレンゲルやルキッチ起用の可能性も低くなく、既に5点差を付けていることからターンオーバーを敷くという案もあるらしい。ツートップはベロッティとザザのコンビが濃厚ではあるが、場合によってはミリコラウティの出場も期待ができそうだ。

 

2ndレグも無事終えこのままプレーオフに進出した場合、対戦相手はピュニクとウォルヴァーハンプトンの勝者。ウルブスは既に1stレグで4-0と勝利しており十中八九プレーオフではトーロ対ウルブスが実現するだろう。そこでだ。そんなウルブス戦を前に、週刊ウルブスRickyさんに試合の展望を含め色々とお話を伺うことに成功した!プレーオフ前のマッチプレビューとして出す予定なので、乞うご期待!

 

週刊ウルブスのリンクはこちら↓

週刊ウルブス – Barclays English Premier League

 

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さて、話をメルカートに移そう。まずは連日報道されているシモーネ・ヴェルディについて。どうやらナポリPSVからイルヴィング・ロサーノを獲得することが濃厚となったらしく、玉突きという形でヴェルディトリノ移籍もどんどん実現へと向かっているようだ。噂では€1000万の有償ローンに€1000万の買取義務が付いた移籍形態となるらしい。ロサーノのナポリ移籍決定待ちではあるが、ウルブス戦での起用を目指しヴェルディ獲得に尽力して欲しいところだ。

 

その他ホットな名前はディエゴ・ラクサールセコ・フォファナアルベルト・パレアーリの3名。ラクサールにはパルマなども興味を示していて、トーロ的には様子を伺っているというスタンスだ。ミランの要求額は€1500万と伝えられているが、恐らく€1200万ほどで獲得は可能だろう。しかしトーロは買取オプション付きのローンを希望しており、完全移籍で売却したいミランの希望に沿うことは出来なさそう。AZのトーマス・アウエヤンインテルフェデリコ・ディマルコなど、新たなターゲットを模索する必要がありそうだ。

 

先週あたりからまた噂が出始めたフォファナは、ウディネーゼが昨年獲得に興味を示していたパリジーを取引に含める用意がトーロにはあるそうだが、今のところウディネーゼからの反応は良くなく難しい交渉になりそうだ。第2キーパー候補のパレアーリはトーロへの移籍を熱望しており、所属先のチッタデッラが代役を探し始めたとの情報もある。チッタデッラは現金€300万を要求しているが、トーロとしてはなるべく第2キーパーに金をかけたくないというのが正直なところ。こちらもクラブ間合意はまだ遠そうだ。なお、代替案にはベネヴェントのロレンツォ ・モンティーの名前が挙がっている。

 

メルカートについてバーヴァは「我々には既に強いチームがある。補強を急ぐ必要はない」とコメントしているが、補強ゼロで臨むウルブス戦は正直不安でしかない。ヴェルディの加入は今週中に決まるとの報道もあるため続報を待ちたい。

 

短かったが今回はここまで。告知をしたくて無理矢理書いたので内容も薄い。すんません!

 

それではRickyさんへのインタビュー記事、お楽しみに!

 

【最初の補強は誰に?】最近のトリノFCまとめ

 

先週行われたヨーロッパリーグ予選2回戦デブレツェニ戦1stレグを3-0と危なげなく勝利したトーロ。予選突破へ向け大きな一歩を踏み出したと言って差し支えないだろう。昨季は期待外れに終わっていたザザにも今季初の公式戦でゴールが生まれるなど、ポジティブな要素も含んだ白星だった。

 

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しかし後半、相手選手のやや悪質なタックルを受けたファルケが負傷交代。検査の結果、骨折は免れたものの足首の靭帯を損傷していることが判明してしまった。復帰には2週間から1ヶ月を要すると見られており、セリエA開幕戦にも間に合わない可能性がある。当然ながら今週のデブレツェニ戦2ndレグも欠場が確定した。

 

