果たしてトーロは欧州に近づいているのか?
ミハイロヴィッチ政権時代から目標に掲げる欧州への切符。そこに向けたトーロの歩みは順調なのだろうか?
ナポリで一時代を築いたワルテル・マッツァーリを指揮官に招聘してから2シーズン目の今季だが、早いもので既にその半分が経過した。今季こそ欧州圏内でフィニッシュするぞと夏に大型補強を敢行したトーロだが、その成果はあまりパッとするものではない。冬のメルカートでの動きも実に地味なもので、残念ながら後半戦に向けたカンフル剤は投与されないと言わざるを得ないだろう。
今季のトーロの戦いぶりは、結果はガッカリ、内容は及第点ギリギリといったところだ。しかし、シニシャ・ミハイロヴィッチを監督に据えてスタートした2シーズン前から現在までを比較すれば、欧州への歩みを着実に進めていると言える可能性もある。今回は、今季を含めたトーロのここ3シーズンの前半戦のデータをもとに、ここまでのトーロの道のりを振り返ってみよう。
16/17シーズン
9位 8勝5分6敗 36得点27失点(第19節終了時点)
・前線3人の個の力による見事な得点力
・選手層の薄さが大きな弱点
守備陣にはジョー・ハートやレアンドロ・カスタン、攻撃陣にはアデム・リャイッチ、イアゴ・ファルケらを獲得した上アンドレア・ベロッティとアントニオ・バレーカの覚醒などもあり比較的ポジティブな印象が強いシーズンだった。有能なアシスト役を多く手にしたベロッティの爆発により、前半戦19試合で36得点という数字を叩き出している。
ただ「組織的」という言葉にはほぼ縁がなく、前線の個の力に頼ったサッカーを展開していたため自慢の3トップが1人でも欠けたりすると途端に沈黙してしまう、そんなチームだった。期待されたハートもイージーミスが非常に多く、守備も最後まで安定せず。見ていて面白いが波は激しい。魅力的なチームではあったが、あれでは欧州は無理だ。
16/17最終順位
9位 13勝14分11敗 71得点66失点
17/18シーズン
10位 5勝10分4敗 25得点 27失点(第19節終了時点)
前年度比
・スカッドの質はアップしたが得点数は激減
・失点の多さ改善されず
前シーズン弱点として浮き彫りになっていた守備陣をほぼ総入れ替えして臨んだシーズン。サルヴァトーレ・シリグやニコラ・エンクルの加入により失点の減少が期待されたが、それが結果に現れることはなかった。彼らのプレーは素晴らしいものだったが、セットプレーからの失点が相変わらず多く、徐々に指揮官ミハイロヴィッチに批判が浴びせられるようになっていった。
引き分けの多さによる格下相手の取りこぼしは、守備よりもむしろ攻撃陣に責任があった。スランプに陥ったベロッティに加え、指揮官が熱望したため大枚を叩いて獲得したエムバイェ・ニアンが無様なパフォーマンスを披露。1シーズン前に比べると得点が11も減っていることからも分かる通り、攻撃陣の機能不全は深刻な問題だった。案の定、2018年に入るとすぐミハイロヴィッチは解任された。
17/18最終順位
10位 13勝15分10敗 54得点46失点
18/19シーズン
9位 6勝9分4敗 24得点 19失点(第19節終了時点)
前年度比
・3バック戦術の浸透で失点は大幅に減少
・ザザらを獲得するも得点力向上には未だ繋がらず
さて今季に目を向けて見よう。アルマンド・イッツォやコフィ・ジジといった守備陣の新戦力たちが期待以上の働きを見せている中、新戦力の目玉としてゴール量産が期待されたシモーネ・ザザの不調は計算外だ。昨季までトレクァルティスタとして攻撃陣を操っていたアデム・リャイッチの退団が、攻撃陣の不調に影響を与えていることはもはや言うまでもないだろう。高いインテンシティを保った、リーグ屈指のアグレッシブなプレッシング(実際ファウル数はダントツでリーグトップ。あまり褒められたものではないが)から展開されるショートカウンターは迫力があるが、正直なところ完全に機能した試合はかなり少ない。
このまま補強が無いようでは、トーロは今季も欧州への切符を手にすることはできないだろう。過去2シーズンの結果にも出ている通り、後半戦からの巻き返しはあまり期待できないと言わざるを得ない。たしかに今季のスカッドは過去2シーズンと比べポテンシャルは高いが、それは欧州圏内を争うライバルたちも同じこと。ここ3年間同じ場所で足踏みをしているようでは、グランデトリノの復活という偉大な目的はいつまでたっても遠いままだ。