トリノFC情報局

セリエAの古豪・トリノFCの情報を掲載しています。コメントお待ちしてます!

18/19 トリノFC背番号順つうしんぼ①

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シーズン前より目標として掲げていた6位以内でのフィニッシュを目指した今季のトーロの成績は、16勝15分7敗の7位。欧州圏内と勝点差3でシーズンを終え、惜しくも目標としていたヨーロッパリーグの出場は叶わなかった。前半戦はボールの取り所がハッキリしなかったり、ボールを奪ってからのカウンターもかける人数が少なく不発に終わる試合も数多く見られたが、ワントップ+ツーシャドーが高い位置からハードなプレスを仕掛けるショートカウンターという戦い方に落ち着いた後半戦は凄まじかった。全体的に見て、今季への印象はポジティブだと言える。

 

シーズンを前半戦と後半戦に分けて見てみると、3-5-1-1をベースに戦った前半戦は6勝9分4敗の9位。前線からのプレスはやや控えめで、どちらかと言うとやや深い位置まで誘い込んで奪いそこからのカウンターといった感じだった。しかしイアゴ・ファルケやダニエレ・バゼッリ、アレハンドロ・ベレンゲルらをシャドーで起用した3-4-2-1に本格移行した後半戦だけで見ると、正直素晴らしい以外の感想は出てこない。後半戦は10勝6分3敗。これはリーグ5番目に優秀な戦績である。

 

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惜しむらくはコッパ・イタリアの早期終了。ベスト16での敗退はあまりにも早過ぎた。来季は最低でもベスト8、あわよくばそれ以上を目指してもらいたいところだ。

 

前置きはここくらいにして本題に入ろう。通信簿と銘打って偉そうに選手たちの採点をしていく例のやつだ。まあ個人的な感想に過ぎないので、いつも通り素人の落書き程度に考えてもらえたら嬉しい。

 

監督 ワルテル・マッツァーリ 7.0

 

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トーロ指揮官就任2年目の今季も3-5-1-1、3-4-2-1を中心に3バック戦術を主戦術として採用。アデム・リャイッチを放出しシモーネ・ザザなどフィジカル能力に優れる選手たちを集め、ダイナミズム溢れるサッカーに挑戦した。やや薄い選手層に苦心する様子も見受けられたが、今季は自身が高い能力を持つ監督であることを改めて証明したシーズンだったと言えるだろう。熱くなり過ぎる癖が災いし何度も退席処分を食らったが、もはやそれも可愛らしい。ちなみに後半30分過ぎにリードされている展開だととっておきのファイヤーフォーメーション4-2-4を繰り出すが、機能した試合は一度もない。可愛い。

 

1. サルヴァドール・イチャーソ 6.0

 

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セリエA 3試合出場

コッパ・イタリア 1試合出場

 

出場数はサルヴァトーレ・シリグが不在の3試合、そしてコッパのシュドティロル戦のみだったが、第2キーパーとしての務めを充分に果たしてくれたと言っていいだろう。特にデルビーでの途中出場は記憶に残っている。クリスティアーノ・ロナウドにリゴーレを沈められはしたものの、それ以外は見事なパフォーマンスだった。この通信簿企画をやる時は必ず背番号が最も若い彼が最初だったが、来季からは恐らく別の選手になるだろう。昨年末に見られた契約延長の噂も最近は沈静化してきており、6月での退団が既定路線である。恐らく母国ウルグアイに帰ることになるか。

 

5. アルマンド・イッツォ 8.0☆

 

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セリエA 37試合出場4得点

コッパ・イタリア 2試合出場

 

個人的に今季のベストプレーヤーに挙げたい選手。昨季まで大きな課題だった脆弱なトーロの守備が、1試合の平均失点1を下回る堅固な守備に変わったのは彼の存在なくしてあり得なかった。対人守備の異常なまでの強さはイタリア屈指のレベルだろう。さらに今季セットプレーから4得点を決めており、攻撃面でもチームに大きく貢献。ジェノアに支払った€1000万の移籍金は今となってはバーゲン価格だったとすら感じるほどだ。注文があるとすればジェノア時代のようにヒゲをまた生やして欲しいことくらいか。

 

7. サシャ・ルキッチ 6.0

 

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セリエA 24試合出場2得点

コッパ・イタリア 3試合出場

 

