トリノFC情報局

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ユリッチ・トーロの現在と展望

一時は最下位にまで落ち込んだチームを残留に導いたにもかかわらず、前指揮官ダヴィデ・ニコラとの決別を選んだトーロ。ウルバーノ・カイロが後任に選んだのは説得力のある実績を持った人物だった。ジャンピエロ・ガスペリーニの弟子にしてヴェローナを期待以上の順位にまで押し上げたクロアチア人指揮官、イヴァン・ユリッチである。

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5月というかなり早い段階でトーロのベンチに就いたユリッチ。サンタ・クリスティーナでの合宿に加えレンヌ、AZといった海外有力クラブとの強化試合でチーム内でのヒエラルキーや補強すべきポイントも明確になってきた。今回はそんなユリッチ・トーロの現状とメルカートにおけるこれからの展望を分析していきたい。

 

チーム内ポジション争いの現状

ゴールキーパー

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正守護神はヴァンヤだ」とのユリッチの宣言は、サルヴァトーレ・シリグジェノアにプレゼントしたクラブに対する更なる不満要素としてティフォージを憤りの渦に巻き込んだ。事実、正キーパーの座を手にしたヴァンヤ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチは、シリグの後釜としての重圧もあってかプレシーズンを含むここまでのところ期待に添えるパフォーマンスを全く見せられていない。彼の控えとして獲得したはずのエトリト・ベリシャがAZ戰で好プレーを見せた事で、早くも彼の立場は危ういものとなっている。シーズンはまだ始まったばかりだが、ユリッチに見限られる日もそう遠くはないかもしれない。

 

センターバック

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ニコラ・エンクルが去り、リャンコ・ヴォイノヴィッチサウサンプトン行きも時間の問題となっているセンターバックのセクションは、一定の変革期を迎えている。クロトーネからローンバックしたコフィ・ジジを含め頭数は現在5人となっており、新たなディフェンスリーダーとして不動の存在であるグレイソン・ブレーメルを除けば、彼の両脇を誰が固めるのかは正直まだ不透明な状況だ。そんな中、退団が確実と思われていたリカルド・ロドリゲスがユリッチを納得させることに成功し、左センターバックとしてレギュラー候補の一人となっている事実はかなりのサプライズだろう。

 

ウイングバック

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右ではウィルフリード・シンゴメルギム・ヴォイヴォダがしのぎを削り、昨季に引き続き前者が一歩リードしているという状況。シンゴは先日コートジボワールA代表デビューも果たしており、さらには東京五輪も経験。ユリッチの下でも更なる成長が見込まれるだろう。左には不動の存在であるクリスティアン・アンサルディが君臨するが、やや怪我がちであるという唯一の弱点に対し、フルアムからローンバックしてきたオラ・アイナにもチャンスは充分にあるだろう。アイナは右にも対応可能なため、指揮官にとって有能な手駒として重宝されるはずだ。

 

センターハーフ

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残留の立役者の一人であるロランド・マンドラーゴラの相方を一体誰が務めるのか。唯一にして最大の疑問点がこのセクションの焦点だ。現状のメンバーで一歩リードしているのは今季から背番号10を背負うサシャ・ルキッチだが、レギュラーとその背番号に相応しいプレーを見せているとは確実に言えない。ダニエレ・バゼッリは怪我でやや出遅れたため、ここからの巻き返し次第ではスタメンの座に返り咲くことも難しくはないはずだ。立場が厳しいのはトマス・リンコンヤコポ・セグレ。この二人はユリッチの構想に入っていないと連日伝えられており、トリノを去る可能性もありそうだ。

 

シャドー

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ユリッチ戦術の最大の特徴でもあるツーシャドーにも不確定要素が蔓延。シモーネ・ヴェルディは相変わらずだし、イアゴ・ファルケに至っては完全に構想外。本職ではないカロル・リネッティが現在右シャドーのレギュラー候補の筆頭という状況になっている。一方、左シャドーは指揮官の希望で獲得したマルコ・ピアツァが合流してから期待に応えるプレーを連発しており、ひとまずはレギュラー確保と見て良さそうだ。ちなみにユリッチは先日、開幕節アタランタ戰の前日会見にて「ヴェルディ、バゼッリ、リネッティ、ルキッチの内あなたがシャドーとして考えているのは誰ですか?」との質問に対し「誰もいないよ」と笑いながら返答。”補強が必要である”とのクラブに対するメッセージとも捉えられるため、ユリッチも結構イライラしているのかもしれない。

 

センターフォワード

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このセクションはなんと言ってもカピターノであるアンドレア・ベロッティの残留が確定した事が非常に大きい。契約延長については現在話し合われているとの事だが、少なくとも今季はまだグラナータのユニフォームを身に纏ったガッロが見られそう。アントニオ・サナブリアがベンチに控えている事も非常に頼もしい。相手によって二人を使い分ける事も有効な起用法だろう。シモーネ・ザザは今季も苦しい立場からのスタートとなるが、背番号を7に変えた事で心機一転・起死回生を期待したい。

 

ポジション争いまとめと補強戦略

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現在ダヴィデ・ヴァニャーティSDが最も力を入れて補強に動いているのがセンターバック。トップターゲットはカリアリセバスティアン・ヴァルキエヴィッツだが、選手本人の希望にもかかわらずカリアリとの合意がなかなか得られない状況が続いており、スパルタク・モスクワサムエル・ギコバーゼルエライ・キュマルトなど複数の名前が代替案として挙がっている。二つ目の補強ポイントはユリッチも言及している通り右シャドー。噂に挙がっているのはクロトーネのジュニオール・メシアスボローニャリッカルド・オルソリーニなどだが、いずれも所属元の要求額が高い。すぐに余剰戦力を放出して移籍金を工面できない限り獲得は難しそうだ。三つ目はマンドラーゴラの相方だが、こちらは新戦力の到着が既に濃厚。トンマーゾ・ポベガミランから借り受ける事が内定しており、ミランティエムエ・バカヨコの復帰を決め次第正式に決まる見込みである。

 

メルカート最終日まで一週間を切り既にカンピオナートも開幕した今、今季の成否を占う時期に来ている事は疑いようがない。今季も残留争いに巻き込まれるか、トップハーフでフィニッシュできるか。全てはヴァニャーティとユリッチの仕事次第だ