【2018/2019シーズン】トリノFC 前半戦の通信簿
前半戦を終え欧州圏内まで3ポイント差。及第点は付けられるが...
19試合を消化したトーロの戦績は6勝9分4敗。アウェイゲームで無敗を維持している(2勝8分。決して勝てているわけではない)とはいえ、消化試合の約半数をドローが占めている現状はあまり喜べるものではない。ミハイロヴィッチ時代から続く「ドロー癖」はもはやこのチームが抱える慢性的な病だ。攻撃陣はイアゴ・ファルケ抜きではまともに点が取れない。中盤はリンコン、メイテ、そしてバゼッリのうち1人でも欠ければダイナミズムを失う。本来厚いはずの選手層が薄いように見えてしまうようでは補強した意味がない。控え選手たちのパフォーマンス向上は後半戦に向けた大きな課題だ。
しかし、指揮官ワルテル・マッツァーリの志向するサッカーは間違ってはいない。新加入のスアリオ・メイテをはじめ、フィジカル能力に優れたプレイヤーたちのポテンシャルを最大限に引き出す戦術を彼は的確に実践している。ここ一番での勝負強さが身につけば、欧州圏内は不可能な話ではない。サルヴァトーレ・シリグやイアゴ・ファルケを欠きながらも王者ユヴェントスを苦しめたデルビーでの戦いぶりがそれを証明している。ここまで大混戦となっているヨーロッパリーグ出場権争いだが、ここまでのトーロの選手たちの働きぶりを見てみよう。
監督 ワルテル・マッツァーリ 6.0
退席処分の多さが目立った前半戦ではあったが、非常にソリッドで戦えるチームを作った功績は大きい。トーロが前半戦でのファウル数でリーグトップを数えていることからも分かる通り、常に球際での激しさをチームに要求。身体能力に優れた11人を常にピッチに並べることを好んだ采配が見受けられた。注文があるとすれば退席処分を減らすこと、そして交代のカードをもう少し早く切ること。後半戦は好不調の波が激しいチームをうまくマネジメントできるか。
#1 サルヴァドール・イチャーソ 6.0
セリエA 3試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
ここ2年間、常にサルヴァトーレ・シリグの陰に隠れてきたが、彼の負傷によりデルビーの前半という難しい状況でピッチに立ちながら任務を遂行。クリスティアーノ・ロナウドにリゴーレを沈められたがそれ以外は安定したパフォーマンスを見せ、シリグ不在のその後2試合も見事なパフォーマンスで守護神の穴を埋める活躍を見せた。契約は今季限りとなっているが、クラブ側は既に契約延長に動きはじめているようだ。
#3 リャンコ・ヴォイノヴィッチ -
セリエA 1試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
昨年受けた手術の影響で、まだ本格復帰したばかり。21歳という年齢ながら実力的にはレギュラー候補なだけに、2019年は怪我なく元気にプレーして欲しいところである。12月にはパートナーとの間に女の子が生まれ、パパとなった。様々な経験をした2018年を糧に、未来のディフェンスリーダーとして奮起を期待したい。
#5 アルマンド・イッツォ 7.0
セリエA 19試合出場 1得点
コッパ・イタリア 2試合出場
€1000万という決して安くない移籍金で加入したこのイタリア人センターバックは、既にその価値を証明している。八百長事件の黙認容疑を掛けられた過去が災いし、加入当初ティフォージからあまり歓迎されていなかったが、説得力充分な自らのプレーで彼らを黙らせることに成功。瞬く間にトーロディフェンスの欠かせない主力となった。一対一の強さに加えビルドアップでの貢献度も非常に高い。そろそろアッズーリのユニフォームに袖を通す頃合いではないだろうか?