ラ・リーガでの武者修行を終えた今季は背番号7を与えられクラブの期待も大きかったが、最後までレギュラー定着は叶わず。やや不完全燃焼といった感じか。及第点は付けられるが、彼のポテンシャルを考えればもう少しやれたはずだ。トーロには数少ないパス精度に秀でたタイプのミッドフィールダーとしていいアクセントにはなっていたが、球際での競り合いの弱さは今後の課題と言えそう。ハイライトはデルビーで奪ったセリエA初ゴール。相手を弾き飛ばして奪ったボールをそのままゴールに叩き込んだあのプレーは筆者もシビれた。最終節ではシャドーで起用され新たな可能性を開拓。来季はさらなる成長を期待したい。

 

8. ダニエレ・バゼッリ 6.5

 

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セリエA 34試合出場4得点1アシスト

コッパ・イタリア 3試合出場1得点2アシスト

 

前半戦はメッザーラ、後半戦はシャドーのレギュラーとしてプレー。評価が分かれる選手ではあるが、個人的には及第点以上の活躍を見せてくれたと感じている。今季は特にその豊富な運動量が特筆に値するポイント。執拗なまでの粘り強い守備と堅実なパスを武器に、攻守を繋ぐ潤滑油として機能した。優れた戦術眼を持ち、中盤センターならどこでも器用にこなすポリバレント性にはマッツァーリも非常に助けられたことだろう。欲を言えばゴール前での働きにもう少し怖さが欲しい。イケメンならではの良質なミドルシュートも兼備しているため、来季はもっと積極的に狙っていってもらいたい。あと、暇さえあればタトゥーを入れに行くのはガラが悪すぎるのでやめて欲しい。

 

9. アンドレア・ベロッティ 6.5

 

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セリエA 37試合出場15得点2アシスト

コッパ・イタリア 2試合出場2得点

 

サスペンションで欠場した第32節カリアリ戦を除き、カンピオナートでは今季全ての試合に出場。不振に陥った昨季と比べると、比較的コンスタントにネットを揺らしてくれた。チームとして今季はサイドからの良質なクロスが多く見られたことも復調の要因だろう。また、彼のポストプレーは相手にとってしても相当嫌なようで、被ファウル数はリーグトップ(1試合平均3回)を数えるなど、ファウルでしか止められない身体の強さもチームメイトを助けた。狭い局面を打開するテクニカルなプレーは相変わらず苦手だが、なりふり構わずゴールに突っ込んでいくその姿は愛称の"ガッロ(鶏)”というよりはクラブシンボルの”トーロ(雄牛)”を彷彿とさせた。この調子で名実ともにクラブのバンディエラとなってもらいたい。

 

11. シモーネ・ザザ 5.0★

 

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セリエA 29試合出場4得点2アシスト

コッパ・イタリア 1試合出場1アシスト

 

誰もが認める今季ワーストプレーヤーではないだろうか。久々のセリエA復帰となったがわずかに公式戦5得点を挙げるのみにとどまり、期待された働きを見せることは叶わず。クルヴァに陣取るティフォージからの支持も最後まで勝ち取ることはできなかった。筆者も現地でザザとは少し会話を交わしたことがあるため、あまりあからさまにはディスりたくないのだが...。ただ今季リーグ・アンへとローンされていたアホとは違いマッツァーリも最後まで根気よく使い続けてはいたため、まだ諦められたわけではなさそう。移籍の噂は絶えないが、来季こそ本領発揮といきたいところである。

 

14. イアゴ・ファルケ 6.5

 

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セリエA 26試合出場6得点5アシスト

コッパ・イタリア 2試合出場2アシスト

 

本来はウイングの選手だが、今季はツートップの一角やシャドーなどやや中央寄りでプレー。そのテクニックとひらめきでバイタルエリアでの局面打開を一手に担った。前線からのチェイシングに加え、ラストパス供給からフィニッシュまでゴール前でのタスクが増えた今季は、深い位置でのビルドアップ参加は昨季に比べ減った印象だ。得意の左足が完全にコースを切られていたりと相手守備陣の対応に苦しむ試合も少なくはなかったが、10試合以上の欠場を強いられたにもかかわらずシーズン11得点に絡む活躍は流石といったところ。怪我さえなければシーズン10得点は挙げていたはずだ。

 

15. クリスティアン・アンサルディ 7.0

 

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セリエA 24試合出場3得点3アシスト

コッパ・イタリア 1試合出場

 