ピッチに立つことができないのはファルケだけではない。リャンコもそうだ。ボルミオ合宿での負傷がまだ完治しておらず、未だに起用は難しいらしい。以前から思っていたが、リャンコ怪我多くね?彼には近い将来のトーロでディフェンスリーダーを担ってもらわなければならないので、スペ体質になってもらっては困る。背番号10と未来のディフェンスリーダー。2人とも無理せずしっかりと治して欲しいところだ。

 

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ファルケとリャンコの欠場が確定しているデブレツェニ戦2ndレグ。現地メディアは3-4-1-2の採用を予想しており、トレクァルティスタにはベレンゲルもしくはルキッチの起用が有力だ。この場合主将ベロッティとザザがツートップを組む。展開次第ではプリマヴェーラ卒業生のミリコシンゴの投入も期待したいが、まずはしっかりと3回戦進出を決めたい。

 

3回戦に進出した場合の対戦相手は、シャフティオール・ソリゴルスク(ベラルーシ)対エスビャウ(デンマーク)の勝者。なお、1stレグはシャフティオールが2-0と先勝している。

 

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EL予選に追われ、セリエA全20チーム中唯一補強が一つも決まっていないトリノだが、ファルケの負傷は新加入選手の到着を早める可能性がある。トリノはメインターゲットとしてここ1ヶ月追い続けてきたヴェルディへのオファーを増額する用意があるらしく、デブレツェニ戦終了後本格的に動き出すようだ。

 

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仮にヴェルディ獲得に失敗した場合の代替案として名前が挙がっているのはデ・パウル(ウディネーゼ)、ポリターノ(インテル)、リゴーニ(ゼニト)、そしてカマノ(ボルドー)。しかしカイロは「我々が狙っているのは右足が得意な選手だ」と語っており、ポリターノは候補から外れた。デ・パウルウディネーゼの要求額が€3500万と高く、カマノは競合相手が多い。ヴェルディの代替案として最も現実的なのはリゴーニだろう。2年前のアンサルディに始まり、今年のヴェルディ、リゴーニ。トリノは青いチームから両足を器用に扱える選手を連れて来るのが好きらしい。違うか。

 

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もう一つの動きは第2キーパー探し。イチャーソが契約満了で退団しシリグロザーティの2名のみとなっているこのセクションには、セリエBから新戦力がやって来るかもしれない。名前はアルベルト・パレアーリチッタデッラで守護神を務める26歳のゴールキーパーである。

 

ミランプリマヴェーラ出身のパレアーリは昨季チッタデッラで本格的にブレイク。昨季のセリエBベストイレブンにも選出されている。本人もステップアップを望んでいると言われており、彼のInstagramをチェックしたところなんと「トーロに来て!」や「トリノで君を待ってるよ!」といったトリニスタたちからのコメントにいいね!を連発していた。めっちゃ来たがるやん。チッタデッラとの合意は得られていないものの、本人との合意を取り付ければ獲得は難しくないだろう。

 

代替案はヴィヴィアーノ(スポルティング)。彼もメディアを通してトリノ移籍を希望するコメントを出しており、スポルティングに€100万を支払えば獲得が可能らしい。あくまでトリノにとっての第一候補はより若いパレアーリだが、経験豊富なヴィヴィアーノを迎え入れるのも悪くないアイデアだ。

 

 

トリノデブレツェニ戦やらヴェルディやらで大忙し。予選3回戦進出を決めた場合何かしらの補強はあるはずなので期待して見ていきたい。

 

あ、そういえば昨日スペインのメディアから「マラガとの交渉が破談しそうな岡崎慎司トリノと契約する可能性がある」というニュースが出ていたが、イタリア方面では今のところ噂はゼロ。残念ながら、あまり信憑性は高くないだろう。めっちゃ来て欲しいけどな。

 

 

【トーロベンチに座るおじいちゃん】トニーってだれ?