#6 ロベルト・ソリアーノ 4.0
セリエA 11試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場 1得点
完全に「エムバイェ・ニアンの再来」となってしまった。開幕戦で途中出場した際はクオリティを感じるプレーを見せ、我々ティフォージを期待させたがその後の試合でのプレーは消極的なものに終始。プレースタイルを形容するなら「バックパサー」「ボールロスター」といった感じか。さらにはデルビーでの敗戦後、Instagramでのクリスティアーノ・ロナウド、パウロ・ディバラらの「デルビー勝ったぞ!」投稿にいいね!をブチかましティフォージとの関係が完全に崩壊。クラブからも愛想をつかされローンを打ち切られた彼はボローニャへと新天地を求めることに。
#7 サシャ・ルキッチ 5.0
セリエA 9試合出場
コッパ・イタリア 3試合出場
ラ・リーガでの1年の武者修行を終えたこのセルビア代表センターハーフは、さらに成長した姿を見せることを期待されていたが、ここまでのところ期待外れと言わざるを得ないだろう。レジスタとして才能を開花させたミハイロヴィッチ政権時代とは違いメッザーラで起用されていることも影響しているのだろうが、いずれにせよ指揮官マッツァーリを納得させるには至っていない。だが、背番号7を与えられたことからも分かる通りクラブからの期待は大きく、これからの巻き返しに期待がかかる。
#8 ダニエレ・バゼッリ 6.5
セリエA 17試合出場 3得点
コッパ・イタリア 3試合出場 1得点
レジスタとして頭角を現したアタランタ時代とはもはや別人だ。豊富な運動量を武器とするボックストゥボックスへと変貌を遂げたこのイタリア人センターハーフは、トーロの中盤に質と量の両方をもたらしている。守備時は激しいチェックと執拗なマーキング、攻撃時は確かな技術とゴール前への飛び出しでチームに貢献。与えられたタスクを忠実にこなす優れた戦術眼も特筆すべきものがある。同じくレジスタ出身のルキッチとしてはお手本とすべき存在と言えるかもしれない。
#9 アンドレア・ベロッティ 6.0
セリエA 19試合出場 7得点
コッパ・イタリア 2試合出場 2得点
昨季は1シーズンをかけてわずかに10得点だったことを考えれば、数字の上でも結果は徐々に戻ってきている。ついに復調の兆しを見せ始めたと言ったところか。得点こそまだまだ物足りないかもしれないが、ポストプレーヤーとしての貢献度は高い。相手を背負ってボールを受けらプレーが攻撃時のアクセントとしてよく機能している試合は数多く見受けられた。課題は不用意なボールロストがまだ見受けられる点。アッズーリへの復帰を目指し爆発を期待したい。
#11 シモーネ・ザザ 4.5
セリエA 16試合出場 1得点
コッパ・イタリア 1試合出場
ソリアーノと同じく、完全に期待を裏切っている。先発出場が少ないとはいえカンピオナート折り返し地点でわずかに1ゴール。大きな期待とともにイタリアへと帰還したこの元アッズーリは、その高い能力の片鱗さえいまだ見せてくれてはいない。タイプの似通ったベロッティと組まされることが多く少し窮屈そうにプレーしていることは否めないため、チャンスメイカータイプのファルケなどと組ませることで解決策を見出したい。能力に疑いの余地はないため、キッカケさえ見つかればといったところか。
#14 イアゴ・ファルケ 7.0
セリエA 15試合出場 3得点
コッパ・イタリア 2試合出場
アデム・リャイッチがいなくなりチャンスメイカーとしての役割を一手に引き受けることとなったが、ここまで見事にそのタスクをこなしている。左足から繰り出されるクリエイティブなプレーは、今のチームには完全に不可欠なものだ。彼がいなければトーロはまともに点が取れないチームになってしまう。さらに、攻撃面だけでは語りつくせないのが彼のストロングポイント。守備時も懸命に自陣に戻る姿は、現代的なアタッカーとしてのプレースタイルを象徴するものだ。
#15 クリスティアン・アンサルディ 6.5
セリエA 7試合出場 1得点
コッパ・イタリア 0試合出場
