【牛×狼】彼を知り己を知れば百戦殆からず
トーロにとって、考えうる中で最悪の相手を引き当ててしまった。いや、それはあちらも同じ感想だろう。セリエA vs. プレミアリーグ。昨季の7位同士の対決だ。
今月5日、ELプレーオフの抽選会が開かれ、トリノ対シャフティオール・ソリゴルスクの勝者はピュニク対ウォルヴァーハンプトンの勝者と激突することが決まった。順当に行けば、トーロはウルブスを倒さなければEL本戦に出場することができない。案の定、トーロはシャフティオール戦を2戦合計6-1、ウルブスはピュニク戦を2戦合計8-0で勝利しプレーオフへと駒を進めた。
海外の強豪と公式戦で対戦するなんて、トーロにとってはいつぶりのことなんだろうか。前回のEL出場の時だからもう5年近く前の話だろう。ウルブスは今夏イタリアからパトリック・クトローネが移籍したし有名な選手も多い。だが、近年プレミアリーグをそこまで見ていない筆者はどんなチームなのか詳しくは知らないのだ。
彼を知り己を知れば百戦殆からず。味方や敵について熟知していれば、何度戦っても危うい戦いにはならないことを説いた孫子の言葉である。それだ!孫子グラッツェ!
プレミアリーグは上位から下位チームまで、はたまた2部のチームまでファンが非常に多い。当然ウルブスレベルのクラブともなれば日本にもサポーターがたくさんいる様子。トリノ対ウルブスの一戦に向け"敵をよく知る"ため、今回は週刊ウルブスのRickyさんにお話を伺った。
週刊ウルブス – Barclays English Premier League
ー本企画への参加をご快諾頂きありがとうございます。まずはトリノFCを引き当てた感想をお願いします。
「怖すぎる」という言葉に尽きます。(笑) 昨季はオリンピコにて難敵ラツィオに素晴らしい試合をしてシーズンを終えていますし、今季開幕までの入りも非常にいいです。FFP問題の末ミランから出場権を譲り受けたとはいえ強豪クラブの一つに変わりありません。こちら側はどうしても勝たなければならないので、新加入選手も含め総力をあげて戦います!
ーウルブスサポーターさんからも難敵として捉えて頂いているようで嬉しいです(笑) 次はウルブスについてお伺いしますね。まず基本フォーメーションからお願いします。
ウルブスは3-5-2あるいは3-4-1-2を貴重としたフォーメーションです。昨シーズンの初頭は3-4-3のウィング付きで戦っていたのですが、既存のメンバーでは1試合を効率よく戦う事ができないことが分かり変更しました。
基本布陣はトーロと同じ3バック
ゴールキーパーは皆さんご存知ルイ・パトリシオです。説明は要りませんね(笑)最終ラインは左からウィリー・ボリー、コナー・コーディー、ライアン・ベネット。彼らは対人能力に非常に優れていますが、一方でスピードとテクニックを併せ持った選手には非常に脆いです。コーディーはロングフィードの精度が非常に高く注目です!
ミッドフィルダーは左からジョニー、ルベン・ネベス、ジョアン・モウチーニョ、レアンデル・デンドンカー、マット・ドーハティ。ウィングを置かなくなったため両サイドハーフはどんどん攻め上がる様になりました。ドーハティはクロスの上げ手として、また受け手としても機能する非常に珍しい選手で、真ん中のネベスとモウチーニョはポルト時代から師弟関係にあり非常に似たプレースタイルを持っています。この二人はチームの心臓で、非常に重要な存在ですね。デンドンカーは中盤の守備を牽引する選手ですが、敵陣ゴール前では何故か彼の前にボールがこぼれ落ちる頻度が高く、見ていてとても不思議なんですよ。(笑)
フォワードはディオゴ・ジョタとラウール・ヒメネス。ヒメネスは得点感覚に優れており昨季は12ゴールをマークしています。ジョタはスピードに乗っていてもボールコントロールを失わないため非常に厄介な選手で、要所要所に凄まじいセンスを感じますね。
リザーブのメンバーにはモーガン・ギブス=ホワイトや新加入ペドロ・ネトという将来有望で面白いプレーをする選手が控えてます。
ーモウチーニョやネベスの中盤はテクニカルな印象があって怖いですね。ミランから加入したパトリック・クトローネはどのような立ち位置が予想されますか?