30歳を過ぎたにもかかわらず、市場評価額をじわじわと上昇させているのがこのアンサルディ。両利きであり左右のウイングバックを高いレベルでこなすだけでなく、今季は中盤センターでの起用にも柔軟に応えた。相手のプレスを難なくいなすそのボールスキルと判断力は、フィジカル面に重きを置いたトーロのサッカーにおいて貴重なアクセントとなっている。開幕早々の負傷離脱で出遅れたが、出場した試合ではいずれも見事なパフォーマンスを披露。カットインから逆足で正確なミドルシュートを撃てるウイングバックセリエA全体で見ても彼ほどだろう。

 

19. ヴィタリ・ダマシュカン 5.5

 

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セリエA 1試合出場

コッパ・イタリア 0試合出場

カンピオナート・プリマヴェーラ 7試合出場1アシスト

コッパ・プリマヴェーラ 3試合出場1得点

ヴィアレッジョ・カップ 3試合出場4得点

 

人生初の海外クラブ1年目はプリマヴェーラとトップチームを行き来するシーズンとなったが、本人にとっても残念なシーズンとなったことだろう。鋭い嗅覚を武器とするゴールゲッターという触れ込みだったが、プリマヴェーラでも定位置確保に失敗。冬のメルカートではローン修行に出される噂もあったが、結局丸々1シーズンをトーロの選手として過ごした。来季はセリエBあたりのクラブに修行先を探すことになりそうだが、イタリアの水に慣れるためにもそれがベストな解決策だろう。これからへの期待も込めてこの点数とした。

 

21. アレハンドロ・ベレンゲル 6.0

 

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セリエA 31試合出場2ゴール4アシスト

コッパ・イタリア 3試合出場1アシスト

 

前半戦は左ウイングバックの3番手、セカンドトップの2番手として燻っていたが、後半戦は3-4-2-1の本格採用とイアゴ・ファルケの負傷離脱で左シャドーのレギュラーを確保。そこからのプレーは「右利きのイアゴ・ファルケ」との表現がしっくり来るほど見事なものだった。ストライカーの後ろで本領を発揮するという特徴はチームとしてもかなり大きな発見だった。ちなみに、Instagramを確認すると分かるがどうやら最近彼女ができたようで、プライベートの充実も好調に繋がっているのではないだろうか。調子に乗るな

 

23. スアリオ・メイテ 7.0

 

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セリエA 35試合出場2得点3アシスト

コッパ・イタリア 3試合出場

 

今季のグッドサプライズ賞は彼に贈呈したいセリエA初挑戦ながらも開幕からがっちりとレギュラーの座を掴み早くも欠かせない選手に。強すぎるフィジカルでピンチの芽を摘んだと思えば、繊細なテクニックを駆使したパスやプレス回避でも中盤の制圧に一役買った。セカンドボールの回収というタスクが大きかったため、前線に顔を出す機会は少なく得点にはあまり絡んでいないが、「破壊」と「創造」の両面を担う彼の存在無くして欧州争いは不可能だったことだろう。後半戦に入り調子を落としたが、1シーズンを通して見ればこの点数は充分に付けられる。

 

 

 

次回も残りの選手たちを偉そうに評価していくのでおたのしみに。

コメントなどお待ちしております。

 

以上あざっした!

Grazie, Emiliano.

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「僕はピッチから去るよ」

 

ウルバーノ ・カイロ会長とワルテル・マッツァーリ監督を伴い、チームメイト、記者団を前にオリンピコ・グランデ・トリノでの会見に出席したエミリアーノ・モレッティは、今週末のラツィオ戦を最後にスパイクを脱ぐことを発表した。

 

1998年ロディジャーニでのプロデビューから実に21年。来月で38歳となる守備職人は今週末、公式戦600試合以上に出場したその偉大なキャリアに幕を下ろす。

 

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今日は来てくれてありがとう。本当はちゃんとスピーチを考えて来ようと思ってたんだけど、失敗したよ(笑) 次の日曜日が僕の現役最後の試合になる。とても幸せだ。人生において重要な一歩をまた踏み出せるのだからね。引退を思い留まらせようとしてくれた会長と監督には感謝しているよ。

 

たくさんの人に感謝の言葉を送りたい。まずは両親、そして兄弟に。僕はこの長いキャリアの中でたくさんの人たちと巡り合うことができた。そして6年前、ここにいるカイロ会長、そしてペトラーキSDのおかげでトーロでの新しい人生が始まったんだ。