シーズン開始直後、いきなり第2節インテル戦で負傷し約2ヶ月戦線を離脱。代役として抜擢されたオラ・アイナが素晴らしいパフォーマンスを見せていたため、年齢的なフィジカルの衰えも相まってこのままレギュラーを奪われるかと思われたが、復帰後のパフォーマンスは流石の一言だ。サイドにクオリティをもたらす駒として完璧に機能している。後半戦は、彼を含めたウイングバックのレギュラー争いも面白くなりそうだ。
#19 ヴィタリィ・ダマシュカン -
セリエA 0試合出場
コッパ・イタリア 0試合出場
19歳という年齢ながらモルドヴァ代表で既に常連の彼だが、まだセリエAデビューの機会は訪れていない。ザザやベロッティなど実績のある先輩たちの壁は高く、アピールしろという方が難しいことだろう。冬のメルカートではローン修行に出されることが濃厚。適切な修行先を見つけ、開花のキッカケを作って欲しいところだ。
#20 シモーネ・エデラ -
セリエA 2試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場 1得点
「アレッシオ・チェルチの再来」の呼び声高いこの若きアタッカーに、ここまでチャンスが与えられないのは正直予想外だった。比較的多くの出場機会を得た昨季とは打って変わり、今季はマッツァーリを納得させられていない。冬のメルカートではパルマやキエーヴォなどセリエA複数クラブが獲得に興味を示しており、後半戦はローン修行へと出向くことになりそうだ。
#21 アレハンドロ・ベレンゲル 5.5
セリエA 13試合出場 1得点
コッパ・イタリア 3試合出場
オラ・アイナがセリエAに慣れてくるにつれ、立場を取って代わられた印象が強い。彼がプレー可能なシャドーを置いた3-4-2-1の採用も多く見られた序盤戦に比べ、マッツァーリが最近は一貫して3-5-2を採用していることも、彼にとっては不利な状況を生んでいる。持ち味のドリブル突破も鳴りを潜めており、ウイングバックのレギュラー争いではやや遅れをとっていると言わざるを得ない。
#23 スアリオ・メイテ 7.5
セリエA 18試合出場 2得点
コッパ・イタリア 3試合出場
中盤の選手では間違いなく前半戦のベストプレイヤーだ。恵まれた体格を活かした球際のバトルだけでなく、驚くほど繊細なテクニックも兼備しており非常に頼もしい。トマス・リンコンとのラグビー部コンビも日に日に連携を深めており、セカンドボールの回収+攻撃のスイッチ役としてほぼ完璧に機能。警告数の多さが玉に瑕ではあるが、セリエA初挑戦の24歳ということを考えると、これ以上は望めないのではないだろうか。
#24 エミリアーノ・モレッティ 6.0
セリエA 9試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
今年で38歳を迎える大ベテランの状況は、ほぼフル稼働を強いられた昨季とは少し違う。コフィ・ジジにレギュラーポジションを譲った今季は、頼れる控えとしての役割を忠実に遂行している。シーズン前語っていた「若手の成長を手助けしたい」という言葉にも現れている通り、チームを第一に考えて行動する彼の姿勢は全ての選手が模範とすべきものだ。出番が増えるであろう今季後半戦も彼の雄姿に注目したい。
#25 アントニオ・ロザーティ -
セリエA 0試合出場
コッパ・イタリア 0試合出場
元々第3ゴールキーパーとしての立場を受け入れての加入だったため、出場機会はいまだにゼロ。しかし選手たちのInstagramのストーリーなどからも見受けられるように、ロッカールームではベテランながらムードメーカー役を買って出ている。練習に真摯に臨む姿勢も評価は高く、契約延長オファーが提示される可能性すらあるようだ。ちなみに、練習場には自転車で通っているらしい。
#27 ヴィットーリオ・パリジーニ 5.5
セリエA 10試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
10試合に出場しているとはいえ、トータルでの出場時間はわずかに169分。両ウイングバックとシャドーをこなせるユーティリティ性はある程度マッツァーリにも評価されているようだが、ここまで出場したいずれの試合でも爪痕を残すことはできていない。生え抜きということもあってティフォージからは愛されているため、後半戦は無償の愛に結果という形で報いたい。
#29 ロレンツォ ・デ・シルヴェストリ 6.0
セリエA 15試合出場 1得点
コッパ・イタリア 2試合出場