 

"マガッツィニエーレ(Magazziniere)"という職業をご存知だろうか?日本ではポルトガル語"ホペイロ(Roupeiro)"という呼び方が浸透しており、そちらの方が耳に馴染みはあるかもしれない。

 

簡単に言えばボールなどチームの用具の管理をしたり、選手が使うスパイクや練習着などのギアを手入れしたりする仕事だ。日本語に直訳するなら"用具係"が最も適当だろう。選手たちが日々快適にサッカーをプレーできているのも、彼らの存在あってこそだ。

 

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トーロのマガッツィニエーレはこの男性。アントニオ・ヴィガートという人物で、今年の9月で83歳を迎えるおじいちゃんだ。生まれながらのトリニスタであり、トニーの愛称で選手たちからも親しまれている彼は、練習だけでなく公式戦でもスタッフとしてベンチ入りするなど、選手とともに戦うトーロの戦士の1人である。

 

トニーがトーロで働き始めたのはなんと1953年。今から66年前にまで遡る。17歳もしくは18歳の頃トーロに入団したことになるので、高校卒業後からということか。凄すぎる...。

 

選手との仲の良さはInstagramでも見ることができる。画質は悪いが少しだけお見せしよう。

 

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オラ・アイナ撮影、ロレンツォ・デ・シルヴェストリにめんどくさい絡まれ方をするもノってあげている優しいトニー。この後デ・シルヴェストリは「ヘイッ!ヘイッ!ヘイッ!ヘイッ!」と言いながら両手を交互に突き上げ、トニーにガニ股で迫っていった(後ろのダニエレ・バゼッリもなぜか加勢)。驚きのめんどくささである。

 

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ヴィンチェンツォ・ミリコ撮影、音楽に合わせてスアリオ ・メイテと踊るトニー。身長187センチのメイテに対しトニーはかなり身長が低いため、メイテは膝を折って高さを合わせてあげていた。かわいい。

 

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アルマンド・イッツォにカッフェを振る舞うトニー。イッツォはナポリ出身なので、ナポリ風にしてあげたよ」みたいなことを言っていた。優しい。

 

トーロの選手たちの癒しであり、モチベーターとしても唯一無二の存在であるトニーは、現地ティフォージの間でもマスコットキャラクターのように愛されており、なんとFacebookではファンページも存在する。

 

www.facebook.com

 

66年もの長い月日をクラブに捧げてきたベテランマガッツィニエーレ、トニー・ヴィガート。その長い時間をトーロとともに歩んできたのには、ティフォーゾであるからということ以外にも理由があるはずだ。

 

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これほどの期間トニーをクラブに留まらせているのは、トリノFCというクラブにとって忘れることのできないあの出来事。スペルガの悲劇である。そう、1949年に起きたあの悲惨な事故を、トニーは1人のサポーターとして経験しているのだ。少年時代通い詰めたスタジアムで、目の前にいた偉大な選手たち。そんな憧れのチームが一瞬にして消えてしまう感覚は、我々には到底想像もつかない。

 

スペルガの悲劇の詳細についてご存知ない方はこちらを参照されたい。トリノFCを応援する理由 - トリノFC情報局

 

しかし経験したのは悲劇だけではない。トニーはトーロというクラブで唯一、実際にグランデ・トリノの強さを目の当たりにした人物でもあるのだ。トーロの応援チャントにForza Vecchio Cuore Granata(戦え、古きエンジ色の魂よ)というものがあるが、彼はその"Vecchio Cuore Granata(古きエンジ色の魂)"を最もよく知る男なのである。

 

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トーロが彼を公式戦でベンチ入りさせる理由も明白。トニーはトーロの生き字引的存在であり、スパイクの手入れ以上に魂を選手たちに注入する役割を担っているからだ。舞台裏で働いているとはいえ、チームでの存在意義は計り知れない。

 

グランデ・トリノの記憶そのものであり、誰よりもその復活を信じる男。「トーロのベンチにいつもいるおじいちゃんだれ?」と聞かれればこう答えよう。彼こそはグランデ・トリノを知る俺たちのシンボル、アントニオ・ヴィガートだ。

 

【ひとりごと】ぼくにとっての"Juventus"

 

最初に言っておく。筆者は、

 

ユヴェントスが大嫌い!!

