必要なのは屋根だけ!
リーグ屈指の堅守を3バックの中央から支えるトーロのディフェンスリーダー、ニコラ・エンクル。そのリーダーシップはディフェンスのみならず、ファッションの分野にまで及んでいる。ロッカールームでは6歳も年下のオラ・アイナに毎日毎日ファッションをInstagramのストーリーに投稿され(上の写真はヴィットーリオ・パリジーニ撮影)、これでもかとイジり倒される彼だが、それはチームメイトに愛されている何よりの証拠だ。
その実力、キャラクターでティフォージも絶対的な信頼を寄せるエンクル。ほぼ民族衣装のような服装で練習に現れたある日、アイナから付けられたあだ名は「アフリカの王様」。欧州に向け負けられないエンポリ戦を前にして、カメルーンの王様はCorriere della seraのインタビューに応えた。
「メルカート?僕はここに残りたい」
ロッカールームではチームメイトからMousé(ムスエ)と呼ばれ親しまれているエンクル。ストーリーでも確認できる通りトーロの選手たちは彼のことをそう呼んでいるが、筆者もその由来は知らなかった。「あー、これ実はアフリイェ・アックアのせいなんだよ(笑)」エンクルは語る。
「アックアはMonsieur(ムッシュ。フランス語で閣下みたいなニュアンス)って言いたかったみたいだけど、彼の母国語は英語だ。発音がちょっと違ってて面白かったから、彼の発音を真似てムスエって呼ばれるようになったんだ(笑)」
前述の通りエンクルのファッションを毎日ストーリーに投稿するアイナも、「ムスエ〜wwwwww」といつもしつこく絡んでいるため、筆者も由来が気になっていたところだった。あっくんのせいだったのか。明日は“ムスエ”の名付け親であるアックア所属のエンポリとの対戦だ。欧州行きへ向け負けられない戦いを前にして、ムスエは夏のメルカートについても語ってくれた。
「メルカート?僕はここで幸せだ。まだまだトーロと共に走り続けたい。いかなる移籍の噂にも耳を傾けるつもりはないよ」
「昨年の僕らは歩き始めたばかりの子供のようだった。けど今は違う。全員でここに家を築いたんだ。あと必要なのは屋根だけさ」
ファッションリーダー・ムスエ。言い回しもオシャレである。
「僕の父はビエルサとマッツァーリだ」
エンクルはここまでのキャリア、家族についてもコメントを残している。
「僕の父はもうこの世にいないんだ。スペルガでグランデトリノの慰霊碑に刻まれた名前を読んだ時、父のことも思い出したよ。サッカーにおいての父親?マルセロ・ビエルサだ。もちろんワルテル・マッツァーリもだよ。ビエルサは僕の100%を引き出す方法をよく知っていた。彼にはとても感謝しているよ。サッカーをよく知っている戦術家だと思う。ビエルサとマッツァーリだけでなく、僕を指導してくれた全ての監督たちに常に感謝の気持ちを持っている」
その試みは失敗に終わったが、アックアが彼をムッシュと呼びたくなる気持ちも理解できる。周囲に感謝の気持ちを忘れないムスエ。さすがアフリカの王様だ。これからもそのリーダーシップでトーロ王国を統率してくれ!ムスエ!