ウイングバックという天職を見つけて2シーズン目の今季は、若手たちとのポジション争いに身を置くことに。クオリティの面ではオラ・アイナに軍配が上がるが、空中戦の強さを活かした両エリア内でのプレーは彼ならではのものだ。クロス成功率は相変わらず低いが、彼の真骨頂はインナーラップ。後半戦はエリア侵入からの得点機関与にもっと期待したい。
#30 コフィ・ジジ 6.5
セリエA 11試合出場
コッパ・イタリア 1試合出場
フィットにやや時間がかかり第6節まで出番が与えられなかったが、その後はモレッティから完全にレギュラーを奪取。ここセリエAの舞台でも、スピードのあるアタッカーに対応可能な粘り強い対人守備を存分に発揮している。当初ティフォージからは獲得に疑問を呈す声が多かったが、自らのプレーで見事に黙らせた格好だ。買取オプションの行使も時間の問題だろう。
#33 ニコラ・エンクル 7.5
セリエA 19試合出場 2得点
コッパ・イタリア 2試合出場
頼れるディフェンスリーダーとして、今季ここまでセリエA全試合にフル出場。昨季加入してからの彼のプレーはいつも安定している。はっきり言って圧巻の一言だ。エレガントな守備からの正確無比な配球、さらに1人でプレスを回避してしまう圧倒的なボールスキルはもはやトリノの名物。ビッグクラブへのステップアップの噂が絶えないが、彼がいなければヨーロッパリーグの出場権など夢のまた夢となってしまうだろう。
#34 オラ・アイナ 6.5
セリエA 16試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
チェルシーからの買取オプション付ローンでの加入だが、既にティフォージからはその行使を願う声が挙がっている。イングランドで鍛えられた強靭なフィジカルとそのスピード、そしてその正確なクロスは既にデ・シルヴェストリを超えていると言っていいだろう。両サイドをこなせる器用さに加え、ベテランのごとく落ち着き払ったその堂々としたプレーぶりはマッツァーリからの評価も非常に高い。今季後半戦だけでなく、来季もトーロのユニフォームを着た姿が見たいところだ。
#36 グレイソン・ブレーメル -
セリエA 1試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
欧州初挑戦ながら充分に計算できる選手としてアピールすることに成功したプレシーズンだったが、エンクルとイッツォがフル稼働したこともあって出番は全くなかった。ジジもレギュラーとしての地位を固めつつあるため、モレッティに続いて現状は5番手といったところか。彼の能力も疑う余地がないため、ローン修行でさらに腕を磨いて欲しい。
#39 サルヴァトーレ・シリグ 7.0
セリエA 17試合出場
コッパ・イタリア 2試合出場
デルビーで負傷した後の2試合以外は全ての試合でゴールマウスに立った。驚異的な反射神経は相変わらずで、トーロが彼に救われた試合はいくつもある。足元の技術は依然として課題だが、それを補って余りある守備力を持っていれば何の問題もない。ただ、クリアリングの際真上に打ち上げる癖だけはやめて欲しい。
#88 トマス・リンコン 6.5
セリエA 17試合出場 1得点
コッパ・イタリア 3試合出場 1得点
昨季に比べパフォーマンスは大幅に改善された。持ち味のハードプレスで中盤を耕し、時には前線へ飛び出し攻撃にも関与するなど見事な出来栄え。メイテの加入によりタスクが分散されたことも好調の要因と言えるだろう。課題は時折「俺はアンドレア・ピルロだ」と勘違いし裏を狙ったパスを蹴ろうとすること。もちろん、成功数はいまだにゼロだ。
今回の通信簿は2回に分けて書こうかと思っていたが、まるで雄牛のごとく勢いがついてしまい一挙に終わらせた(?) 記事のクオリティはともかく、このスピード感は個人的に7.0くらいの点数だと自己採点しておく。
今季のトーロにとって補強の目玉だったソリアーノやザザが期待を裏切る中、若手のメイテやアイナが素晴らしいパフォーマンスを見せているのは悪くない傾向だ。大混戦となっている今季のヨーロッパリーグ出場権争いだが、ウチにはそれを制する力があると信じている。シーズン総括の記事を書く時、ウキウキしながら書いている自分を想像しつつ今回はここまでにしようと思う。以上、あざっした!