 

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この6年間、カルチョに関わる人そうでない人、たくさんの大事な人と知り合うことができた僕はとても幸運だったと思う。ここに来た最初の日から僕を歓迎し、いつもサポートしてくれたティフォージにも感謝している。彼らの存在に僕はとても勇気付けられたよ。

 

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同席したマッツァーリは、モレッティを最後まで説得できなかったことを悔やむコメントを残した。

 

私は最後まで彼を説得した。選手としてもまだやれるという確信があったからね。今季のエミリアーノはピッチ上の貢献だけでなく、若手の成長にも力を貸してくれたんだ。チームに魂を注入してくれたよ。彼が他の形でクラブに残ってくれることを望んでいる。でも、正直に言うとまだ残念な気持ちで一杯だよ...。

 

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カイロもモレッティ引退の背景を語った。

 

我々は全員で彼を説得しようとした。まだ辞めないでくれ、とね。彼はある日のトレーニングで、引退を決意したことを我々に突然告白した。聞くと実はエミリアーノは半年以上前から引退を決めており、彼の妻がここ半年ずっと彼を説得してきたことを我々は知ったんだ。

 

彼とは6年前から素晴らしい関係を築いてきたから、とても残念だ。本当に素晴らしい男だよ。セリエAでプレーするために、他のチームメイトたちより多くのトレーニングをこなしてきたんだ。ここに残って欲しい。カルチョの面だけでなく、人間性にも優れた男だからね。彼は監督としてのノウハウを学ぶことになるだろう。きっと良い指揮官になるよ。

 

筆者が現地でモレッティからサインを貰ったのが昨年の10月。フィラデルフィアの外で出待ちしていた筆者を見ると車を止め、快くサインをしてくれた。”Grazie.”とお礼を言うと”Prego(どういたしまして).”ではなく”Niente(いえいえ).”と返してくれたあの紳士っぷりは未だに忘れられない。あの時から既に引退を考えていたかもしれないことを思うと、なんとも言えない気持ちだ。

 

イタリアのみならず、スペインでのプレーも経験したモレッティ。アッズーリのシャツに袖を通した数は決して多くはなかった。しかし、彼が素晴らしい選手であったことは現役最後に着たグラナータのシャツ、そして600以上もの公式戦出場数が証明している。来季からはもうあの華麗な守備は見られない。ピッチ上でチームメイトに喝を入れる姿ももう見られない。マッツァーリやカイロ、チームメイトたちと同じく筆者も寂しい気持ちで一杯だ。最終節は背番号24をこの目に焼き付けよう。

 

ありがとう、エミリアーノ。

 

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届かなくても。

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大敗。日曜日、残留争いを演じるエンポリと対戦したトーロは今季最多となる4失点を喫した。

 

残留へ向け並々ならぬモチベーションと共に立ち向かって来た青き戦士たちを前に、今季リーグ屈指の堅守を誇ったエンジ色の壁は脆くも崩壊。今季最悪の試合だったと言って差し支えないだろう。

 

この後ミランフロジノーネから勝点3を挙げたことにより、トーロの欧州行きは完全に消滅。来季に向けたトーロの夢は、儚くも散ることとなった。

 

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俺たちは大敗を演じてしまった。とても残念だし、何より俺たちと一緒に夢を見るためアウェイの地まで駆けつけてくれたティフォージに謝りたいよ。こんな馬鹿げた幕切れは許されない。俺たちはまた立ち上がる。 ー トマス・リンコン

 

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敗北は失敗じゃないよ。クラブ、チームメイト、ティフォージのことを思うととても悲しいけど、トーロの歴史がここで止まるわけじゃないんだ。これからもトーロは自慢のチームメイトたちとの固い絆で結ばれた素晴らしいグループであり続ける。 ー コフィ・ジジ

 

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素晴らしいサポートで我々を支えてくれたティフォージに謝罪したい。だが同時に、真のトーロのスピリットを持ち素晴らしいシーズンを送った我々の戦士たちに賞賛を送らせてくれ。この敗北の責任は私にある。ー ワルテル・マッツァーリ

 

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駆け付けてくれたティフォージには謝らなければならないね。だけど、1度の敗北で素晴らしいシーズンを無かったことにはできないよ。後悔はない。僕らは全てを出し切ったんだ。今季僕らはチームレコードの60ポイントを獲得した。最終節ではこれを63ポイントに伸ばせるよう、全力を尽くすと誓うよ。ーロレンツォ・デ・シルヴェストリ