トリニスタの独り言〜後編〜
さて今回は中盤から前を妄想していこうと思う。早速いってみよう。
やや層の薄いセンターハーフ
来季も3-4-2-1と3-5-2を軸に戦っていくことになると思うが、ヨーロッパリーグ出場となった場合今季の選手層ではとても無理。現陣容のリンコン、メイテ、ルキッチ、バゼッリの4人+もう1人レギュラークラスが欲しいところだ。個人的な第1希望はアルフレッド・ダンカン。屈強なフィジカルと運動量に加え、左足から繰り出されるパスも堅実なものを持ち合わせている。契約も残り1年となっているため、狙うならこの夏だろう。ミランが獲得に関心を示しているとの報道もあるが、彼らは監督人事など来季の戦略を組み立てる上で不透明な要素が多々ある。トーロにもチャンスはあるはずだ。
ダンカン以外の候補としてはお隣ユーヴェのミラレム・ピャニッチ。非常にクリエイティブな選手で、フィジカル要素の強いトーロの中盤に創造性をもたらす駒となってくれるはずだ。同じトリノということもあり、引っ越しも必要ない。彼個人にとってもデメリットはあまりなく、刺激的なチャレンジとなるだろう。コイツ頭おかしくなったんかと思った方もいるはずだがもちろんネタだ。おもんないな。次いこう。
イタリア復帰を強く望む彼を獲得できるか
3-4-2-1採用時のシャドーは現在ファルケ、バゼッリ、ベレンゲル、パリジーニの4人。パリジーニは正直戦力になっておらずローンでの放出がベストな選択だろう。ローンバック予定のエデラも然り。彼もローン先のボローニャでスタメンを得ることができておらず、再修行が必要だ。また、バゼッリが1列後ろの駒としても計算されていることを鑑みるとスペシャリストはファルケとベレンゲルの2人のみとなる。これでは流石にマズイだろう。
トップターゲットは昨年から追い続けているロベルト・ペレイラ。ワトフォードは€3000万という移籍金を求めており現時点で獲得は非常に難しい。しかし本人がセリエAへの復帰に強い興味を持っているとの報道もあり、これを頼みの綱にクラブ間合意に漕ぎ着けたいところだ。代替案として候補はもう1人いる。ラデ・クルニッチだ。残留争い真っ只中のエンポリにおいて密かに注目を浴びる選手だが、ペレイラに比べコストもかからず獲得できるはず。仮にエンポリがセリエB降格となった場合、交渉の難易度もグッと下がるだろう。
ザザ放出で新FW獲得に向かいたい
FWはザザを放出できるかどうかで大きく変わるセクションだ。彼のローンには買取義務が付いているため、シーズン後に€1200万をバレンシアに支払わなければならない。レンヌがニアンの買取オプション(€1400万)を行使する意思を見せているため、その金をそのままザザに充てる形になるだろう。トリノとしてはザザ放出で€1000万を得られれば御の字というところだが、正直この額のオファーは望み薄だ。古巣サッスオーロが復帰に興味を持っているらしく、前述のダンカンを含めた交渉が展開される可能性は充分にありそうだ。
後釜として挙がるのはアンドレア・ペターニャとパトリック・クトローネ。今季アタランタからSPALにローン中のペターニャだが、€1500万に設定された彼の買取オプションはSPALが行使することが確実。よって、彼の獲得には最低でも€1700万ほどのコストがかかると見ていいだろう。クトローネについては、ミランがピョンテクに続く新FWを獲得した上、クトローネをローン修行に出す決断をした場合にのみ可能性が出てくる。完全移籍での獲得は不可能に近い。
妄想とはいったもののどいつもこいつも獲得への難易度高いということが分かった。今回名前を挙げた中で可能性がまあまああるのはクルニッチくらいか。しかしそう悲観的になる状況にあるわけでもない。ヨーロッパへの切符は重要な交渉のダシとなるだけに、なんとしても6位以内でのフィニッシュを期待したいところだ。以上あざっした。
事件発生!練習中のフィラデルフィアにて
週末のサッスオーロ戦に向けた水曜日の練習中、チームに少し緊張が走る時間があった。原因は不明であるが、シリグとリンコンが練習中口論となりあわや掴み合いというところまで発展。モレッティ、イッツォ、デ・シルヴェストリらが止めに入り事なきを得たものの、シリグはGKグローブを地面に叩きつけ一時ピッチから去るなどかなりナーバスになっていたようだ。
幸いなことにチームメイトらの仲裁により既に両者は和解しているらしく、今後の関係に問題はなさそう。実はこのような衝突が2週間前のミラン戦に向けた練習中にも起きており(シリグ×リンコンかは不明)、初めてのことではない。しかしこのチーム状況は「欧州カップ出場権獲得へ向け妥協を許さない雰囲気がある」とむしろポジティブに捉えることができると筆者は考えている。高いインテンシティを要求するマッツァーリのサッカーを体現する上で、チームメイト同士衝突が起きるのはある意味必然なのかもしれない。
トリニスタの独り言〜前編〜
これから書くことは来季のメルカート展望だ。しかし現時点では8割が妄想であり、希望的観測による独り言だということを最初に言っておく。要するに、ファンとしての「こうなればいいな」という個人的な願いである。
第3GKの座は誰の手に?