チーム内におけるヒメネスとジョタの役割は非常に重要です。なぜなら、攻撃の中心を担っているのはまさしく彼らだから。スタメンから外すことはできません。その中で、クトローネは試合終盤で途中出場という立ち位置が今後予想されています。
今季ミランからウルブスに加入したパトリック・クトローネ
ただ、プレミアリーグに挑戦してすぐに得点を獲れる選手というのは滅多にいません。彼の場合は21歳と若く、「フィリッポ・インザーギ二世」と言われる様にストライカーとしてのポテンシャルも非常に高いです。ですから、もちろん今季の活躍は大いに期待しているものの、時間をかけてじっくり成長して欲しいというのがチームおよびサポーターの願いですね。
ー10番を託されたことからもクラブからの期待の大きさが窺えますし楽しみです!話をチームに戻しましょう。チームとして、ウルブスの強みと弱みを教えて下さい。
強みと言えるのはカウンターの鋭さです。これは主にヒメネスとジョタのワンツーで相手をどんどん置き去りにし、手薄になった守備陣にドリブルで仕掛けてゴールに持ち込むというもの。プレミアのどの強豪クラブもこの形で幾度も危機的状況を経験しているため、初対戦では非常に対応が難しいのではないでしょうか。
ウルブスの鋭いカウンターには要警戒だ
弱みはポゼッション重視の相手に主導権を握られやすいということです。私が思っていることなのですが、ボール奪取の狙いがはっきりしないため単調な守備になってしまっているのではないかと。無敵のエアバトルはチームの長所として挙げられるものの一つであることから、苦しい状況下では自陣でがっちり固めて守り、クロスに備えるというのが傾向として見られます。
ーなるほど、トリノもカウンター主体のチームなので、対戦時はかなりスピーディーな展開になりそうですね。ところで、Rickyさんイチオシの選手は誰ですか?
べロッティのカウンターには非常に恐怖感を覚えております...(笑) そういった意味で、私はコナー・コーディーを挙げたいと思います。ウルブスのキャプテンを任されていることからも分かる通りチームの精神的支柱として機能していて、特にべロッティのような推進力のある選手に対して唯一対応できるのが彼ではないかと考えています。取り分けこのトリノ戦に関しては活躍が期待される選手ではないかと。
ウルブスの主将コナー・コーディー
両陣アグレッシブな選手が多く最後の最後まで試合がオープンな展開になることは考えにくいです。そこで、彼の正確なロングフィードは後方からのバックアップの手段として非常に効果的ではないでしょうか。
ーコーディーvs.ベロッティの主将対決にも注目ですね!ちなみにRickyさんはセリエAのチームにはどんな印象をお持ちですか?
各チームに今までに無いようなアイデンティティが形成されつつあると感じております。実は、現在トリノの指揮官を務めているワルテル・マッツァーリ監督が2007年サンプドリアに在籍していたちょうどその頃からそう感じていました。
中でも強烈だったのが2011-12シーズンのナポリです。3-4-2-1とかつては典型だったフォーメーションに、前線3人には自由にプレーさせ他の選手には綿密な指示を与えるという独特な戦法。結果的にCLのラウンド16で当時最強と言われていたチェルシーと互角な戦いを繰り広げました。
代々受け継がれる優れた面を残しつつ新たな要素をそこに追加し、独自の手法で戦うチームが増えてきている点は非常に好感が持てます。
ー今マッツァーリが作り上げているトリノも彼が一時代を築いたナポリの戦術をベースに、現代サッカーで最重視されるトランジションをエッセンスとして加えたチームです。そういった観点で見るプレミアリーグはここ10年でどんな変化を遂げているとお考えですか?
外国の大規模投資家がプレミア各クラブのオーナーシップを買収し、過去と比較しても異常にメンバーの質が高いチームが増えてきました。レベルの高い選手が集まるチームでは、より難易度の高い戦術が可能になり急速に力を付けているクラブも少なくありません。
ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズもその中の1つで、近年は3部に所属していたこともありましたが、中国の復星(フォスン)グループがウルブスの株式の大半を購入したことでチームの体制が一気に変化しました。結果的に優秀な選手やスタッフをスカウトし今では1部リーグ7位に入るまでのチームに成長しています。
ー経営や戦術、様々なことがここ10年で変わりましたよね。プレミア各クラブの資金力には嫉妬すら覚えるレベルです(笑) さて、この質問で最後にしましょう。ズバリ、トリノ戦のスコア予想をお願いします!!
非常に難しいです...。あくまで主観混じりに予想させてください(笑) 私はウルブスのホームの試合が3-1、トリノのホームの試合が1-1になるのではないかと考えています。ウルブスは昨季リーグ上位のビッグクラブ相手に互角の試合を繰り広げました。一方で下位の相手には簡単に黒星を許してしまうという隙があるクラブですが、強い相手に対して集中して戦えるのがウルブスだと考え、このスコアを予想します。
ープレミアの7位vs.セリエAの7位なので予想は難しいですよね(笑)このカードは結構注目を集めているイメージなので、お互い良い試合にしましょう!今日はありがとうございました!
フットボールにおいて、歴史的に見るとイングランドとイタリアは因縁の関係にあり、それぞれの独特な文化的側面が窺えそうですね!良い試合になることを期待しております。こちらこそありがとうございました!
いかがだっただろうか。一つ一つの質問に対し非常に丁寧に答えて下さったRickyさんにはこの場を借りて改めて感謝したい。我々はあくまで1人のファンに過ぎないのだが、事前に相手チームの情報を仕入れてから観戦することで、その試合は何倍にも面白くなる。トリノとウルブスのカードが見どころ満載ということが、読んで下さったあなたにもお分かり頂けたと思う。ヴェルディ間に合え!
そんなトーロ対ウルブスのスケジュール(日本時間)は以下の通り。
1stレグ(ホーム) 8月23日(金) AM4:00キックオフ
2ndレグ(アウェイ) 8月30日(金) AM3:45キックオフ
土曜日の早朝なら見たかもとか言わずに、そこのあなたも、トリノ対ウルブスをLive on DAZN(ない)。