 

そこにあるのは賞賛のみ。

 

試合後、チーム最年長のエミリアーノ・モレッティに引き連れられたチームはティフォージの元へと向かった。あまりにも低調すぎたパフォーマンスを謝罪するために。その足取りは重かった。ウルトラスの心無い言葉も覚悟していたことだろう。

 

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「夢をありがとう」

 

トーロの戦士たちを待っていたのはブーイングではなかった。シーズンを通しての素晴らしい戦いぶりを賞賛する温かい拍手が、欧州行きを逃し肩を落とす選手たちを出迎えたのだ。選手たちを責める者は誰一人としていなかった。ヨーロッパリーグのみならず、チャンピオンズリーグ出場をも争ったチームへの感謝と賞賛だけが、そこにはあった。

 

悔しさと共に、トーロは再び立ち上がる。

 

トーロの夢は散った。しかし、枯れたわけではない。新たな季節が来る限り、花は何度でも咲き誇り、世界を彩る。

 

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今季は欧州行きを手にすることができなかったが、来季に向けた重要な礎を手に入れた。私に主力を売る意思はない。何があろうと、我々の目標が変わることはない。ー ウルバーノ ・カイロ会長

 

欧州への夢は終わってはいない。たとえ届かなくても、欧州の舞台へ進むため、そしてスペルガに眠る偉大な先人たちにグランデトリノの復活を捧げるため、トリノFCグラナータの誇りを胸に何度でも立ち上がる。今季の挑戦は終わった。しかし来季、傷ついた雄牛はその凶暴さを増していることだろう。猪突猛進ならぬ牛突猛進。トーロよ、来季こそ夢の舞台へ。

必要なのは屋根だけ!

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リーグ屈指の堅守を3バックの中央から支えるトーロのディフェンスリーダー、ニコラ・エンクル。そのリーダーシップはディフェンスのみならず、ファッションの分野にまで及んでいる。ロッカールームでは6歳も年下のオラ・アイナに毎日毎日ファッションをInstagramのストーリーに投稿され(上の写真はヴィットーリオ・パリジー撮影)、これでもかとイジり倒される彼だが、それはチームメイトに愛されている何よりの証拠だ。

 

その実力、キャラクターでティフォージも絶対的な信頼を寄せるエンクル。ほぼ民族衣装のような服装で練習に現れたある日、アイナから付けられたあだ名は「アフリカの王様」。欧州に向け負けられないエンポリ戦を前にして、カメルーンの王様はCorriere della seraのインタビューに応えた。

 

メルカート?僕はここに残りたい」

 

ロッカールームではチームメイトからMousé(ムスエ)と呼ばれ親しまれているエンクル。ストーリーでも確認できる通りトーロの選手たちは彼のことをそう呼んでいるが、筆者もその由来は知らなかった。「あー、これ実はアフリイェ・アックアのせいなんだよ(笑)」エンクルは語る。

 

「アックアはMonsieur(ムッシュ。フランス語で閣下みたいなニュアンス)って言いたかったみたいだけど、彼の母国語は英語だ。発音がちょっと違ってて面白かったから、彼の発音を真似てムスエって呼ばれるようになったんだ(笑)」

 

前述の通りエンクルのファッションを毎日ストーリーに投稿するアイナも、「ムスエ〜wwwwww」といつもしつこく絡んでいるため、筆者も由来が気になっていたところだった。あっくんのせいだったのか。明日は“ムスエ”の名付け親であるアックア所属のエンポリとの対戦だ。欧州行きへ向け負けられない戦いを前にして、ムスエは夏のメルカートについても語ってくれた。

 

メルカート?僕はここで幸せだ。まだまだトーロと共に走り続けたい。いかなる移籍の噂にも耳を傾けるつもりはないよ」

 

「昨年の僕らは歩き始めたばかりの子供のようだった。けど今は違う。全員でここに家を築いたんだ。あと必要なのは屋根だけさ

 

ファッションリーダー・ムスエ。言い回しもオシャレである。

 

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「僕の父はビエルサマッツァーリだ」

 

エンクルはここまでのキャリア、家族についてもコメントを残している。

 