守護神シリグが来季もレギュラーで問題はない。しかし不確定なのが彼の控え。現在控えを務めるイチャーソ、ロザーティどちらも契約が今季限りで満了する上、ヨーロッパのコンペティションと二足の草鞋を履くことになった場合、陣容の充実は不可欠である。
まず、第2GKとして最有力候補となるのが現在アスコリに貸し出されているヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチ。SPALでは失敗したものの、ポテンシャルはシリグにも匹敵するものを持ち合わせており、彼の控えを任せるには充分だ。第3GKとして最も有力なのはこちらもヴィボネーゼ(セリエC)にローン中のアンドレア・ザッカーニョ。2年前のU-20W杯にてアッズリーニの守護神を務めた選手である。シリグをこの若き2人がバックアップするのが個人的な来季の理想形だ。
センターバックもローンバックで充分賄える
センターバックはモレッティの去就次第で戦略がやや変わってくるかというところ。引退も囁かれる彼の後釜としては、SPALにローン中のケヴィン・ボニファーツィがその筆頭候補だ。また、負傷箇所の手術により一足先にシーズンを終えたコフィ・ジジの買取オプションは行使が既定路線。来季もレギュラーとしての働きが期待される。イッツォ、エンクル、ジジを軸にボニファーツィを準レギュラーとして起用するのがベストな解決策だろう。
問題はボローニャにローン中のリャンコ・ヴォイノヴィッチ。ドライローンにもかかわらずボローニャ残留の意思を表明している彼が来季トーロの駒として計算できるかは、現在のところ全く不透明な状況である。場合によってはローン延長、ボローニャとしてはあわよくば完全移籍に移行したいというところだろうが、トーロの要求額は€1000万を下回ることはないはず。ブレーメルをローン修行に出すかどうかもリャンコ次第だろう。
ウイングバックはアイナ買い取りが最優先
€1000万に設定されているオラ・アイナの買い取りオプションだが、行使されると見てまず間違いない。両サイドを高い水準でこなす彼の存在は、今季のトーロにとって非常に価値あるものだった。セリエA初挑戦であのパフォーマンスなのだから、今後さらに成長してくれることだろう。
デ・シルヴェストリやアンサルディももう若くはなく、アイナだけでなくできればもう1枚欲しいところ。最も噂に上がっているのがマヌエル・ラッツァーリだ。ただ夏の争奪戦は必至で、ナポリやラツィオといったクラブとの獲得レースを制する必要がある。移籍金も€1200万は下らないと言われており、難しいオペレーションになるだろう。優先度もそこまで高くはない。
だらだらと独り言を書きまくったが、残念なことに次回も続く。次は中盤から前のスカッドについて語っていきたいと思う。以上あざっした。
スペルガに勝利報告を!
ヨーロッパの舞台へ邁進するトーロの挑戦。ライバルから金星をもぎ取れ!
今季2回目のトリノデルビーがいよいよ明日に迫ってきた。当初のスケジュールでは現地時間4日に予定されていたユーヴェとの一戦だが、トーロの要求通り日程は1日繰り上げられ3日20:30(現地時間)のキックオフとなる。
トーロが4日でのデルビー開催を拒否したのには理由がある。そう、この日はトーロにとって最も大事な日だからだ。今年はあの事故からちょうど70周年を数える節目の年。1949年5月4日、起きてしまったスペルガの悲劇で早すぎる死を迎えた、偉大なグランデ・トリノの戦士たちを偲ぶ日なのである。
「そんな日に試合なんかできるものか!」とレガ・カルチョに対し強く日程変更を要求したウルバーノ・カイロ会長の行動は称賛に値すると個人的には思う(レガ・カルチョも分かってたんなら最初からその日にスケジューリングすな)。
デルビーの翌日、スペルガ大聖堂では記念式典が行われる予定。ここで先人達に「ユーヴェ倒したよ!!」と報告したいところだ。
過去には一部のユヴェンティーノが飛行機が墜落する絵が描かれた横断幕を掲げたりする事件もあったデルビー・デッラ・モーレ。当然ユヴェンティーノに限った話ではないが、差別的チャントに代表されるようにイタリアのティフォージの観戦マナー(というか人間としての常識)はいつまで経っても改善の兆候が見られない。今回はそんな救いようのないバカどもが現れないことを切に願う。ぶつかり合うのはピッチの上の選手だけで充分なのである。
さて、試合に目を向けてみよう。個人的には、今回のデルビーは「どこか例年とは違う雰囲気がある」と思っている。我々トーロがチャレンジャーであることに変わりはないが、結果を左右しかねない要素(希望的観測)を記しておく。
ユーヴェはスクデットを既に決めており、今季はCLもコッパも敗退済み。デルビーとはいえメンタル的にもモチベーションは前回の対戦時より低いはずだ。カンピオナートでも先月SPALに敗れるなどとても本調子とは言えない。スカッドもコスタ、ディバラ、サンドロ、ペリン 、マンジュキッチ、ケディラなどがプレー不可な状況にあり、チーム状態は悪いと言わざるを得ないだろう。
対するトーロはヨーロッパ争いの真っ最中。仮にデルビーで勝点3を獲得できれば、ヨーロッパリーグはもちろんチャンピオンズリーグの舞台まで見えてくるだけに、モチベーションは非常に高い。カンピオナートでも6試合負けなしと好調を維持しており、ユーヴェ相手にもいい戦いを見せられるのではないだろうか。懸念材料はモレッティのサスペンション。戦術面だけでなく、精神面でもチームの支柱である彼の不在は正直かなりの痛手だ。代役の働きぶりが結果に直結すると言っても過言ではなさそうだ。
最後にGazzettaの予想スタメンを貼っておく。モレッティの代役はきっと、若手ブラジル人のブレーメルだろう。
バゼッリ戻ったのはデカイ
リンコン&メイテがやっぱ鍵握りそう
...まてよ?