 

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ではない。

 

本来のサポーター観としては、同じトリノの街を本拠地とする彼らを憎むべき宿敵として捉えるのが一般的かもしれない。現地のトリニスタたちは実際ユヴェントスを毛嫌いしているし、彼らにとっては白と黒の縦縞模様なんてほぼウンコ同然である。歴史的に見てもサポーター同士の暴動は絶えず起きており、現地でのライバル意識は想像以上だ。

 

ついこの間のこと。新サプライヤーJomaによるトーロの新ユニフォームが発表された。驚くべきことに、Jomaの頭文字Jを象ったメーカーロゴですらトリニスタにとっては憎むべき造形らしく、「そんな文字を俺たちのユニフォームに書くんじゃねえ!」と現地ティフォージがブチギレ倒していたのは個人的に記憶に残る出来事だった。

 

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上写真のJロゴをユニフォームに掲載することに現地ティフォージは猛抗議した。

 

「歴史的に見てもユーヴェの方がトーロなんかより圧倒的に強いし、ただの妬みだろ(笑)」

 

と思われる方もいるだろう。返す言葉もない。全くもってその通りである。ユーヴェはCL制覇を目標とし、トーロはEL出場を目標とするクラブ。クラブ規模も違えば実力も違う。両者の差は歴然としているし、デルビー・デッラ・モーレ(トリノデルビー)の捉え方を取っても両チームの間には大きな違いがあることだろう。ミラノやローマなどのデルビーとは違い、実力伯仲で大注目のデルビーというわけでもない。

 

ただ、「歴史」という視点から見たライバル関係は当然尊重すべきものである。何を隠そう、1906年にトーロを創立したアルフレド・ディックは元はユーヴェの会長を務めていた人物だからだ。この点は、当時のACミラン「純血主義」に反旗を翻し「クラブは国際的であるべき」との思想のもと蜂起した一派がインテルナツィオナーレを組織した出来事と似ている。

 

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ではなぜ筆者はユヴェントスに対しメルダ!!と叫ぶことをしないのか。おかしなことなのかもしれないが、筆者的にユヴェントスには感謝に似た感情があるからだ。

 

なぜなら、ユヴェントスを憎み、成功を妬み、一泡吹かせてやりたいと思わせてくれる点に、筆者はこのライバル関係の存在意義を見出しているから。トーロにとってユヴェントスは憎しみの対象であると同時に、同じピエモンテ州トリノの街で成功を収めたクラブとして、到達すべき目標でもあるのだ。

 

ヨーロッパリーグに出たい、グランデトリノを復活させたい。これらの野望の裏には常にユヴェントスの存在がちらつく。「いつの日か、アイツらからピエモンテ州の覇権を奪ってやる」と。当然それだけがトーロの存在価値でないことは理解して頂きたいが、同じトリノの街にユヴェントスが存在してくれることで、トーロもまたひとつ強くなれる。

 

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ではユヴェントスに憧れているというのか?いや、決してそうではない。トーロにユヴェントスのようになれと言っているわけではなく、彼らの成功に学び、いつかはユヴェントスを超越した存在になって欲しい。それが何年かかるかは分からない。筆者が生きているうちに実現する可能性は低いかもしれないし、ピエモンテ州永遠の2番手という可能性だってある。むしろそっちの方が可能性は高いだろう。だけど、いつの日か白黒をエンジ色に塗り潰すという野望に限界はない。

 

ここまで読んで下さったあなたもきっとどこかのサポーター。色々と感じることはあると思うが、サポーターの在り方は人それぞれだというのが筆者の意見だというのは一貫して変わらないし、それに関して他人に干渉するつもりもなく干渉されるつもりもない。

 

結局のところ、タイトルの通りこれはただの「ひとりごと」に過ぎないのである。