「僕の父はもうこの世にいないんだ。スペルガでグランデトリノの慰霊碑に刻まれた名前を読んだ時、父のことも思い出したよ。サッカーにおいての父親?マルセロ・ビエルサだ。もちろんワルテル・マッツァーリもだよ。ビエルサは僕の100%を引き出す方法をよく知っていた。彼にはとても感謝しているよ。サッカーをよく知っている戦術家だと思う。ビエルサマッツァーリだけでなく、僕を指導してくれた全ての監督たちに常に感謝の気持ちを持っている」

 

その試みは失敗に終わったが、アックアが彼をムッシュと呼びたくなる気持ちも理解できる。周囲に感謝の気持ちを忘れないムスエ。さすがアフリカの王様だ。これからもそのリーダーシップでトーロ王国を統率してくれ!ムスエ!

トリニスタの独り言〜後編〜

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さて今回は中盤から前を妄想していこうと思う。早速いってみよう。

 

やや層の薄いセンターハーフ

 

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来季も3-4-2-1と3-5-2を軸に戦っていくことになると思うが、ヨーロッパリーグ出場となった場合今季の選手層ではとても無理。現陣容のリンコン、メイテ、ルキッチ、バゼッリの4人+もう1人レギュラークラスが欲しいところだ。個人的な第1希望はルフレッド・ダンカン。屈強なフィジカルと運動量に加え、左足から繰り出されるパスも堅実なものを持ち合わせている。契約も残り1年となっているため、狙うならこの夏だろう。ミランが獲得に関心を示しているとの報道もあるが、彼らは監督人事など来季の戦略を組み立てる上で不透明な要素が多々ある。トーロにもチャンスはあるはずだ。

 

ダンカン以外の候補としてはお隣ユーヴェのミラレム・ピャニッチ。非常にクリエイティブな選手で、フィジカル要素の強いトーロの中盤に創造性をもたらす駒となってくれるはずだ。同じトリノということもあり、引っ越しも必要ない。彼個人にとってもデメリットはあまりなく、刺激的なチャレンジとなるだろう。コイツ頭おかしくなったんかと思った方もいるはずだがもちろんネタだ。おもんないな。次いこう。

 

イタリア復帰を強く望む彼を獲得できるか

 

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3-4-2-1採用時のシャドーは現在ファルケ、バゼッリ、ベレンゲル、パリジーニの4人。パリジーニは正直戦力になっておらずローンでの放出がベストな選択だろう。ローンバック予定のエデラも然り。彼もローン先のボローニャでスタメンを得ることができておらず、再修行が必要だ。また、バゼッリが1列後ろの駒としても計算されていることを鑑みるとスペシャリストはファルケベレンゲルの2人のみとなる。これでは流石にマズイだろう。

 

トップターゲットは昨年から追い続けているロベルト・ペレイラワトフォードは€3000万という移籍金を求めており現時点で獲得は非常に難しい。しかし本人がセリエAへの復帰に強い興味を持っているとの報道もあり、これを頼みの綱にクラブ間合意に漕ぎ着けたいところだ。代替案として候補はもう1人いる。ラデ・クルニッチだ。残留争い真っ只中のエンポリにおいて密かに注目を浴びる選手だが、ペレイラに比べコストもかからず獲得できるはず。仮にエンポリセリエB降格となった場合、交渉の難易度もグッと下がるだろう。

 

ザザ放出で新FW獲得に向かいたい

 

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FWはザザを放出できるかどうかで大きく変わるセクションだ。彼のローンには買取義務が付いているため、シーズン後に€1200万をバレンシアに支払わなければならない。レンヌがニアンの買取オプション(€1400万)を行使する意思を見せているため、その金をそのままザザに充てる形になるだろう。トリノとしてはザザ放出で€1000万を得られれば御の字というところだが、正直この額のオファーは望み薄だ。古巣サッスオーロが復帰に興味を持っているらしく、前述のダンカンを含めた交渉が展開される可能性は充分にありそうだ。

 

後釜として挙がるのはアンドレア・ペターニャパトリック・クトローネ。今季アタランタからSPALにローン中のペターニャだが、€1500万に設定された彼の買取オプションはSPALが行使することが確実。よって、彼の獲得には最低でも€1700万ほどのコストがかかると見ていいだろう。クトローネについては、ミランがピョンテクに続く新FWを獲得した上、クトローネをローン修行に出す決断をした場合にのみ可能性が出てくる。完全移籍での獲得は不可能に近い。

 