ロッロ...だと?
ふぉるつぁとーろ(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎
シリグ :「僕のベスト11にはいつも彼がいる」
シリグ、ヴィオラ戦を前にアストーリとの思い出を語る
欧州戦線への生き残りを懸け、今日アルテミオ・フランキに乗り込むトリノ。フィオレンティーナとの重要過ぎる試合を前に、我らが守護神サルヴァトーレ・シリグがSkyのインタビューに答えた。
「僕のベストイレブンには、いつもダヴィデ・アストーリがいる。僕らが知り合ったのは17歳の時。彼とは同い年だし、実は誕生日も同じ月なんだよ。僕らはエミリアーノ・モンドニコが率いていたクレモネーゼで一緒だった。あの時僕らはかなり上手くやったし、凄く成長したシーズンを過ごしたよ」
「それからダヴィデは僕の生まれ故郷・サルデーニャのカリアリに移籍した。お互い離れ離れにはなったけど、僕らの関係はさらに強いものになっていったよ。最初セリエCでプレーしていた僕らだけど、お互いアッズーリにも選ばれるようになっていったね」
ヴィオラ戦とアストーリ
「フィオレンティーナとの対戦はダヴィデが亡くなってから3度目だ。アルテミオ・フランキではうまくいっていないね。昨季対戦した時(0-3で敗れたゲーム)は、試合前にダヴィデが”コーナーキックから得点してやるからな!"ってメッセージしてきたんだ(笑) そんな冗談を交わすことはもうないと思うと不思議な感覚だし、すごく寂しいね。ダヴィデとは冗談を言い合うチームメイトであり、試合後に抱擁を交わす対戦相手でもあった。今でも彼のことがすごく恋しいよ」
元チームメイトで組むベストイレブン
「フォーメーションはマッツァーリの3-5-2を選ぶ。キーパーはヴィヴィアーノかペリンだね。ペリンは最近あまり試合に出ていないし、ここは彼を選んであげようかな(笑) ディフェンスはダヴィデに加えマックスウェルが左のウイングバック、ボヌッチが真ん中、パレルモで一緒だったボーヴォが右だ。全員大切な友人たちだよ。右のウイングバックにはバルザレッティを選ぶ。彼は左利きだけどね」
「次に中盤だ。ヴェッラッティとパストーレ。あまり好きな役割じゃないかもだけど。前線にイブラヒモヴィッチは外せない。彼なしは考えられないよ。彼を批判する人たちをたくさん見てきたけど、あんな素晴らしいキャリアを歩んできた選手を批判するなんて馬鹿げていると思うね」
「あとはリャイッチも選びたい。僕は彼にいつもこう言っていた。”お前にはその力があるのに、世界で10本の指に入る選手にはなれていない。それは他でもないお前のせいだ!”ってね(笑) あとはラベッシかな。誰もが望むような選手だよね。このチーム、バランスは取れてないけどかなり楽しいメンツだと思うよ」
「昨年の監督交代で僕らは難しい時期を過ごした。マッツァーリは僕らにいくつかのアイデアをもたらしたけど、こういう状況では新たなメソッドに適応するためハードワークが必要になるし、最初は大変だったよ。でも今、夏に来た新戦力たちのおかげで、僕らの努力は実を結び始めていると思う」
「イタリアでヨーロッパリーグは軽視される傾向にあったけど、それも最近変わり出しているね。とてもいいことだと思うよ。ヨーロッパ行きは僕らのゴールだ」
トーロの3バックを徹底分析-データで見るトリノFC-
攻撃陣がパッとしない中、なぜトーロはEL争いに踏み止まれているのか?
アルマンド・イッツォ、ニコラ・エンクル、コフィ・ジジ。この3人の働きがなければ、トーロはとっくにELの出場権争いから脱落していたところだ。第21節終了時点で、トーロは1試合平均11のボールロストを記録。不名誉なことにこれはリーグで5番目に多い数字だ。さらに、トラップミスやコントロールミスは1試合平均17.3。これに関してはなんとリーグワーストとなっており、トーロがいかに攻撃をシュートで完遂させられていないかを如実に示すデータと言えるだろう。
上記のデータは全てWhoScored.comから引用したが、もう少し数字を拝借するとしよう。次は守備陣に目を向けてデータを探ってみる。しぶとくEL争い戦線に踏み止まるトーロの秘密は、間違いなく彼らにあるはずだ。
※ここから挙げる「リーグ〜位」というデータは全て「今季セリエAで試合に出場したセンターバックの中での順位」とする。
まず、セリエA初挑戦ながらここまで見事なパフォーマンスを見せるこのコートジボワール人センターバックから見ていこう。
開幕後少し経ってからエミリアーノ・モレッティよりレギュラーの座を譲り受けたコフィ ・ジジは、主に3バックの左でプレー。ここまで13試合に出場し、センターバックとしてはリーグトップとなる合計10回のクロス阻止(1試合平均0.8回)を記録している。相手サイドアタッカーやウインガーに対し、左右のセンターバックが対応することの多い3バックだからこそ必然的に数字も増えやすくはなるが、8試合に欠場しているということを考えれば、いずれにせよ素晴らしい数字である。
タックル成功数は28回でリーグ15位。1試合に平均すると2.2回の成功数を誇っており、彼の対人の強さを示すデータと言える。インターセプトは23回でリーグ25位(1試合平均1.8回)、クリア数は49回でリーグ41位(1試合平均3.8回)とこちらもまずまずの数字だが、もうひとつ彼の3バックへの適応を示すデータがあった。ドリブル成功数である。3バックの左右でプレーする選手には、時に自らボールを前に運べる資質が求められるが、ジジにはそれが間違いなく備わっている。彼は今季ここまで試みた12回のドリブルを全て成功させているのだ。今季セリエAで10回以上ドリブルを試みた選手はジジを含め4人(ビラスキ、トロイ、アンデルセン)いるが、成功率100%を記録しているのはジジだけである。ここでは彼の高い足元の技術が数字に表れていると言えるだろう。
続いて、ここまで全試合にフル出場している我らがディフェンスリーダーの番だ。
さっき書いた通り、ニコラ・エンクルはここまでセリエA21試合にフル出場。今季未だ欠場がないセンターバックはこのエンクルとエンポリのシルヴェストレ2人だけである。41回(1試合平均2回)を記録しリーグ6位のインターセプト、36回(1試合平均1.7回)でリーグ10位のタックル成功数、92回(1試合平均4.4回)でリーグ11位のクリア成功数などなど、彼がいかにオールラウンドな守備職人であるかがこれらの数字でご理解いただけるだろう。3バックの中央としてビルドアップの起点も担う彼は、ショートパス・ロングボール併せてパス成功率85%をここまで叩き出しており、攻守ともに存在感は抜群である。
数字には出ないが、彼の的確な指示で守備の歯車は回っており、冷静かつ堅実なそのプレーはもっと評価されて然るべきだろう(と筆者は何度も言ってきた)。常に安定したパフォーマンスを見せる彼なしで欧州行きは有り得ない。
最後は、驚異的な数字を叩き出している彼を締めとしてお見せしたい。是非ロベルト・マンチーニにも見てもらいたいのだが...
WhoScored.comでの平均評価点、実に7.15。アルマンド・イッツォは、7.18のジョルジョ・キエッリーニに次いでリーグ2位の平均評価点を記録している。出場停止で欠場した第20節ローマ戦以外全てとなる20試合に出場しているイッツォは、その対人守備の強さでタックル成功数リーグ3位(48回、1試合平均2.4回)、読みの鋭さとコースを先取る俊敏性でインターセプト成功数リーグ2位(46回、1試合平均2.3回)、183cmと上背はそこまでないが、その跳躍力と闘争心で空中戦勝利数リーグ2位(98回中65勝)の記録を叩き出しているセンターバックだ。アッズーリに呼ばない理由はもはや何もないだろう。
今季ジェノアから€1000万の移籍金で加入したイッツォだが、今となっては安い買い物だったと断言できる。あとは彼のアッズーリ復帰を願うばかり。3年後のW杯開催時は30歳とセンターバックとしては最も脂の乗っている時期なだけに、マンチーニには彼の招集をいい加減決断して欲しいものだ。
いかがだっただろうか?今回は今季のトーロを支える3人の守護者たちに焦点を当て、データとともに分析を行ってみた。今季後半戦は、彼らの働きに報いるようなゴールの数々をアンドレア・ベロッティをはじめとした攻撃陣には期待したいところだ。以上、あざっした!