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妄想とはいったもののどいつもこいつも獲得への難易度高いということが分かった。今回名前を挙げた中で可能性がまあまああるのはクルニッチくらいか。しかしそう悲観的になる状況にあるわけでもない。ヨーロッパへの切符は重要な交渉のダシとなるだけに、なんとしても6位以内でのフィニッシュを期待したいところだ。以上あざっした。

事件発生!練習中のフィラデルフィアにて

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週末のサッスオーロ戦に向けた水曜日の練習中、チームに少し緊張が走る時間があった。原因は不明であるが、シリグとリンコンが練習中口論となりあわや掴み合いというところまで発展モレッティ、イッツォ、デ・シルヴェストリらが止めに入り事なきを得たものの、シリグはGKグローブを地面に叩きつけ一時ピッチから去るなどかなりナーバスになっていたようだ。

 

幸いなことにチームメイトらの仲裁により既に両者は和解しているらしく、今後の関係に問題はなさそう。実はこのような衝突が2週間前のミラン戦に向けた練習中にも起きており(シリグ×リンコンかは不明)、初めてのことではない。しかしこのチーム状況は「欧州カップ出場権獲得へ向け妥協を許さない雰囲気がある」とむしろポジティブに捉えることができると筆者は考えている。高いインテンシティを要求するマッツァーリのサッカーを体現する上で、チームメイト同士衝突が起きるのはある意味必然なのかもしれない。

トリニスタの独り言〜前編〜

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これから書くことは来季のメルカート展望だ。しかし現時点では8割が妄想であり、希望的観測による独り言だということを最初に言っておく。要するに、ファンとしての「こうなればいいな」という個人的な願いである。

 

第3GKの座は誰の手に?

 

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守護神シリグが来季もレギュラーで問題はない。しかし不確定なのが彼の控え。現在控えを務めるイチャーソ、ロザーティどちらも契約が今季限りで満了する上、ヨーロッパのコンペティションと二足の草鞋を履くことになった場合、陣容の充実は不可欠である。

 

まず、第2GKとして最有力候補となるのが現在アスコリに貸し出されているヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ。SPALでは失敗したものの、ポテンシャルはシリグにも匹敵するものを持ち合わせており、彼の控えを任せるには充分だ。第3GKとして最も有力なのはこちらもヴィボネーゼ(セリエC)にローン中のアンドレア・ザッカーニョ。2年前のU-20W杯にてアッズリーニの守護神を務めた選手である。シリグをこの若き2人がバックアップするのが個人的な来季の理想形だ。

 

センターバックもローンバックで充分賄える

 

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センターバックモレッティの去就次第で戦略がやや変わってくるかというところ。引退も囁かれる彼の後釜としては、SPALにローン中のケヴィン・ボニファーツィがその筆頭候補だ。また、負傷箇所の手術により一足先にシーズンを終えたコフィ・ジジの買取オプションは行使が既定路線。来季もレギュラーとしての働きが期待される。イッツォ、エンクル、ジジを軸にボニファーツィを準レギュラーとして起用するのがベストな解決策だろう。

 

問題はボローニャにローン中のリャンコ・ヴォイノヴィッチ。ドライローンにもかかわらずボローニャ残留の意思を表明している彼が来季トーロの駒として計算できるかは、現在のところ全く不透明な状況である。場合によってはローン延長、ボローニャとしてはあわよくば完全移籍に移行したいというところだろうが、トーロの要求額は€1000万を下回ることはないはず。ブレーメルをローン修行に出すかどうかもリャンコ次第だろう。

 

ウイングバックはアイナ買い取りが最優先

 

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€1000万に設定されているオラ・アイナの買い取りオプションだが、行使されると見てまず間違いない。両サイドを高い水準でこなす彼の存在は、今季のトーロにとって非常に価値あるものだった。セリエA初挑戦であのパフォーマンスなのだから、今後さらに成長してくれることだろう。

 

デ・シルヴェストリやアンサルディももう若くはなく、アイナだけでなくできればもう1枚欲しいところ。最も噂に上がっているのがマヌエル・ラッツァーリだ。ただ夏の争奪戦は必至で、ナポリラツィオといったクラブとの獲得レースを制する必要がある。移籍金も€1200万は下らないと言われており、難しいオペレーションになるだろう。優先度もそこまで高くはない。

 

 

 

だらだらと独り言を書きまくったが、残念なことに次回も続く。次は中盤から前のスカッドについて語っていきたいと思う。以上あざっした。